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その後の話
イケメンとバレンタイン(R18
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バレンタイン……それは、クリスマスに並んで、もてない男がもてる男に対して爆発しろ! と願う日だ。
俺は、自分の外見は普通だとは思うのだが、この行事とはまったく縁のない人生を送っている。
何しろ影が薄いせいで、義理チョコですら渡し忘れられることがあるくらいだ。別に避けられたり、気持ち悪がられたりしているわけではなく、本当に忘れられてるらしい。たくさん謝られるが、心の傷は癒えない。
仕事だって別に、できないわけじゃない。逆に、多少仕事ができないなら、そういう意味で印象づけられるんだと思う。よくも悪くも、本当に平凡だってことだ。
そんな、ごくごく普通の会社員をしている俺の恋人は、普通とはかけ離れた場所にいる……しかも、男だった。
デスクの上を見てみれば、漫画かよ! と突っ込みたいほど、チョコの山ができている。去年も凄かったが、今年はそれ以上だ。
そして俺は、去年とは別の意味で腹が立っている。社会人なんだから礼儀として義理と言われたチョコは受け取っておくべきとは思うが、それでもダメだ。俺は嫉妬深い男だし。
しかも絶対に本命チョコもあるに決まってる。
今までだってよりどりみどりだったのに、その中から俺を選んでる。あいつの趣味の悪さは保証付きだ。他の女に今更なびく心配は、ないと思う。
そこまでわかっていても腹が立つ。
「相変わらず凄いな、お前の机」
僻む男性陣にそう言われ囲まれながら、支倉がちらちらとこちらを見てくる。
その、犬がご主人様のご機嫌を伺うような尻尾の垂れた様子に胸の奥がうずうずする。怒りより、愛しさでいっぱいになる。
今すぐ服を全部はいで、この場で奴が俺のものだとみんなに見せつけたい。
……まあ、そんなことはできるはずがない。そのあたりはきちんと、わきまえている。
「た、隆弘……」
しかし、支倉のほうはいまいちわきまえてない。
そんな情けない表情しながら俺のほうくんなよ。ばれるだろ。
ただでさえ忘年会の時から、なんだかみんなの視線が生温いんだ。
「男からなんて、気味が悪いかもしれないが……つ、つく……作ってきたんだ、チョコ……。始業前に食べてくれないか」
……は? って、ええ? な……。これは夢か? いくらなんでもこんな、みんなの前で……っ。
とか思いつつも、あまりに驚きすぎてナチュラルにひとつ摘んでしまった。
大きめな色気のないタッパーに、トリュフチョコがたくさん詰まっている。
口の中に放ると、緊張で味がわからないかもしれないと思ったが、本当に甘い……幸せの味がした。
「美味い」
「よかった」
支倉も幸せそうに笑って、それから……呆気にとられているみんなのほうを向き直って、タッパーを差し出した。
「みんなでどうぞ。男性のかたも、気持ち悪くなければ……まあ、シャレってことで。実は俺、料理とか、お菓子づくりが趣味なんですよ」
そうだな。確かに、告白とか意味のあるチョコなら、普通はきちんとラッピングしてある。タッパーはないだろ、タッパーは。俺が意識しすぎなだけだ。
だって……恋人からの、チョコだったから。
支倉の言葉に、一瞬固まっていた同僚たちもそういうことかと次々とチョコを手に取り出す。
「わっ、マジうめえ。お前イケメンで料理上手とか、オレが嫁にほしいくらいだ」
やらんぞ。絶対に。
「普通に私たちが旦那にほしい~。男の人が料理上手ってポイント高いわよね」
「そんなこといって、オレらが料理好きでーとか言ったら、男のくせにキモッとか思うんだろ?」
