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結婚しようよ
7話目
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大人びていると思っていたけれど、彼らはまだ16、18だという。リゼルのほうが年下だと知ったら驚くだろうな。まあ、そうは見えないんだけども。
でも同年代であることは確かで、みんなすぐに打ち解けていた。リゼルは……というか、銀色の魔物は基本的に人間が好きらしいので、そのおかげもあるだろう。
やや凶悪な容姿に反し、リゼルは懐っこいし笑顔も可愛いので人に好かれやすい。少しだけ引いてたアンリさんも、少しずつ会話をするようになった。初めは怖がって僕の傍にいたけど、そうするとリゼルが睨むため何かを悟ったようで、積極的に本人に話しかけ始めた。処世術に長けているようだ。
ミシェルくんを無事に宿屋へ送り届けると、女将さんは泣きながら駆け寄ってその身体を抱きしめた。
「良かった。本当に……ありがとうございます。なんと言っていいのか」
こちらも貰い泣きだ。お父さんも抱き合う母子を見ながら後ろで泣いてるし、リゼル以外はみんな泣いてた。もちろん、ミシェルくんを誘拐した3人組も。
気持ちはわかるけど、君たちが泣くのか、と突っ込みたくはなった。
「お前らが泣くのかよ」
リゼルが突っ込んでしまった。空気を読もうよ、そこは。
「あ、あの……。この方たちは?」
「ママ! ボクがね、おじーちゃんに会いたいからつれてってーってゆったの!」
焦ったようにまくしたてる我が子の姿に、母親は何かを悟ったらしい。
「そう……」
短く返事をして、彼らを見た。
「お父様に命令されたの?」
「いいえ……!」
緊張が走る中、たどたどしく説明していたけれど、僕らが聞いた話とは少し違って彼らが独断でミシェルくんを連れ出そうとしていたことになっていた。
「本当に申し訳ありませんでした」
「いくらどんな事情があっても、親に断りなく子どもを連れまわすのは、とてもいけないことです。貴方たちには罰を与えなければなりません」
優しく諭すような声で言って、アンリさんの頭を撫でる。
彼らは泣きながら一様に頷き罰が与えられるのを待っていた。
「私たちを、お父様のところまで無事に護衛すること。ただしお父様との間に何かあればこちらに味方し、この村まで送り届けてくれること。いいですか?」
そのままミシェルくんだけ連れていくこともできたのに、きちんと親元まで送り、謝りに来たことへの温情か。女将さんの罰は罰とも言えない優しいものだった。3人はお約束しますと首が千切れそうなほど頷き、また泣いた。
「でもお父様も、私が出ていってから少しまるくなったのかしら。孤児の面倒を見るなんてそんな優しいことをする人ではなかったのに」
「それなら僕、少しだけ理由がわかりますよ。ほら、アンリさん……女将さんに似てますから」
2人は並んでいると、まるで姉妹みたいに見える。
ミシェルくんも甘えるようにお姉ちゃんなんて言って抱きついて、ほのぼのした空気が流れる。是非僕ではなく、アンリさんを未来のお嫁さん候補にしてほしいものだ。
「お2人とも、この度は本当にありがとうございます。お礼に宿泊代は無料にさせていただきます」
「やったー!」
相変わらずリゼルは遠慮がない。でもこれくらい素直に喜ぶほうが、相手も気持ちいいかもしれないな。僕も笑顔でお礼を言った。
「それと、リリちゃんもありがとう。貴方のおかげできっと、今回のことは幸せに繋がるから」
リリは僕の肩にとまっていたけれど、ふよふよ浮いたかと思うと背中に隠れてしまった。その様子が嬉しそうにも恥ずかしそうにも見えて、思わず笑みがもれてしまう。
「素敵な再会になることを祈ってます」
駆け落ち夫婦と父親の間にどんな劇的な出来事があったのかは知る由もないけれど、長年会わずに暮らしてきた親子が仲直りできるのならば、これほど幸せなことはない。
僕なんてリゼルが結婚して出ていくことを想像するだけで、寂しさで死んでしまいそうだったし。それもあって、どうしても親目線になってしまうな。
……今の女将さんも、そんな感じなのかもしれない。親になったからこそ、わかることもあるだろうから。
まあ、そんな息子も、今では立派な……。
「いいなあ。こういう、親子の絆みたいなの。シアン、オレたちも結婚しよ?」
「えっ!? はッ……!? もうしてるだろ!」
唐突にとんでもないことを言われて、反射的に答えてしまった。
僕の指にはリゼルのくれた指輪があるし、人間式の結婚云々言っていたから、てっきりそんな気でいた。
「でもシアン嫁って言ったら否定したし。ジジツコンってヤツなんだろ、オレたち」
「……そんな言葉よく知ってたね。もう黙って」
ここで『子どももできたし』とでも言われようものなら、恥ずかしさで死んでしまう。あと嫁ではない。男なんだから。
周りはめでたい続きねーなんて祝福ムードだし、ミシェルくんはシアンさんとはボクが結婚するんだとか言い始めて、リゼルがまたそれにムキになるものだから。
