Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
32 / 300
04 Tea Time

Tea Time 4

彼女は続ける。
「それにあたし、小さい頃からずっとピアノとかバレエ習ってて、学校が終わってもあまり友達と遊べなかったし、ママは厳しくて、あたしが外で間食するのを許してくれなかったの。だから、友達から『喫茶店に行こう』とか誘われても断るしかなくて、そうするうちに誰も誘ってくれなくなって… 
クラスのみんなはあたしのこと、『お高く止まったとっつきにくい、わがままな女』って思ってたみたい。多分」
「みっこはそれがイヤだったのね。それで、大学に入ったら自分のしたいことしようって、決めてたのね?」
「そう」
「みっこって、妥協できない性格なんだ」
「どういうこと?」
「なんて言うのかな… ふつう、友達の恋なんてけっこうどうでもいい話で、相談したって、みんな当たりさわりのないこと言って、無難に答えるものでしょ。でもみっこって、本当に真剣に考えてくれて、答えてくれたわ。言い方はきついけど」
「…」
「でもわたし、そんなみっこと親友になれて、本当によかったって思ってるよ」
わたしがそう言うと、彼女はクルリと背を向けて、その場に立ち止まった。
「どうしたの? みっこ」
「なんでも、ない」
むこうを向いたまま、みっこはひとことだけ答えた。
バッグからハンカチを取り出し、それを顔に当てている。

えっ?
みっこ…

背中を向けたままうつむいて、彼女は目頭を押さえている。
その姿がいつもの彼女より、さらに華奢で、小さく見えた。
あんなに生意気でわがままな彼女に、こんなに脆い面があるなんて…

やだ。
なんだかわたしの方まで、目頭が熱くなってきちゃったじゃない。

「あたし。近ごろ。思うの」
わたしの方を見ないまま、ゆっくり言葉を区切って、みっこは話しはじめた。
「恋って、結果じゃない。
『恋をした』『誰かを愛した』ってことそのものが、大切なことなんじゃないかな、って」
ハンカチをしまいながら、みっこはようやくこちらを振り向いた。
「そしてそれが、女の子をもっと磨いてくれるんじゃないかなって。
あたし、さつきには、あとで振り返っても悔いのない恋愛、してほしいなって思う」

みっこの話は、現在完了進行形。
もう『結果』の出てしまった恋を、彼女はいろんな形で想い出しているのかもしれない。

『この話は、もうやめよ』
ふたりで海に行ったとき、彼女はわたしの質問を拒んだ。
それはきっと、まだ傷跡の生々しい想いがあるから。
だからこそみっこは、わたしの恋のアドバイスにも、あんなにもひたむきになれるのかもしれない。

「それにね」
わたしの思いを遮るように、みっこは明るく言った。
「あたし、川島君もさつきのこと、好きなんじゃないかな? って思うの」
『えっ! どうして?」
「カンよ。だいいち『さつきちゃんって呼んでみたかった』なんて、あなたのことく思ってる証拠じゃない。
家まで送ってくれるのだって、同人誌に誘ったのだって、どんな理由をつけてでも、少しでも長く、あなたといたいからじゃないの?」
「ほんとに、そう思う?!」
返事の代わりに、みっこはニッコリと微笑んでみせた。
「さつきが自分らしくしていれば、川島君はもっとあなたのこと好きになるんじゃない?
あなた、ブスなんかじゃないわ。むしろ可愛いし、とっても魅力あるもん」
「魅力って」
「この際、恵美ちゃんが川島君のカノジョがどうかは置いといて,さつきは全力でぶつかってみたら? どう転んでも、その方がすっきりすると思うわよ」
「ん… そうね。やってみる」
そう言ってわたしも、みっこに微笑み返した。

彼女のさりげないひとことが、わたしの恋のゆくえを、ほんのりと小さな光で照らしてくれたみたい。
校門を抜けた丘から見える街並みに目をやると、宵闇に沈んだ家々には、ポツリポツリと明かりが灯りはじめていた。

END

9th FEB 2011 初稿
26th May 2017 改稿
30th Aug.2017 改稿
18th Nov.2019 改稿
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

後宮の寵愛ランキング最下位ですが、何か問題でも?

希羽
キャラ文芸
数合わせで皇帝の後宮に送り込まれた田舎貴族の娘である主人公。そこでは妃たちが皇帝の「寵愛ランク」で格付けされ、生活の全てが決められる超格差社会だった。しかし、皇帝に全く興味がない主人公の目的は、後宮の隅にある大図書館で知識を得ることだけ。当然、彼女のランクは常に最下位。 ​他の妃たちが寵愛を競い合う中、主人公は実家で培った農業や醸造、経理の知識を活かし、同じく不遇な下級妃や女官たちと協力して、後宮内で「家庭菜園」「石鹸工房」「簿記教室」などを次々と立ち上げる。それはやがて後宮内の経済を潤し、女官たちの労働環境まで改善する一大ビジネスに発展。 ​ある日、皇帝は自分の知らないうちに後宮内に巨大な経済圏と女性コミュニティを作り上げ、誰よりも生き生きと暮らす「ランク最下位」の妃の存在に気づく。「一体何者なんだ、君は…?」と皇帝が興味本位で近づいてきても、主人公にとっては「仕事の邪魔」でしかなく…。 ※本作は小説投稿サイト「小説家になろう」でも投稿しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。