「やだあ、思いませんよ、そんなことー」
普通に和気藹々としている。まあ……支倉は、婿にもいけないけどな。俺がそういう身体にした。
そんでさ、お前、手ぇ震えてるぞ。くそ、可愛いな。きっと凄い勇気を出してくれたんだろう。
震えてる手とか表情とか、俺に渡す時だけ緊張してたり、もうバレバレだよなあ。裏ではどう言われていることやら。
どうやらうちの課は空気の読める社員ばかりで、まだつきあっているのか訊かれたことはないが、暗黙の了解みたいになっているのかもしれない。
「じゃ、私からもみなさんにチョコです。義理ですけどね」
「あたしからもどうぞ」
「おー、ありがとー!」
みんなが次々とチョコと配り始める。
「あっ……広瀬さんの分……!」
「……いや、いいよ、俺は。あまり甘いもの好きじゃないから」
「そ、そう。ごめんね……」
そしてやっぱり俺への義理は、忘れられているのだった。
でも、もしかすると今年は、故意に忘れられているのかもしれないと、ちょっとだけ思った。
……支倉はきっちり貰えていたから、それはないか。
「お前、あれはなんだよ」
ようやく家について、支倉にそう訪ねる。床に正座する支倉。仁王立ちの俺。
帰るのがとても待ち遠しかった。支倉がイケメンなせいで、今日はどこにいても人の視線がつきまとい、みんなにチョコを配布した理由を問いつめることができなかったからだ。
まあ訊かずともだいたいわかってはいるが。でもやっぱ、こいつの口から直接訊きたい。
「みんなの前で渡したかったんだ。お前が恋人だって公表できないから、ああして全員に配れば違和感がないかと思った!」
「馬鹿か、違和感ありまくりだったっつーの!」
「……だよな」
自覚はあったらしい。俺の前だとどうしてこうも三枚目になるのか。いや、見た目は相変わらず二枚目のままだが。
二枚目半ってこういうことを言うのかもしれない。
「でもまあ、正直嬉しかった」
「お……怒ってないのか?」
お前はみんなの前で、俺がお前のものだって宣言したつもりだったんだろう。俺は、宣言してもらえたようで……嬉しかった。
今までたくさん女とつきあってきて、それでも俺がいいと言う支倉。俺の下で、女のように喘いで俺のことを好きだと、全身で伝えてくれる。
俺しか知らないそんな顔を、他の誰にも見せたくない。今じゃもう、その爽やかな笑顔すら俺が独り占めできればいいと思っている。
だからこそ。
「怒ってる。お前がチョコをたくさん貰ったことは」
「妬いてくれて、嬉しい」
「馬鹿……。あと、もうひとつ。お前がみんなにチョコを配ったことに関しても怒っている」
「っ……でも、あれは。ああでもしないと……俺だけが変態扱いされる分には構わないが、隆弘に迷惑かけるわけにはいかないし」
「俺以外が、お前の作ったチョコの味知ってんだぜ? いい気分なわけないだろ!」
「嬉しかったって言ったくせに……」
「それとこれとは話が別だ」
支倉はきゅっと唇を噛みしめて、俺を見上げた。
「どうすれば、機嫌を直してくれる? 舐めればいいか?」
「それはお前も嬉しいだけだろ」
「……う」
いつもだいたいそうだが、今日の支倉はひたすら低姿勢。みんなの前でチョコをプレゼント、という暴挙をやらかしたからだろう。
いつもより抵抗なく、なんでもやってくれそうだ。でも……。
俺は視線を支倉と同じ位置に落として、そっとキスをした。
「た、隆弘?」
「好きだ、涼佳」
「っ……何?」
人がせっかく告白してんのに、その何もわかってなさそうな顔はなんなんだよ、お前。
「今日はなんの日だ?」
「バレンタイン……」
「好きな人に、想いを伝える日だろ。俺はチョコは用意してないからな、告白くらいは、きっちりさせてくれ」
