イケメンと五月病

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その後の話

夜空も羨む

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 支倉と付き合い始めてから、初めてのイベントらしいイベント。
 今日は七夕。

 案の定支倉は、俺を家に誘ってきた。
 
「隆弘、今夜うちへきて七夕しないか? 小さな笹を買ってあるんだ」
 
 短冊に書く願い事なんて、お約束のように、ずっと一緒にいられますように、とかなんだぜ。
 本当、バカップルみたいだよな。バカップルな自覚はあるが。
 支倉はともかく俺は人生初の恋人なんだ。浮かれても仕方ない。
 そして支倉はそんな俺から見ても、どうしたんだお前って感じのはしゃぎっぷりだ。
 
「……嫌か?」
「な訳ねーだろ。じゃ、今日の帰りに酒買ってお前の家に直行するか」
 
 嬉しそうに顔を輝かせる支倉。
 あー。お前、本当に可愛いよ。可愛い。バカップルな願い事くらい、いくらでも書いてやる。
 支倉の作ってきた弁当をつつきながら幸せに浸る。
 まさか目の前のイケメンが作ってきた弁当だなんて、誰も思わないだろうな。
 
「七夕の日に雨が降らないといいなと思うのは、子供の時以来だ」
「いつもは、七夕なんてどうでもいいって感じか? 隆弘らしいな」
「いや、去年までは雨が降るように祈ってたからな」
「た、隆弘……」
 
 俺の隣には恋人がいないのに、空のバカップル許すまじ。という感じだった。もちろん、地上のバカップルどもも爆発しろと思っていたが。
 
「俺、そんなひねた性格してるんだぞ。お前いつか絶対付き合ったこと後悔するね」
「絶対しない。お前がひねた性格してることくらい知ってるし、実はサドだってことは最近知ったが、後悔はしてない。する予定もない」
「奇特な奴……」
「……まあ、言った台詞を後悔することはしょっちゅうだけどな」
「たとえば?」
「言ったら今、後悔する」
「言えよ。そうしたら今からトイレ連れ込んでキスしてやる」
 
 支倉は頬を染めて、俯いた。
 
「後悔しすぎるのが目に見えるから言わない」
「なんだよ。してほしくねえの?」
「…………ない」
 
 俺は食べかけの弁当箱を閉じて、支倉の手を引いた。
 
「お、おいっ、どこへ」
「トイレ」
「何も言ってないぞ、俺」
「別に、普通にトイレ行くだけだろ」
 
 繋ぎっぱなしは目立つので、手はすぐに離した。でもきっちりついてくる。
 わかっててついてくるんだから、すっかり期待してるんだろう。
 
「どのみちトイレには、行っておいたほうがいいと思うぜ。目は口ほどにものを言う……ってな」
「俺っ、そんな顔に出て……?」
 
 支倉は真っ赤になって、トイレに駆け込んだ。
 さて、それじゃ今から後悔させてやるとしますかね。
 
 
 
 
 その日支倉が短冊に書いた願い事は、隆弘が会社でキス以上してきませんように、だった。
 
「お前が拒めばいい話だろ」
「拒めないから困るんだろ」
「……支倉」
「っ、隆弘……ちょ、まだ酒、が……ッ」
 
 織り姫と彦星が羨むくらい、それは見事なバカップル。 
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