5 / 41
2章
銀色のシルシ
しおりを挟む
リゼルのことを書いたノートが、一冊、また一冊と積み上がっていく。
魔物の生態について、そんなに書くことがあるのか? と訊かれたら、ないと答える。つまるところ、これはもうただの日記にすぎない。
リゼルが花を摘んできてくれたとか。
サプライズで父の日の贈り物をしてくれたとか。
そんな、5年間の、温かい家族の記録だ。
リゼルがうちに来た日を3歳としているから、今日で8歳。
普通の子どもより少し大きくて、少年から青年へ変わろうとしている姿が僕にはとても眩しい。
それでなくても、リゼルのことは毎日キラキラと輝いて見えるのだけど。
リゼルは素直で、イイコで、ワガママなんかひとつも言わなかった。村の子どもたちとだって仲がいい。挨拶も元気よくかわす。人間と、なんら変わらない。
だから……。
「シアンを、噛みたい」
誕生日プレゼントにソレをねだられた時、僕は自分の耳を疑った。
この5年、ずっと穏やかに暮らしてきたから忘れていた。
僕はいつか、彼に食べられるかもしれない。暮らし始めた頃、幾度となくそう思ったことを。
「あっ。何か、勘違いしてると思うけど、違うからな! 食べないぞ。ヤクソク、した!」
「え……。でも、噛みたいって」
「シルシ! シルシをつける!」
リゼルは屈めと言いたげに、僕の腕をグイグイと引っ張っている。
噛んで印をつけるってことは、歯型ってことか。
「痛そうだし……」
「まあ、痛くないとは言わないけど……」
「それに、なんで印なんてつけたいんだ。そんなことしなくても、僕はちゃんと君のオトーサンだよ」
そもそも父親に独占欲として歯型をつけるのはどうなんだとも思ったけど、魔物では人と考え方が違うのかもしれない。
「ちがくて! 今まではブジだったけど、シアンはゼーッタイに、オレの仲間に狙われやすいと思うから!」
「君の仲間って……。銀色の魔物ってこと?」
「そう! オレの噛み痕があれば安全なんだ」
すでにお手付きの獲物には手を出さないみたいな、暗黙のルールでもあるんだろうか。
つまりは、マーキングみたいなもの……?
でも歯型なんてまどろっこしいことしないで、ヒトクチ噛んだら最後までガブリといってしまいそうだけどな。
なんだか、違和感がある……けど。
「そういう話なら、いいよ」
「いいのか!?」
「どうして驚くの?」
「オレが噛みつきたいから、そういうことを言ってるだけだと思われるかなって……」
「リゼルがそんな子じゃないって、僕はちゃんとわかってるよ」
今はもう胸のあたりにあるリゼルの頭をポンポンと撫でる。
この黒髪に狼耳が生えてるところも、あまり見なくなった。
寝室ではたまにリラックスしきって獣になってるけど、その時は姿形自体が狼だから。
「それに、どうせ銀色の魔物に食べられるのだとしたら、君に食べられたい」
「ゼッタイ、食べない……」
「うん。ふふふ」
僕の言葉に嘘はない。それくらいリゼルのことを想っている。親というのは子のためならなんでもしてあげたくなるもの。
たとえ血が繋がってなくても、魔物であっても、リゼルはかけがえのない僕の息子だ。
成長を見守りたいし、ノートの続きもつけたいから、理由もなく食べられるのは嫌だけど。
「それじゃあ、はい。腕でいいかな?」
「ウデじゃダメだ。目立つから……」
「そっか。歯型だもんね。でも見えてなくても、効果あるものなの?」
「ある」
お腹とか、足とか……。足は子どもたちと川に入ったりすることもあるから、見えるか。
お腹はちょっと、噛まれるのに躊躇いがある。
「肩かな。僕は、襟が広い服をあまり着ないし……。袖も長めの服を着ているから」
「それでいい」
リゼルはまた、僕の腕をグイグイと引っ張った。
はいはい、屈めってことだよね。
床へ屈んで、いつもは見下ろしている顔を見上げる。
リゼルはどこか緊張した面持ちで僕を見ていた。
綺麗な金色の瞳がゆらりと揺れる。
ああ……吸い込まれて、しまいそうだ。
襟を引っ張って肩を出すと、小さな手が僕の肩に触れた。