無言で、ぎゅうぎゅう抱きしめられた。
「うお、痛っ……痛いって」
「隆弘、愛してる!」
「わーってるよ」
「そんな言葉じゃ片づかないんだよ。どうしたらいい? 何をしたら、俺の気持ちが奥底まで伝わる? 今日は俺が抱いていいか?」
「何ちゃっかり願望口にしてんだ。と言いたいとこだが、まあ、今日は……いいぞ」
「っ……本当に?」
「なんだよ」
「だってこういう日だと、隆弘絶対に……」
「抱かない、とは言ってない。両方すりゃいいだろ。俺が先に抱くと、お前感じまくってそれどころじゃなくなるからな」
俺はそう言って、支倉のそこをズボンの上から指先で撫でた。
「もう前だけでイケるかどうか、怪しいくらいだし?」
「俺は隆弘のことを想うだけでイケるから大丈夫だ!」
馬鹿だな。馬鹿だ。そんで、超可愛い。今日は俺の気持ち、とことんまで伝えてやりてえ。
「でもまあ、とりあえず、先に舐めてもらうかな」
「そんなのいくらでも……」
「あ、待て」
さっさと俺のズボンを脱がそうとする支倉を押しとどめる。
「なんだよ」
「そうじゃなくてだな」
上着とシャツを脱いでから、支倉が貰ってきたチョコを一つ取り出す。
「お前が貰ってきたやつで悪いが」
口に放って、舐めとかしてから支倉にキスをして、口内へ流し込んでやった。
「隆弘……」
「甘いな。お前このチョコ、一人で食べたらダメだからな。全部俺と愛し合うのに使うんだ」
もう一度、舐めてとかす。今度は手に吐き出して、身体に塗りたくった。
「どうだ? チョコレートプレイ。いいぜ、好きなだけ舐めても」
支倉が震える指先で俺の肩を掴んで、言葉もなくチョコのついた肌を舐めあげていく。
その夢中な様子が可愛くて可愛くて、たまらない。肌を這う舌は気持ちいいが、喘ぐほどじゃない。支倉を舐めたらきっといい声でなくんだろうと想像するほうが、よっぽど感じる。
「隆弘の身体、甘い……」
はっ、とそれだけでチョコが溶けそうなくらい熱い息を吐き出しながら、支倉が囁く。俺はそんな奴の髪をさらりと撫でて、服を脱がせていく。
「俺も支倉を舐めたい」
服を脱がせてから、背筋に沿ってチョコを垂らす。
「ひゃっ……。ば、馬鹿。背中を舐められたら、俺が隆弘を舐めにくいだろ」
「じゃ、お前は指舐めてて」
「ん、んんっ……」
チョコのついてない指先を、美味しそうに舐める支倉。たまらん。
「やっぱチョコプレイの醍醐味は、ここにかけることだよな。俺はチョコなしでたっぷりお前を味わうから、俺のココ舐めながら俺の顔跨いでくれるか?」
さっきと同じ要領で、完勃ちしているそこにチョコを垂らしていく。
垂らし終えたあと、支倉の口から指先を抜いた。
「ぷはっ……。はぁ……。いや、舐めるのはいいが、なんで俺が上なんだ。その、奥をほぐしにくいじゃないか」
「ここにチョコぬって上に跨ったら垂れるだろ、チョコが。そういうのはさあ、べたべたになった身体をシャワーで流しながら、中まで洗浄してほぐせばいいだろ。二回戦目は俺が挿れるから、お前も先に洗っておこうぜ。中まで洗いっこだな」
「お前、なんでそんなあけすけなんだよ。今日は……お前だって、その」
「お前が可愛すぎて、そんな余裕がねーからだよ。ほら、早く跨がれって。お前のホワイトチョコ、飲んでやるからさ」
「だ、だから……」
「手作りチョコはみんなに配ったが、これは俺だけの特別製……だろ?」
「馬鹿……。だ、だいたい、お前のはお前ので……甘さ控えめのガトーショコラ作って、冷蔵庫に入ってるんだぞ。昼間のやつとは別に」
「ははっ、お前のことだから、そーだろうと思った」
でもよ、それを後出しにして、機嫌直すためならなんでもするって言い出すとかさ、酷いことされたいって望んでるようなもんだろ?
