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6th stage
ヲタクカメコには撮らせたくない
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「まだ終わらないの? 後がつかえてるんだけど…」
撮影に気をとられてるぼくの後ろで、不意に男の声がした。
ヨシキではない。
振り返るとなんと!
5~6人ほどのカメコがいつの間にか列を作ってて、撮影の順番を待ってるじゃないか!
「あっ。す、すみませんっ!」
条件反射の様に、思わずその場を退いてしまう。
次に並んでた、ごっつい一眼レフを二台も肩から下げて物々しく装備した、脂ギッシュな太ったカメコは、ぼくと入れ替えると、すかさずカメラを構え、栞里ちゃんを撮りはじめた。
戸惑ってこっちを見た栞里ちゃんだったが、ぼくがなにも言わないので、そのままカメコに撮られるままになってしまった。
このカメコは、、、
コスプレ界の事情には疎い自分でも、こいつが有名カメコなのは知ってる。
圧倒的なイベント参加回数に、金にモノをいわせたカメラ機材と物量で、コスプレ界に君臨してるヤツだ。
腕はヨシキの方が断然上だが、撮影してるレイヤーの数が膨大で、外ロケや個撮もかなりこなしてて、ホームページやインスタのアクセスも多く、こいつに撮られる事が、有名レイヤーへの第一歩らしい。
「これ、ぼくの名刺。『ノマド』て言うんだ。『カメコ界の大御所』とか呼ばれてるらしいけど、ぼくはただ、可愛い女の子を撮るのが好きなだけなんだ。
ほら、このカメラすごいだろ。D4sっていうNikonのフラッグシップカメラと58mmF1.4sっていうレンズだけど、シャッターの感触はすごくよくてね。一度これで撮るともう他のカメラは使えなくなるよ。
しかもこのレンズは、伝説のノクトニッコール58mmを超える高性能で、周辺部のコマ収差を綺麗に補正してるから、バックのボケが綺麗で、、、」
『ノマド』と名乗ったそのカメコは、額の脂汗を拭きながら、意味不明な機材アピールを延々と続けてる。
困った栞里ちゃんはぼくの方をチラチラと見ているが、良くも悪くも物理的にも、圧倒的な存在感のある『カメコ界の大御所』に気圧され、なにもしてやれない。
、、、自分のヘタレっぷりが、哀しい。
この衣装はぼくが栞里ちゃんに買ってやったものなのに、簡単に他のカメコに譲るなんて、、、orz
そうこうしてるうちに、四方八方からカメコがドンドン群がってきて、栞里ちゃんの回りはごっついカメラを抱えた汗臭いオタクカメコたちでいっぱいになり、行儀よく並んでたカメコも雪崩を起こす様に、我れ先に栞里ちゃんを囲む様に陣取って、スーパーアイドル高瀬みくを撮りはじめた。
その中には、さっき栞里ちゃんを撮ろうとしたオタクカメコも混じってる。
そいつは栞里ちゃんの後ろに座り込んで、ローアングルからミニスカートのなかを狙ってる。
彼だけじゃない。
栞里ちゃんの注意が行き届かないのをいいことに、何人ものカメコが彼女の前後にしゃがみ込み、超ローアングルでカメラを構えてるじゃないか!
どうしていいかわからず、栞里ちゃんはオロオロするばかり。
くそ~~~っ、、、、、、
まるで、自分の恋人が陵辱されるのを、見せつけられてる気分。
こんな眺めは耐えられない!
「バカヤロー! 最後まで責任持てよ!」
口惜しくて情けなくて歯ぎしりして、その光景から背を向けたぼくの腕を、ヨシキが掴んで一喝した。
「おまえがあの子をイベントに誘ってコスプレさせたんだろ。だったらちゃんと最後までフォローしろ。それこそ責任とれよ!
中途半端で投げ出すんだったら、最初っから関わったりすんな。このヘタレチキン野郎が!」
怒鳴りながらぼくの背中を小突いて、ヨシキはぼくを、囲み撮影のなかへ追いやる。
くそっ!
言いたい放題言いやがって!
ぼくだってこんなのはイヤなんだよ!!
ヨシキに押された勢いに乗って、ぼくはそのまま撮影会の真ん中に突進していき、叫んだ。
「もうやめて下さい! 本人嫌がってますから! やめて下さいっ!」
栞里ちゃんとカメコどもの間に立ちはだかり、ぼくは両手を振りながら精いっぱいアピールした。
敬語で叫んでもいまいち迫力に欠けるけど、それでもカメコたちからはブーイングが上がった。
「ふざけんなよ!」
「邪魔すんなよ。時間ねぇんだよ!」
「どけよ! おまえなに様のつもり?」
「家帰ってオナってろよ! このデブオタがっ!」
「女の前でカッコつけて、キモいんだよ!」
「おまえにそんな権利あんのか? 嫌がってるのなら、本人が言えばいいじゃん」
そんな罵詈雑言を浴びせられると、こっちも燃え上がってくる。
「この子はぼくのツレだし、この服はぼくの買ったものだ! 文句あるか!」
「嘘つけ! このキモオタが!」
「嘘じゃないもん。この人、あたしのカレシだもん!」
栞里ちゃんはカメコ達にそう叫ぶと、ぼくの腕にしがみついた。
えっ? 『カレシ』って?!