リゼルは自分が噛む場所を確認するように何度か撫ぜて、舌でゆっくりと舐める。
「いっ……」
ズブリと牙が沈む。僅かな痛みのあと、それはすぐに甘い痺れへと変わった。
そういえば今まで、イタズラでも噛むことはしなかった。僕が怯えると思ったからかもしれない。
なら、きっとこれは……彼にとって、大切なことなんだ。
「できた」
満足気にしてる。最初に牙が埋まった時の感覚を思い出す。
穴が開いてそう。見るのが怖い。それでも怖いもの見たさに目をやると……。
「銀色に……光ってる……?」
「だから、シルシ」
どうやら印というのは、単なる歯型ではないらしい。
「こ、これ、服の上から透けないよね?」
「……多分。こんなにハッキリ光るとは思わなかった」
慌てて服を戻してみる。剥き出しの時は発光しているように見えたのに、布の上からだとなんともなかった。
良かった……。僕はともかく、リゼルまで安堵の息を吐き出している。ヒヤヒヤさせてくれる。
「オレより弱い獣なら、そういうのも全部逃げてくから。ほら、クマとか」
「人間は?」
「ヒトには、効果がない」
「そっか。それなら、バレたりしないね」
服の上から、リゼルが噛んだところを撫でる。指先で皮膚の沈んだ部分を探ると、チリリと甘い痛みが走った。
僕の安全を考えてくれるのは嬉しいけど、それによってリゼルのことがバレたりしたら大変だ。
「あっ! サクラや、牛や、村にいる鶏まで逃げていったりしない!?」
「そのあたりも、弱すぎて大丈夫だと思う。ほら、サクラはオレからだって逃げてかないだろ?」
確かに、むしろ果敢につついていってる。
「魔除けみたいなものだと思ってくれたらいい」
リゼルは僕の頬に、自分の頬を擦り寄せてくる。全身で匂いをつけるみたいに。
マーキングされたってことは、どんな理由があれ、リゼルのモノになったってことなんだろうし……。今までと違う感情が、そこにはあるのかもしれない。
……非常食、的な……?
「いざとなったら、食べて……いいからね。僕のこと」
「だから食べないって!」
「でも、美味しそうだって言ってた……」
「食べたらシアン、なくなっちゃうだろ。もう話せなくなるだろ。動かなくなるだろ。そんなのオレ、ヤダ」
ギューッと抱きつかれて、しゃがんでいた僕は体勢を崩して床に倒れた。
他より少し大きいとはいえ、8歳児も支えられぬほど弱いっていう……。もうすっかり、リゼルのほうが頼りになる……。
「リゼル、重い。重くなったなぁ……」
「シアンはいつまで経っても、細い。もっと太ったほうがいい」
「太らせて食べる気なんだ……」
「も、もー……。ホントに食べるぞっ!」
ガオーなんてされたって、可愛いだけなんだけど。
くすくすと笑う僕の首筋に、リゼルが甘く噛みついた。
痛みはまったくなかったけれど、僕は慌てて首筋を押さえた。
「銀色に光ってない?」
「これくらいなら平気」
「そうなんだ……。どういう仕組み?」
「オレにもよく、わかってない。でも傷口に唾液が入るかどうかだと思う」
「唾液か……」
肉を喰らえば絶大な魔力が手に入るとか、寿命が伸びるとかまで言われている銀色の魔物の唾液だし、他にも何か効果がありそう……。
「あれ? でも、前に僕が指を怪我した時、リゼル舐めたよね」
「あの時は、多分まだ、年齢が足りてなかった」
「ふうん……。年齢……ね」
魔法とか、そういうものの類なのかもしれない。
昔、サクラを殺しそうになって舐めた時も、銀色に光りはしなかったし。
僕はもう一度、服の上から噛み痕を撫でた。
甘く、疼いているような気がする。でも嫌な気分じゃない。
むしろ、なんだろう。とっても幸せな感じがする。
リゼルといる時は、いつも幸せなんだけど、そういうのとはまた少し違った……。
「シアン」
リゼルが僕の上で、柔らかく微笑んだ。
少し大人びたその表情に、胸がきゅーっとなる。
まるで、魅了の魔法にでもかかったみたい。
これも噛み痕がもたらす効果のうちなのかな。僕がリゼルのモノに、なったから。
「これ……魔除けのようなものだって言ったよね」
「ん? ウン」