昼間のチョコも美味かったが、俺のために作ってくれたチョコはきっとそれより美味いだろう。
まあ、俺にとってはお前の身体が一番のごちそうだけどな。
文句を言いながらも恥ずかしそうにおずおずと俺の顔に跨る支倉の特別製を飲むために、指と舌を伸ばす。ちろりと舐めたそれは、なんだかもうすでに甘ったるい気がした。
俺は、自分の外見は普通だとは思うのだが、この行事とはまったく縁のない人生を送っている。
何しろ影が薄いせいで、義理チョコですら渡し忘れられることがあるくらいだ。別に避けられたり、気持ち悪がられたりしているわけではなく、本当に忘れられてるらしい。たくさん謝られるが、心の傷は癒えない。
仕事だって別に、できないわけじゃない。逆に、多少仕事ができないなら、そういう意味で印象づけられるんだと思う。よくも悪くも、本当に平凡だってことだ。
そんな、ごくごく普通の会社員をしている俺の恋人は、普通とはかけ離れた場所にいる……しかも、男だった。
デスクの上を見てみれば、漫画かよ! と突っ込みたいほど、チョコの山ができている。去年も凄かったが、今年はそれ以上だ。
そして俺は、去年とは別の意味で腹が立っている。社会人なんだから礼儀として義理と言われたチョコは受け取っておくべきとは思うが、それでもダメだ。俺は嫉妬深い男だし。
しかも絶対に本命チョコもあるに決まってる。
今までだってよりどりみどりだったのに、その中から俺を選んでる。あいつの趣味の悪さは保証付きだ。他の女に今更なびく心配は、ないと思う。
そこまでわかっていても腹が立つ。
「相変わらず凄いな、お前の机」
僻む男性陣にそう言われ囲まれながら、支倉がちらちらとこちらを見てくる。
その、犬がご主人様のご機嫌を伺うような尻尾の垂れた様子に胸の奥がうずうずする。怒りより、愛しさでいっぱいになる。
今すぐ服を全部はいで、この場で奴が俺のものだとみんなに見せつけたい。
……まあ、そんなことはできるはずがない。そのあたりはきちんと、わきまえている。
「た、隆弘……」
しかし、支倉のほうはいまいちわきまえてない。
そんな情けない表情しながら俺のほうくんなよ。ばれるだろ。
ただでさえ忘年会の時から、なんだかみんなの視線が生温いんだ。
「男からなんて、気味が悪いかもしれないが……つ、つく……作ってきたんだ、チョコ……。始業前に食べてくれないか」
……は? って、ええ? な……。これは夢か? いくらなんでもこんな、みんなの前で……っ。
とか思いつつも、あまりに驚きすぎてナチュラルにひとつ摘んでしまった。
大きめな色気のないタッパーに、トリュフチョコがたくさん詰まっている。
口の中に放ると、緊張で味がわからないかもしれないと思ったが、本当に甘い……幸せの味がした。
「美味い」
「よかった」
支倉も幸せそうに笑って、それから……呆気にとられているみんなのほうを向き直って、タッパーを差し出した。
「みんなでどうぞ。男性のかたも、気持ち悪くなければ……まあ、シャレってことで。実は俺、料理とか、お菓子づくりが趣味なんですよ」
そうだな。確かに、告白とか意味のあるチョコなら、普通はきちんとラッピングしてある。タッパーはないだろ、タッパーは。俺が意識しすぎなだけだ。
だって……恋人からの、チョコだったから。
支倉の言葉に、一瞬固まっていた同僚たちもそういうことかと次々とチョコを手に取り出す。
「わっ、マジうめえ。お前イケメンで料理上手とか、オレが嫁にほしいくらいだ」
やらんぞ。絶対に。
「普通に私たちが旦那にほしい~。男の人が料理上手ってポイント高いわよね」
「そんなこといって、オレらが料理好きでーとか言ったら、男のくせにキモッとか思うんだろ?」
「やだあ、思いませんよ、そんなことー」
普通に和気藹々としている。まあ……支倉は、婿にもいけないけどな。俺がそういう身体にした。
