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05 Love Affair
Love Affair 3
だけど川島君は、志摩さんの胸が腕に触れるくらい近づいていることなど、まるで気にしてない様子で、ふだんどおりの口調で答えた。
「印刷は、学校のコピー機でやるつもりだよ」
「コピー誌かぁ。オフセットにできないかなぁ」
「オフセット印刷はお金がかかるから、しばらくはコピーで我慢だろ。どうせ20部程度しか作らないし」
「同人誌イベントとか出ないの?」
「イベントかぁ。それもいいかもな」
「わたし、いろいろ調べてみるね。売れる本を作ろうよ」
「じゃあ、そっちの方はよろしく。任せるから」
そう言って、川島君は志摩さんの目を見つめる。なんだか優しい瞳。
「うふ。いいわよ」
応える志摩さんの口調は、事務的な内容でも、なんだかしっとりしいて、その綺麗な甘い声が、耳の奥の脳細胞にねっとりからみつく感じ。いわゆる『フェロモン系』ってやつ。
いいな。
こういう、天然で色気を出せる女の人って。
みっこの時もそうだったけど、こんな魅力的な女性と知り会うと、つい、目で追ってしまう。
それにしても、川島君と志摩さんの距離の近さが、気になってしまう。
川島君が手に持っている原稿を、志摩さんは横から読んでいるんだけど、その仕草がすごく自然に見えてしまう。
う~ん。
この距離感…
このふたりって、どういう関係なんだろ。
ほんとにただのサークル仲間なのかな?
もしかして、それ以上の仲なのかも。
どっちにしても、他の女の人に優しい視線を向ける川島君をはたから見るのは、やっぱり心おだやかでないかも。
特に、相手がこんなに綺麗で魅力的な女性なら…
はぁ・・・
なんか、嫌になる。
わたしって、いつからこんなに嫉妬深くなったんだろ。
わたしのもやもやをよそに、川島君は会誌の説明を続けていた。
「…ってことで、コピー1枚10円で計算すれば、100ページの本でも、2丁付けで一冊当たり500円程度で印刷できるはずだよ。紙代やいろんな雑費を入れても、会費は1000円あれば充分だろう」
「写真とかもあるんだろう? コピーじゃ綺麗に出ないんじゃないか?」
松尾さんが疑問をぶつけてきた。
「うちの学校にappleの『Macintosh IIfx』があるんだ。写真をスキャナで取り込んで、それをレイアウトして版下用にプリントアウトしようと思ってる。先生から使用許可ももらったし、パソコン操作の練習にもなるしな」
「川島。初めての割に段取りがいいな」
「はは。でもこれからどうなるかわからないぞ。原稿が揃ったのはいいけど、文字は自分たちで入力しなきゃならないから。その作業が大変だ」
「おれ、キーボードなんて触ったことないぞ」
「わたしは情報処理科だけど、家にパソコンなんてないから、学校でしか作業できないわね」
紗羅さんが、会話に加わってくる。
「そうだな。自分でパソコン一式買えればいいんだけど、値段が高すぎるから」
「『Macintosh IIfx』なんて、本体だけで100万以上だろ。16MBのメモリ増設して、スキャナとかモニターとか周辺機器まで入れれば、150万円。軽くクルマが買える値段だよな」
「う~ん。自分専用のコンピューターなんて、まだまだ夢みたいな話だな」
ため息つきながら、川島君と悠姫ミノルさんが顔を見合わせる。コンピューターのことなんて全然わからないので、わたしは遠慮がちに訊いた。
「入力って?」
「ああ。今度の同人誌はある程度、パソコンで作ろうと思ってるんだ。だから文字も活字にできるんだよ」
「ワープロみたいなもの?」
「まあね。『PhotoShop』とか『FreeHand』とかのグラフィックデザイン用ソフトを使って、パソコン上で文字をレイアウトしたり、書体や大きさを変えたり、画像の配置とか加工もできるんだよ」