「なら、誕生日プレゼントはこれとは別に、きちんとあげたいな。何かない?」
「んー」
リゼルは考えながら、僕の上で猫のように伸びをする。
いつも思うけど、リゼルって見た目は狼でも中身は猫と犬のあいのこという感じなんだよな……。そして自分のことを、未だに可愛い仔犬だと思ってる節がある。いや、可愛いけど。
でも実際はもうだいぶ育ってるから、正直上に乗ったまま動かれると胸のあたりが別の意味できゅっとする。
……きゅっというより、グエッ、かな……。
リゼルはしばらく考え込んだあと、僕の胸に顔を埋めた。
「でも、コレ……。噛むの、許してくれたの、ホントに……嬉しかったから、それで、いい……」
リゼルが服の上から僕の肩を撫でる。歯型がついたところを。
さっきの温かい感じが、指先から伝わってくる。
「それにこれ、一ヶ月に一回はつけ直さなきゃいけないし」
「えっ!?」
「また噛んでいいか?」
「ええー……。痛かったからなあ……」
「でも、もう痛くないだろ?」
「そうだけど」
「食べていいとまで言ってくれたのに、ウソだったのか?」
その言葉に嘘はないけど、噛まれるのは……ちょっと、何か……く、クセになりそうというか。
こんなこと、リゼルに言えるはずない。
「なんだか、ヴァンパイアみたいだね」
「血は吸わない」
「蚊みたい……。唾液いれるあたりが」
「……ホントだ」
まさか肯定が返ってくるとは思わなくて、噴き出してしまった。ショックを受けたような顔をしているのが、尚更笑いを誘う。
「いいよ。いくらでも噛んで。それで君が安心できるなら」
「ホント? やったー!!」
これだけ喜んでくれるんだから、クセになるくらい、どうということはない。
それにクセになったって、一ヶ月に一度は噛んでもらえるんだし……。
とか、考えてしまってる時点で、もう手遅れかもしれない。
ずっしりとした重みにリゼルの成長を感じながら、僕はゆっくりと身体を起こした。
来年の誕生日には、こうして持ち上げることもできなくなりそうだな。
この噛み痕も……少しずつ、変化していくんだろうか。
噛まれた時の、感覚も。
魔物の生態について、そんなに書くことがあるのか? と訊かれたら、ないと答える。つまるところ、これはもうただの日記にすぎない。
リゼルが花を摘んできてくれたとか。
サプライズで父の日の贈り物をしてくれたとか。
そんな、5年間の、温かい家族の記録だ。
リゼルがうちに来た日を3歳としているから、今日で8歳。
普通の子どもより少し大きくて、少年から青年へ変わろうとしている姿が僕にはとても眩しい。
それでなくても、リゼルのことは毎日キラキラと輝いて見えるのだけど。
リゼルは素直で、イイコで、ワガママなんかひとつも言わなかった。村の子どもたちとだって仲がいい。挨拶も元気よくかわす。人間と、なんら変わらない。
だから……。
「シアンを、噛みたい」
誕生日プレゼントにソレをねだられた時、僕は自分の耳を疑った。
この5年、ずっと穏やかに暮らしてきたから忘れていた。
僕はいつか、彼に食べられるかもしれない。暮らし始めた頃、幾度となくそう思ったことを。
「あっ。何か、勘違いしてると思うけど、違うからな! 食べないぞ。ヤクソク、した!」
「え……。でも、噛みたいって」
「シルシ! シルシをつける!」
リゼルは屈めと言いたげに、僕の腕をグイグイと引っ張っている。
噛んで印をつけるってことは、歯型ってことか。
「痛そうだし……」
「まあ、痛くないとは言わないけど……」
「それに、なんで印なんてつけたいんだ。そんなことしなくても、僕はちゃんと君のオトーサンだよ」
そもそも父親に独占欲として歯型をつけるのはどうなんだとも思ったけど、魔物では人と考え方が違うのかもしれない。
「ちがくて! 今まではブジだったけど、シアンはゼーッタイに、オレの仲間に狙われやすいと思うから!」
「君の仲間って……。銀色の魔物ってこと?」
「そう! オレの噛み痕があれば安全なんだ」
すでにお手付きの獲物には手を出さないみたいな、暗黙のルールでもあるんだろうか。
つまりは、マーキングみたいなもの……?