そんでさ、お前、手ぇ震えてるぞ。くそ、可愛いな。きっと凄い勇気を出してくれたんだろう。
震えてる手とか表情とか、俺に渡す時だけ緊張してたり、もうバレバレだよなあ。裏ではどう言われていることやら。
どうやらうちの課は空気の読める社員ばかりで、まだつきあっているのか訊かれたことはないが、暗黙の了解みたいになっているのかもしれない。
「じゃ、私からもみなさんにチョコです。義理ですけどね」
「あたしからもどうぞ」
「おー、ありがとー!」
みんなが次々とチョコと配り始める。
「あっ……広瀬さんの分……!」
「……いや、いいよ、俺は。あまり甘いもの好きじゃないから」
「そ、そう。ごめんね……」
そしてやっぱり俺への義理は、忘れられているのだった。
でも、もしかすると今年は、故意に忘れられているのかもしれないと、ちょっとだけ思った。
……支倉はきっちり貰えていたから、それはないか。
「お前、あれはなんだよ」
ようやく家について、支倉にそう訪ねる。床に正座する支倉。仁王立ちの俺。
帰るのがとても待ち遠しかった。支倉がイケメンなせいで、今日はどこにいても人の視線がつきまとい、みんなにチョコを配布した理由を問いつめることができなかったからだ。
まあ訊かずともだいたいわかってはいるが。でもやっぱ、こいつの口から直接訊きたい。
「みんなの前で渡したかったんだ。お前が恋人だって公表できないから、ああして全員に配れば違和感がないかと思った!」
「馬鹿か、違和感ありまくりだったっつーの!」
「……だよな」
自覚はあったらしい。俺の前だとどうしてこうも三枚目になるのか。いや、見た目は相変わらず二枚目のままだが。
二枚目半ってこういうことを言うのかもしれない。
「でもまあ、正直嬉しかった」
「お……怒ってないのか?」
お前はみんなの前で、俺がお前のものだって宣言したつもりだったんだろう。俺は、宣言してもらえたようで……嬉しかった。
今までたくさん女とつきあってきて、それでも俺がいいと言う支倉。俺の下で、女のように喘いで俺のことを好きだと、全身で伝えてくれる。
俺しか知らないそんな顔を、他の誰にも見せたくない。今じゃもう、その爽やかな笑顔すら俺が独り占めできればいいと思っている。
だからこそ。
「怒ってる。お前がチョコをたくさん貰ったことは」
「妬いてくれて、嬉しい」
「馬鹿……。あと、もうひとつ。お前がみんなにチョコを配ったことに関しても怒っている」
「っ……でも、あれは。ああでもしないと……俺だけが変態扱いされる分には構わないが、隆弘に迷惑かけるわけにはいかないし」
「俺以外が、お前の作ったチョコの味知ってんだぜ? いい気分なわけないだろ!」
「嬉しかったって言ったくせに……」
「それとこれとは話が別だ」
支倉はきゅっと唇を噛みしめて、俺を見上げた。
「どうすれば、機嫌を直してくれる? 舐めればいいか?」
「それはお前も嬉しいだけだろ」
「……う」
いつもだいたいそうだが、今日の支倉はひたすら低姿勢。みんなの前でチョコをプレゼント、という暴挙をやらかしたからだろう。
いつもより抵抗なく、なんでもやってくれそうだ。でも……。
俺は視線を支倉と同じ位置に落として、そっとキスをした。
「た、隆弘?」
「好きだ、涼佳」
「っ……何?」
人がせっかく告白してんのに、その何もわかってなさそうな顔はなんなんだよ、お前。
「今日はなんの日だ?」
「バレンタイン……」
「好きな人に、想いを伝える日だろ。俺はチョコは用意してないからな、告白くらいは、きっちりさせてくれ」
無言で、ぎゅうぎゅう抱きしめられた。
「うお、痛っ……痛いって」
「隆弘、愛してる!」
「わーってるよ」
「そんな言葉じゃ片づかないんだよ。どうしたらいい? 何をしたら、俺の気持ちが奥底まで伝わる? 今日は俺が抱いていいか?」
「何ちゃっかり願望口にしてんだ。と言いたいとこだが、まあ、今日は……いいぞ」