「撮影はもうおしまい! みんなどっか行ってよ!」
栞里ちゃんはぼくに抱きついたまま、カメコどもを睨む。
さすがにカメコ達は萎えてしまい、みんなその場から離れていった。
つづく
撮影に気をとられてるぼくの後ろで、不意に男の声がした。
ヨシキではない。
振り返るとなんと!
5~6人ほどのカメコがいつの間にか列を作ってて、撮影の順番を待ってるじゃないか!
「あっ。す、すみませんっ!」
条件反射の様に、思わずその場を退いてしまう。
次に並んでた、ごっつい一眼レフを二台も肩から下げて物々しく装備した、脂ギッシュな太ったカメコは、ぼくと入れ替えると、すかさずカメラを構え、栞里ちゃんを撮りはじめた。
戸惑ってこっちを見た栞里ちゃんだったが、ぼくがなにも言わないので、そのままカメコに撮られるままになってしまった。
このカメコは、、、
コスプレ界の事情には疎い自分でも、こいつが有名カメコなのは知ってる。
圧倒的なイベント参加回数に、金にモノをいわせたカメラ機材と物量で、コスプレ界に君臨してるヤツだ。
腕はヨシキの方が断然上だが、撮影してるレイヤーの数が膨大で、外ロケや個撮もかなりこなしてて、ホームページやインスタのアクセスも多く、こいつに撮られる事が、有名レイヤーへの第一歩らしい。
「これ、ぼくの名刺。『ノマド』て言うんだ。『カメコ界の大御所』とか呼ばれてるらしいけど、ぼくはただ、可愛い女の子を撮るのが好きなだけなんだ。
ほら、このカメラすごいだろ。D4sっていうNikonのフラッグシップカメラと58mmF1.4sっていうレンズだけど、シャッターの感触はすごくよくてね。一度これで撮るともう他のカメラは使えなくなるよ。
しかもこのレンズは、伝説のノクトニッコール58mmを超える高性能で、周辺部のコマ収差を綺麗に補正してるから、バックのボケが綺麗で、、、」
『ノマド』と名乗ったそのカメコは、額の脂汗を拭きながら、意味不明な機材アピールを延々と続けてる。
困った栞里ちゃんはぼくの方をチラチラと見ているが、良くも悪くも物理的にも、圧倒的な存在感のある『カメコ界の大御所』に気圧され、なにもしてやれない。
、、、自分のヘタレっぷりが、哀しい。
この衣装はぼくが栞里ちゃんに買ってやったものなのに、簡単に他のカメコに譲るなんて、、、orz
そうこうしてるうちに、四方八方からカメコがドンドン群がってきて、栞里ちゃんの回りはごっついカメラを抱えた汗臭いオタクカメコたちでいっぱいになり、行儀よく並んでたカメコも雪崩を起こす様に、我れ先に栞里ちゃんを囲む様に陣取って、スーパーアイドル高瀬みくを撮りはじめた。
その中には、さっき栞里ちゃんを撮ろうとしたオタクカメコも混じってる。
そいつは栞里ちゃんの後ろに座り込んで、ローアングルからミニスカートのなかを狙ってる。
彼だけじゃない。
栞里ちゃんの注意が行き届かないのをいいことに、何人ものカメコが彼女の前後にしゃがみ込み、超ローアングルでカメラを構えてるじゃないか!
どうしていいかわからず、栞里ちゃんはオロオロするばかり。
くそ~~~っ、、、、、、
まるで、自分の恋人が陵辱されるのを、見せつけられてる気分。
こんな眺めは耐えられない!
「バカヤロー! 最後まで責任持てよ!」
口惜しくて情けなくて歯ぎしりして、その光景から背を向けたぼくの腕を、ヨシキが掴んで一喝した。
「おまえがあの子をイベントに誘ってコスプレさせたんだろ。だったらちゃんと最後までフォローしろ。それこそ責任とれよ!
中途半端で投げ出すんだったら、最初っから関わったりすんな。このヘタレチキン野郎が!」
怒鳴りながらぼくの背中を小突いて、ヨシキはぼくを、囲み撮影のなかへ追いやる。
くそっ!
言いたい放題言いやがって!
ぼくだってこんなのはイヤなんだよ!!
ヨシキに押された勢いに乗って、ぼくはそのまま撮影会の真ん中に突進していき、叫んだ。
「もうやめて下さい! 本人嫌がってますから! やめて下さいっ!」
栞里ちゃんとカメコどもの間に立ちはだかり、ぼくは両手を振りながら精いっぱいアピールした。
敬語で叫んでもいまいち迫力に欠けるけど、それでもカメコたちからはブーイングが上がった。
「ふざけんなよ!」
「邪魔すんなよ。時間ねぇんだよ!」
「どけよ! おまえなに様のつもり?」
「家帰ってオナってろよ! このデブオタがっ!」
「女の前でカッコつけて、キモいんだよ!」
「おまえにそんな権利あんのか? 嫌がってるのなら、本人が言えばいいじゃん」
そんな罵詈雑言を浴びせられると、こっちも燃え上がってくる。
「この子はぼくのツレだし、この服はぼくの買ったものだ! 文句あるか!」
「嘘つけ! このキモオタが!」
「嘘じゃないもん。この人、あたしのカレシだもん!」
栞里ちゃんはカメコ達にそう叫ぶと、ぼくの腕にしがみついた。
えっ? 『カレシ』って?!
「撮影はもうおしまい! みんなどっか行ってよ!」
栞里ちゃんはぼくに抱きついたまま、カメコどもを睨む。
さすがにカメコ達は萎えてしまい、みんなその場から離れていった。
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