でも歯型なんてまどろっこしいことしないで、ヒトクチ噛んだら最後までガブリといってしまいそうだけどな。
なんだか、違和感がある……けど。
「そういう話なら、いいよ」
「いいのか!?」
「どうして驚くの?」
「オレが噛みつきたいから、そういうことを言ってるだけだと思われるかなって……」
「リゼルがそんな子じゃないって、僕はちゃんとわかってるよ」
今はもう胸のあたりにあるリゼルの頭をポンポンと撫でる。
この黒髪に狼耳が生えてるところも、あまり見なくなった。
寝室ではたまにリラックスしきって獣になってるけど、その時は姿形自体が狼だから。
「それに、どうせ銀色の魔物に食べられるのだとしたら、君に食べられたい」
「ゼッタイ、食べない……」
「うん。ふふふ」
僕の言葉に嘘はない。それくらいリゼルのことを想っている。親というのは子のためならなんでもしてあげたくなるもの。
たとえ血が繋がってなくても、魔物であっても、リゼルはかけがえのない僕の息子だ。
成長を見守りたいし、ノートの続きもつけたいから、理由もなく食べられるのは嫌だけど。
「それじゃあ、はい。腕でいいかな?」
「ウデじゃダメだ。目立つから……」
「そっか。歯型だもんね。でも見えてなくても、効果あるものなの?」
「ある」
お腹とか、足とか……。足は子どもたちと川に入ったりすることもあるから、見えるか。
お腹はちょっと、噛まれるのに躊躇いがある。
「肩かな。僕は、襟が広い服をあまり着ないし……。袖も長めの服を着ているから」
「それでいい」
リゼルはまた、僕の腕をグイグイと引っ張った。
はいはい、屈めってことだよね。
床へ屈んで、いつもは見下ろしている顔を見上げる。
リゼルはどこか緊張した面持ちで僕を見ていた。
綺麗な金色の瞳がゆらりと揺れる。
ああ……吸い込まれて、しまいそうだ。
襟を引っ張って肩を出すと、小さな手が僕の肩に触れた。
リゼルは自分が噛む場所を確認するように何度か撫ぜて、舌でゆっくりと舐める。
「いっ……」
ズブリと牙が沈む。僅かな痛みのあと、それはすぐに甘い痺れへと変わった。
そういえば今まで、イタズラでも噛むことはしなかった。僕が怯えると思ったからかもしれない。
なら、きっとこれは……彼にとって、大切なことなんだ。
「できた」
満足気にしてる。最初に牙が埋まった時の感覚を思い出す。
穴が開いてそう。見るのが怖い。それでも怖いもの見たさに目をやると……。
「銀色に……光ってる……?」
「だから、シルシ」
どうやら印というのは、単なる歯型ではないらしい。
「こ、これ、服の上から透けないよね?」
「……多分。こんなにハッキリ光るとは思わなかった」
慌てて服を戻してみる。剥き出しの時は発光しているように見えたのに、布の上からだとなんともなかった。
良かった……。僕はともかく、リゼルまで安堵の息を吐き出している。ヒヤヒヤさせてくれる。
「オレより弱い獣なら、そういうのも全部逃げてくから。ほら、クマとか」
「人間は?」
「ヒトには、効果がない」
「そっか。それなら、バレたりしないね」
服の上から、リゼルが噛んだところを撫でる。指先で皮膚の沈んだ部分を探ると、チリリと甘い痛みが走った。
僕の安全を考えてくれるのは嬉しいけど、それによってリゼルのことがバレたりしたら大変だ。
「あっ! サクラや、牛や、村にいる鶏まで逃げていったりしない!?」
「そのあたりも、弱すぎて大丈夫だと思う。ほら、サクラはオレからだって逃げてかないだろ?」
確かに、むしろ果敢につついていってる。
「魔除けみたいなものだと思ってくれたらいい」
リゼルは僕の頬に、自分の頬を擦り寄せてくる。全身で匂いをつけるみたいに。
マーキングされたってことは、どんな理由があれ、リゼルのモノになったってことなんだろうし……。今までと違う感情が、そこにはあるのかもしれない。
……非常食、的な……?
