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その後の話
ホワイトデーは二度返し
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バレンタインチョコを貰ったことのなかった俺は、お返しをするのもこれが初めてだ。
かなり高いのを、奮発してネットで注文。会社で支倉に軽い感じで渡してやろうと思ってた。
何しろ奴は、みんなの前でチョコを渡してきたからな。俺が返してもシャレだと思われるくらいで問題はない。……まあ、ちょっと違和感はあるかもしれないが。
俺もみんなの前で支倉を俺のもの宣言してやる。
……はずだったのだが。
「ほら、支倉。バレンタインのお返しやるよ」
「あたしもー! あれ本当に美味しかったぁ!」
「あ、ありがとう」
俺より先にいろんな奴らが渡し始めた。男含め。
おま……山村、あんな一粒のチョコにそんな高そうなお返しって、ホモかお前! 支倉は俺のものだぞ、残念だったな!
支倉はイケメンとはいえ、中身はいわゆる『いい人』で、かっこよく育ってひねくれる隙がないから真っ直ぐ育ったんだなと思わされるような男だ。したがって、男からも好かれている。おかしな意味ではなく。
付き合う前は、見た目も中身もイケメンとか爆発しろ、とよく思ったもんだ。
……まあ、思ってはいても、好きだったんだけどな、その頃から。恋愛感情ではなかったが。
そんな支倉がチョコを配ったりなんざしたもんだから、ここぞとばかりにお返しを貰っているということだ。
バレンタインは、なんというかあって当たり前のことだからお前がチョコを貰っていても我慢できたさ。社会人だしな。
でもな、ホワイトデーに男が貰うとかないだろ! 逆チョコなんて浸透してないぞ、うちの会社では!
俺は渡すはずだったお返しを鞄にしまいこんで、何か言いたそうにこちらをちらちら見てくる支倉を無視したまま、業務を開始した。
昼休み、示し合わせるでもなく一緒に外へ出て……人気のない会社裏で、支倉に謝られた。
「悪い、まさかこんなことになるなんて」
「別に気にしてない」
「嘘だ。してるだろ。俺もう隆弘が嫉妬深いことくらい、わかってるんだからな」
「……お前がチョコなんて配るからだろ!」
「隆弘だって喜んでくれたくせに……」
支倉が拗ねたような声を出しながら、俺のネクタイをいじり始めた。
「何してんだよ」
「んー……っと、できた」
「タイピン?」
「そう。ホワイトデーのお返し」
「は? 俺やってねーけど?」
「貰ってくれてありがとうみたいな?」
こいつは頭がおかしい。気がいいにもほどがあるだろ。
バレンタインにプレゼントしておきながら、ホワイトデーでもまた渡すとか……。
それとも俺、お返しをしないとでも思われてるんだろうか。
「それに一応、隆弘からも貰っただろ。あの……その、あれを……」
「ああ……」
確かにいろいろしたが。口移しとか、チョコ塗って舐めさせたりとか。
「まあ、いいんだよ。自己満足だから。さ、じゃあ、どこかへ食べに行こう」
「そうだな」
財布だけ持ってきたから、俺のお返しは鞄に入ったまま。
こいつこんなんで、俺が渡したら嬉しくて気でも失っちまうんじゃないか?
不安だから渡すのは、家へ泊まらせて日付が変わるギリギリとかにしよう。
お前が気を失うのは、ベッドの上だけで充分だからな。
かなり高いのを、奮発してネットで注文。会社で支倉に軽い感じで渡してやろうと思ってた。
何しろ奴は、みんなの前でチョコを渡してきたからな。俺が返してもシャレだと思われるくらいで問題はない。……まあ、ちょっと違和感はあるかもしれないが。
俺もみんなの前で支倉を俺のもの宣言してやる。
……はずだったのだが。
「ほら、支倉。バレンタインのお返しやるよ」
「あたしもー! あれ本当に美味しかったぁ!」
「あ、ありがとう」
俺より先にいろんな奴らが渡し始めた。男含め。
おま……山村、あんな一粒のチョコにそんな高そうなお返しって、ホモかお前! 支倉は俺のものだぞ、残念だったな!
支倉はイケメンとはいえ、中身はいわゆる『いい人』で、かっこよく育ってひねくれる隙がないから真っ直ぐ育ったんだなと思わされるような男だ。したがって、男からも好かれている。おかしな意味ではなく。
付き合う前は、見た目も中身もイケメンとか爆発しろ、とよく思ったもんだ。
……まあ、思ってはいても、好きだったんだけどな、その頃から。恋愛感情ではなかったが。
そんな支倉がチョコを配ったりなんざしたもんだから、ここぞとばかりにお返しを貰っているということだ。
バレンタインは、なんというかあって当たり前のことだからお前がチョコを貰っていても我慢できたさ。社会人だしな。
でもな、ホワイトデーに男が貰うとかないだろ! 逆チョコなんて浸透してないぞ、うちの会社では!
俺は渡すはずだったお返しを鞄にしまいこんで、何か言いたそうにこちらをちらちら見てくる支倉を無視したまま、業務を開始した。
昼休み、示し合わせるでもなく一緒に外へ出て……人気のない会社裏で、支倉に謝られた。
「悪い、まさかこんなことになるなんて」
「別に気にしてない」
「嘘だ。してるだろ。俺もう隆弘が嫉妬深いことくらい、わかってるんだからな」
「……お前がチョコなんて配るからだろ!」
「隆弘だって喜んでくれたくせに……」
支倉が拗ねたような声を出しながら、俺のネクタイをいじり始めた。
「何してんだよ」
「んー……っと、できた」
「タイピン?」
「そう。ホワイトデーのお返し」
「は? 俺やってねーけど?」
「貰ってくれてありがとうみたいな?」
こいつは頭がおかしい。気がいいにもほどがあるだろ。
バレンタインにプレゼントしておきながら、ホワイトデーでもまた渡すとか……。
それとも俺、お返しをしないとでも思われてるんだろうか。
「それに一応、隆弘からも貰っただろ。あの……その、あれを……」
「ああ……」
確かにいろいろしたが。口移しとか、チョコ塗って舐めさせたりとか。
「まあ、いいんだよ。自己満足だから。さ、じゃあ、どこかへ食べに行こう」
「そうだな」
財布だけ持ってきたから、俺のお返しは鞄に入ったまま。
こいつこんなんで、俺が渡したら嬉しくて気でも失っちまうんじゃないか?
不安だから渡すのは、家へ泊まらせて日付が変わるギリギリとかにしよう。
お前が気を失うのは、ベッドの上だけで充分だからな。
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