「なあ、シアン。返事は?」
「……はい」
次の目的地は同性同士で結婚できる街になった。
でも同年代であることは確かで、みんなすぐに打ち解けていた。リゼルは……というか、銀色の魔物は基本的に人間が好きらしいので、そのおかげもあるだろう。
やや凶悪な容姿に反し、リゼルは懐っこいし笑顔も可愛いので人に好かれやすい。少しだけ引いてたアンリさんも、少しずつ会話をするようになった。初めは怖がって僕の傍にいたけど、そうするとリゼルが睨むため何かを悟ったようで、積極的に本人に話しかけ始めた。処世術に長けているようだ。
ミシェルくんを無事に宿屋へ送り届けると、女将さんは泣きながら駆け寄ってその身体を抱きしめた。
「良かった。本当に……ありがとうございます。なんと言っていいのか」
こちらも貰い泣きだ。お父さんも抱き合う母子を見ながら後ろで泣いてるし、リゼル以外はみんな泣いてた。もちろん、ミシェルくんを誘拐した3人組も。
気持ちはわかるけど、君たちが泣くのか、と突っ込みたくはなった。
「お前らが泣くのかよ」
リゼルが突っ込んでしまった。空気を読もうよ、そこは。
「あ、あの……。この方たちは?」
「ママ! ボクがね、おじーちゃんに会いたいからつれてってーってゆったの!」
焦ったようにまくしたてる我が子の姿に、母親は何かを悟ったらしい。
「そう……」
短く返事をして、彼らを見た。
「お父様に命令されたの?」
「いいえ……!」
緊張が走る中、たどたどしく説明していたけれど、僕らが聞いた話とは少し違って彼らが独断でミシェルくんを連れ出そうとしていたことになっていた。
「本当に申し訳ありませんでした」
「いくらどんな事情があっても、親に断りなく子どもを連れまわすのは、とてもいけないことです。貴方たちには罰を与えなければなりません」
優しく諭すような声で言って、アンリさんの頭を撫でる。
彼らは泣きながら一様に頷き罰が与えられるのを待っていた。
「私たちを、お父様のところまで無事に護衛すること。ただしお父様との間に何かあればこちらに味方し、この村まで送り届けてくれること。いいですか?」
そのままミシェルくんだけ連れていくこともできたのに、きちんと親元まで送り、謝りに来たことへの温情か。女将さんの罰は罰とも言えない優しいものだった。3人はお約束しますと首が千切れそうなほど頷き、また泣いた。
「でもお父様も、私が出ていってから少しまるくなったのかしら。孤児の面倒を見るなんてそんな優しいことをする人ではなかったのに」
「それなら僕、少しだけ理由がわかりますよ。ほら、アンリさん……女将さんに似てますから」
2人は並んでいると、まるで姉妹みたいに見える。
ミシェルくんも甘えるようにお姉ちゃんなんて言って抱きついて、ほのぼのした空気が流れる。是非僕ではなく、アンリさんを未来のお嫁さん候補にしてほしいものだ。
「お2人とも、この度は本当にありがとうございます。お礼に宿泊代は無料にさせていただきます」
「やったー!」
相変わらずリゼルは遠慮がない。でもこれくらい素直に喜ぶほうが、相手も気持ちいいかもしれないな。僕も笑顔でお礼を言った。
「それと、リリちゃんもありがとう。貴方のおかげできっと、今回のことは幸せに繋がるから」
リリは僕の肩にとまっていたけれど、ふよふよ浮いたかと思うと背中に隠れてしまった。その様子が嬉しそうにも恥ずかしそうにも見えて、思わず笑みがもれてしまう。
「素敵な再会になることを祈ってます」
駆け落ち夫婦と父親の間にどんな劇的な出来事があったのかは知る由もないけれど、長年会わずに暮らしてきた親子が仲直りできるのならば、これほど幸せなことはない。
僕なんてリゼルが結婚して出ていくことを想像するだけで、寂しさで死んでしまいそうだったし。それもあって、どうしても親目線になってしまうな。
……今の女将さんも、そんな感じなのかもしれない。親になったからこそ、わかることもあるだろうから。
まあ、そんな息子も、今では立派な……。
「いいなあ。こういう、親子の絆みたいなの。シアン、オレたちも結婚しよ?」
「えっ!? はッ……!? もうしてるだろ!」
唐突にとんでもないことを言われて、反射的に答えてしまった。
僕の指にはリゼルのくれた指輪があるし、人間式の結婚云々言っていたから、てっきりそんな気でいた。
「でもシアン嫁って言ったら否定したし。ジジツコンってヤツなんだろ、オレたち」
「……そんな言葉よく知ってたね。もう黙って」
ここで『子どももできたし』とでも言われようものなら、恥ずかしさで死んでしまう。あと嫁ではない。男なんだから。
周りはめでたい続きねーなんて祝福ムードだし、ミシェルくんはシアンさんとはボクが結婚するんだとか言い始めて、リゼルがまたそれにムキになるものだから。
「なあ、シアン。返事は?」
「……はい」
次の目的地は同性同士で結婚できる街になった。
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