「へえ~。それを使えば、市販の本と同じ様なものができるの?」
つづく
「印刷は、学校のコピー機でやるつもりだよ」
「コピー誌かぁ。オフセットにできないかなぁ」
「オフセット印刷はお金がかかるから、しばらくはコピーで我慢だろ。どうせ20部程度しか作らないし」
「同人誌イベントとか出ないの?」
「イベントかぁ。それもいいかもな」
「わたし、いろいろ調べてみるね。売れる本を作ろうよ」
「じゃあ、そっちの方はよろしく。任せるから」
そう言って、川島君は志摩さんの目を見つめる。なんだか優しい瞳。
「うふ。いいわよ」
応える志摩さんの口調は、事務的な内容でも、なんだかしっとりしいて、その綺麗な甘い声が、耳の奥の脳細胞にねっとりからみつく感じ。いわゆる『フェロモン系』ってやつ。
いいな。
こういう、天然で色気を出せる女の人って。
みっこの時もそうだったけど、こんな魅力的な女性と知り会うと、つい、目で追ってしまう。
それにしても、川島君と志摩さんの距離の近さが、気になってしまう。
川島君が手に持っている原稿を、志摩さんは横から読んでいるんだけど、その仕草がすごく自然に見えてしまう。
う~ん。
この距離感…
このふたりって、どういう関係なんだろ。
ほんとにただのサークル仲間なのかな?
もしかして、それ以上の仲なのかも。
どっちにしても、他の女の人に優しい視線を向ける川島君をはたから見るのは、やっぱり心おだやかでないかも。
特に、相手がこんなに綺麗で魅力的な女性なら…
はぁ・・・
なんか、嫌になる。
わたしって、いつからこんなに嫉妬深くなったんだろ。
わたしのもやもやをよそに、川島君は会誌の説明を続けていた。
「…ってことで、コピー1枚10円で計算すれば、100ページの本でも、2丁付けで一冊当たり500円程度で印刷できるはずだよ。紙代やいろんな雑費を入れても、会費は1000円あれば充分だろう」
「写真とかもあるんだろう? コピーじゃ綺麗に出ないんじゃないか?」
松尾さんが疑問をぶつけてきた。
「うちの学校にappleの『Macintosh IIfx』があるんだ。写真をスキャナで取り込んで、それをレイアウトして版下用にプリントアウトしようと思ってる。先生から使用許可ももらったし、パソコン操作の練習にもなるしな」
「川島。初めての割に段取りがいいな」
「はは。でもこれからどうなるかわからないぞ。原稿が揃ったのはいいけど、文字は自分たちで入力しなきゃならないから。その作業が大変だ」
「おれ、キーボードなんて触ったことないぞ」
「わたしは情報処理科だけど、家にパソコンなんてないから、学校でしか作業できないわね」
紗羅さんが、会話に加わってくる。
「そうだな。自分でパソコン一式買えればいいんだけど、値段が高すぎるから」
「『Macintosh IIfx』なんて、本体だけで100万以上だろ。16MBのメモリ増設して、スキャナとかモニターとか周辺機器まで入れれば、150万円。軽くクルマが買える値段だよな」
「う~ん。自分専用のコンピューターなんて、まだまだ夢みたいな話だな」
ため息つきながら、川島君と悠姫ミノルさんが顔を見合わせる。コンピューターのことなんて全然わからないので、わたしは遠慮がちに訊いた。
「入力って?」
「ああ。今度の同人誌はある程度、パソコンで作ろうと思ってるんだ。だから文字も活字にできるんだよ」
「ワープロみたいなもの?」
「まあね。『PhotoShop』とか『FreeHand』とかのグラフィックデザイン用ソフトを使って、パソコン上で文字をレイアウトしたり、書体や大きさを変えたり、画像の配置とか加工もできるんだよ」
「へえ~。それを使えば、市販の本と同じ様なものができるの?」
つづく
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