「いざとなったら、食べて……いいからね。僕のこと」
「だから食べないって!」
「でも、美味しそうだって言ってた……」
「食べたらシアン、なくなっちゃうだろ。もう話せなくなるだろ。動かなくなるだろ。そんなのオレ、ヤダ」
ギューッと抱きつかれて、しゃがんでいた僕は体勢を崩して床に倒れた。
他より少し大きいとはいえ、8歳児も支えられぬほど弱いっていう……。もうすっかり、リゼルのほうが頼りになる……。
「リゼル、重い。重くなったなぁ……」
「シアンはいつまで経っても、細い。もっと太ったほうがいい」
「太らせて食べる気なんだ……」
「も、もー……。ホントに食べるぞっ!」
ガオーなんてされたって、可愛いだけなんだけど。
くすくすと笑う僕の首筋に、リゼルが甘く噛みついた。
痛みはまったくなかったけれど、僕は慌てて首筋を押さえた。
「銀色に光ってない?」
「これくらいなら平気」
「そうなんだ……。どういう仕組み?」
「オレにもよく、わかってない。でも傷口に唾液が入るかどうかだと思う」
「唾液か……」
肉を喰らえば絶大な魔力が手に入るとか、寿命が伸びるとかまで言われている銀色の魔物の唾液だし、他にも何か効果がありそう……。
「あれ? でも、前に僕が指を怪我した時、リゼル舐めたよね」
「あの時は、多分まだ、年齢が足りてなかった」
「ふうん……。年齢……ね」
魔法とか、そういうものの類なのかもしれない。
昔、サクラを殺しそうになって舐めた時も、銀色に光りはしなかったし。
僕はもう一度、服の上から噛み痕を撫でた。
甘く、疼いているような気がする。でも嫌な気分じゃない。
むしろ、なんだろう。とっても幸せな感じがする。
リゼルといる時は、いつも幸せなんだけど、そういうのとはまた少し違った……。
「シアン」
リゼルが僕の上で、柔らかく微笑んだ。
少し大人びたその表情に、胸がきゅーっとなる。
まるで、魅了の魔法にでもかかったみたい。
これも噛み痕がもたらす効果のうちなのかな。僕がリゼルのモノに、なったから。
「これ……魔除けのようなものだって言ったよね」
「ん? ウン」
「なら、誕生日プレゼントはこれとは別に、きちんとあげたいな。何かない?」
「んー」
リゼルは考えながら、僕の上で猫のように伸びをする。
いつも思うけど、リゼルって見た目は狼でも中身は猫と犬のあいのこという感じなんだよな……。そして自分のことを、未だに可愛い仔犬だと思ってる節がある。いや、可愛いけど。
でも実際はもうだいぶ育ってるから、正直上に乗ったまま動かれると胸のあたりが別の意味できゅっとする。
……きゅっというより、グエッ、かな……。
リゼルはしばらく考え込んだあと、僕の胸に顔を埋めた。
「でも、コレ……。噛むの、許してくれたの、ホントに……嬉しかったから、それで、いい……」
リゼルが服の上から僕の肩を撫でる。歯型がついたところを。
さっきの温かい感じが、指先から伝わってくる。
「それにこれ、一ヶ月に一回はつけ直さなきゃいけないし」
「えっ!?」
「また噛んでいいか?」
「ええー……。痛かったからなあ……」
「でも、もう痛くないだろ?」
「そうだけど」
「食べていいとまで言ってくれたのに、ウソだったのか?」
その言葉に嘘はないけど、噛まれるのは……ちょっと、何か……く、クセになりそうというか。
こんなこと、リゼルに言えるはずない。
「なんだか、ヴァンパイアみたいだね」
「血は吸わない」
「蚊みたい……。唾液いれるあたりが」
「……ホントだ」
まさか肯定が返ってくるとは思わなくて、噴き出してしまった。ショックを受けたような顔をしているのが、尚更笑いを誘う。
「いいよ。いくらでも噛んで。それで君が安心できるなら」
「ホント? やったー!!」
これだけ喜んでくれるんだから、クセになるくらい、どうということはない。
それにクセになったって、一ヶ月に一度は噛んでもらえるんだし……。
とか、考えてしまってる時点で、もう手遅れかもしれない。
ずっしりとした重みにリゼルの成長を感じながら、僕はゆっくりと身体を起こした。
来年の誕生日には、こうして持ち上げることもできなくなりそうだな。
この噛み痕も……少しずつ、変化していくんだろうか。
噛まれた時の、感覚も。
10
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる