イケメンと五月病

used

文字の大きさ
14 / 29
その後の話

イケメンと夏休み

しおりを挟む
 夏休みがやってくる。齢24にして、人生初、恋人がいる夏休み。
 学生の頃は夏休みの予定を立てるカップルを見るたび後ろから蹴り飛ばしてやりたくなったし、去年は支倉を見ながらイケメン死ねと思っていた。
 今思えば支倉は去年も俺を誘い出そうとしていた。あの頃は本当に、余裕見せんなこのイケメン爆発しろとしか思わなかったんだが。
 今年はそのイケメンと恋人同士として夏休みの予定を立てることになるってんだから、人生何が起こるかわからない。
 
「海とか……」
「男二人でか?」
「遊園地」
「男二人でか?」
「水族館」
「男ふた」
「ああ、もう。じゃあどこならいいんだよ!」
 
 提案をことごとくお決まりの文句でかわしていったら、支倉が切れた。
 
「家に引きこもってジグソーパズル完成させようぜ」
「せっかくの夏休みなのに? 俺、隆弘とどこか行けるの、凄く楽しみにしてたんだぞ」
 
 まあ、それは……テーブルに余すところなく差し出されたこのパンフレットの山を見ればわかる。
 どれだけ楽しみにしてたんだよ。可愛い奴だな。
 支倉が上機嫌で淹れてくれたコーヒーは、一口啜ると幸せの味がした。
 
「外出面倒だしなぁ」
「そう言わずにさ。動物園とか。なんならラブホ巡りとか」
「それお前が行きたいだけだろ、馬鹿」
 
 とか言いつつ、頷きそうになってしまった。
 確かにちょっと、してみたい。
 
「支倉が縛らせてくれたら考えてやる」
「は?」
「その前に目の前でストリップしてみせろよ。あ、靴下だけはそのままでな」
「ばっ……。お前のが馬鹿だ、何考えてんだ!」
「俺がやってやったら大喜びするくせに、よく言うぜーこの変態」
「隆弘に言われたくない!」
 
 俺はそれ以上何も言わずに、ただ支倉をじっと見た。
 支倉は蛇に睨まれた蛙のように固まって、少し間を開けて目を逸らした。
 
「……そ、それやったら、どこでも俺の好きな所へ行ってくれるか?」
「さあな。ただ、出かける気にはなるかもしれん」
 
 残念ながら、やってくれたとしてもお前の好きな場所に付き合う予定はない。
 俺はお前以上に、恋人と過ごす夏休みってやつが楽しみだ。お前と過ごせるのを、凄く楽しみにしていた。
 だからどこへ行くかはもう予定を立ててあるし、旅館に予約だって入れてある。
 今年は俺に付き合えよ、支倉。来年はお前の好きにさせてやるから。
 それを伝えたらお前は手放しで喜ぶんだろう。俺はそれを考えるとなんだか気恥ずかしくて、そんで……まあ、幸せな気分に、ならないこともない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...