「っ……本当に?」
「なんだよ」
「だってこういう日だと、隆弘絶対に……」
「抱かない、とは言ってない。両方すりゃいいだろ。俺が先に抱くと、お前感じまくってそれどころじゃなくなるからな」
俺はそう言って、支倉のそこをズボンの上から指先で撫でた。
「もう前だけでイケるかどうか、怪しいくらいだし?」
「俺は隆弘のことを想うだけでイケるから大丈夫だ!」
馬鹿だな。馬鹿だ。そんで、超可愛い。今日は俺の気持ち、とことんまで伝えてやりてえ。
「でもまあ、とりあえず、先に舐めてもらうかな」
「そんなのいくらでも……」
「あ、待て」
さっさと俺のズボンを脱がそうとする支倉を押しとどめる。
「なんだよ」
「そうじゃなくてだな」
上着とシャツを脱いでから、支倉が貰ってきたチョコを一つ取り出す。
「お前が貰ってきたやつで悪いが」
口に放って、舐めとかしてから支倉にキスをして、口内へ流し込んでやった。
「隆弘……」
「甘いな。お前このチョコ、一人で食べたらダメだからな。全部俺と愛し合うのに使うんだ」
もう一度、舐めてとかす。今度は手に吐き出して、身体に塗りたくった。
「どうだ? チョコレートプレイ。いいぜ、好きなだけ舐めても」
支倉が震える指先で俺の肩を掴んで、言葉もなくチョコのついた肌を舐めあげていく。
その夢中な様子が可愛くて可愛くて、たまらない。肌を這う舌は気持ちいいが、喘ぐほどじゃない。支倉を舐めたらきっといい声でなくんだろうと想像するほうが、よっぽど感じる。
「隆弘の身体、甘い……」
はっ、とそれだけでチョコが溶けそうなくらい熱い息を吐き出しながら、支倉が囁く。俺はそんな奴の髪をさらりと撫でて、服を脱がせていく。
「俺も支倉を舐めたい」
服を脱がせてから、背筋に沿ってチョコを垂らす。
「ひゃっ……。ば、馬鹿。背中を舐められたら、俺が隆弘を舐めにくいだろ」
「じゃ、お前は指舐めてて」
「ん、んんっ……」
チョコのついてない指先を、美味しそうに舐める支倉。たまらん。
「やっぱチョコプレイの醍醐味は、ここにかけることだよな。俺はチョコなしでたっぷりお前を味わうから、俺のココ舐めながら俺の顔跨いでくれるか?」
さっきと同じ要領で、完勃ちしているそこにチョコを垂らしていく。
垂らし終えたあと、支倉の口から指先を抜いた。
「ぷはっ……。はぁ……。いや、舐めるのはいいが、なんで俺が上なんだ。その、奥をほぐしにくいじゃないか」
「ここにチョコぬって上に跨ったら垂れるだろ、チョコが。そういうのはさあ、べたべたになった身体をシャワーで流しながら、中まで洗浄してほぐせばいいだろ。二回戦目は俺が挿れるから、お前も先に洗っておこうぜ。中まで洗いっこだな」
「お前、なんでそんなあけすけなんだよ。今日は……お前だって、その」
「お前が可愛すぎて、そんな余裕がねーからだよ。ほら、早く跨がれって。お前のホワイトチョコ、飲んでやるからさ」
「だ、だから……」
「手作りチョコはみんなに配ったが、これは俺だけの特別製……だろ?」
「馬鹿……。だ、だいたい、お前のはお前ので……甘さ控えめのガトーショコラ作って、冷蔵庫に入ってるんだぞ。昼間のやつとは別に」
「ははっ、お前のことだから、そーだろうと思った」
でもよ、それを後出しにして、機嫌直すためならなんでもするって言い出すとかさ、酷いことされたいって望んでるようなもんだろ?
昼間のチョコも美味かったが、俺のために作ってくれたチョコはきっとそれより美味いだろう。
まあ、俺にとってはお前の身体が一番のごちそうだけどな。
文句を言いながらも恥ずかしそうにおずおずと俺の顔に跨る支倉の特別製を飲むために、指と舌を伸ばす。ちろりと舐めたそれは、なんだかもうすでに甘ったるい気がした。
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