Campus91

茉莉 佳

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11 Audition

Audition 3

 食事が終わったわたしたち三人は、バスでみっこのマンションへ向かった。
タイヤにチェーンを巻いたバスは、ガラガラとうるさいし、小刻みな振動で乗り心地も悪い。
それでも車内でずっと、ナオミはわたしにいろいろ聞かせてくれた。
週に2回、街なかにあるモデルスクールに通っていることや、そこでのレッスンの様子。モデル事務所でのみっこの噂や、彼女が受けるオーディションのことなど。

「それでね。今度のオーディションは絶対受かりたいわけ。そうすればテレビにも出れるもん」
「それでみっこに、モデルのレッスンしてもらってるってわけ?」
「そうなの。みこちゃんみたいな一流のモデルに教われば、すぐにオファーが来るようになるわよ。
みこちゃんってすごいのよ~。
2歳からモデルやってて、うちの事務所じゃいちばん経験豊富で、実力あって、ポージングもムービングも、いちばんセンスがいいんだって。あ~あ。あたしも早く、すごいモデルになりたいなぁ~」
「でもみっこ、ナオミに教えたりしてていいの? ナオミのこと『素質も才能もある』って言ってたじゃない。手ごわいライバル育ててるようなものじゃない?」
「ふふ。ライバルって言っても、あたしとナオミじゃキャラが全然違うでしょ。あたしは『スレンダーで清楚なお嬢様』系だしね」
「なによぉ~。あたしは『デブで淫乱ビッチ』系って言いたいの~? みこちゃん意地悪い~」
「わたしも、みっこは『生意気でわがままな小娘』系って思ってた」
「もう。ふたりとも言ってくれるわね~。ただのギャグなのに」
「あはは~。みこちゃんでもギャグ言うんだ。おもしろくなかったけど」
「言ってくれるわね。
そういえばナオミには、もうお仕事の話、来てるらしいわよ。男性誌のグラビア撮影と、撮影会モデル。
宣材写真見せたら、さっそく喰いついてきたって、社長が話してたわ」
「すごいじゃない、ナオミ」
「まあ、ナオミのスタイルなら、男は釘づけよね」
「ん~… 『ペントハウス』とか『プレイボーイ』なら出てもいいけどぉ。その辺の三流雑誌で安売りするのも、なんだかなぁ…」
「もう、売れっ子モデルみたいなこと言ってるのね。ナオミ」
「やっぱり『ヴォーグ』の表紙を飾るようなモデルになりたいもん」
「まあ、夢はでっかくで。いいんじゃない?」

 みっこのマンションに着いた頃には、もう1時を回っていた。
今日のスタジオは、どこかのダンサークルの練習とバッティングしたみたいで、ママさんらしい女性が5・6人、レオタード姿でダンスのレッスンをしていて、少しばかり賑やかだった。
その横で、みっこは早速ナオミをレオタードに着替えさせ、ストレッチや基礎トレーニングを、充分すぎるほど時間をかけてやらせる。みっこ自身もナオミと並んで、エクササイズをやっていた。

「じゃ、立ち方の基本の復習から」
みっこはそう言うと、ナオミのおなかに軽く手を当てる。
「頭は上から吊るされている感じで、首筋を伸ばして。胸はそりすぎちゃダメ! ほら、もっとおなかに力入れて!」
そう言いながらみっこは、おなかをぐいと押さえつけた。
「ぐ…」
「そのまま歩いてみて。違う! 脚は腰からついている感じで。 頭は前に突っ込まない! ロボットじゃないんだから、そんなにカクカク歩かないの! 上下動、大き過ぎる! お尻を振らない!」
「み、みこちゃん、ステージに立つわけじゃないんだから、こんなのテキトーでいいじゃない」
「なに言ってるの! どんなジャンルのモデルだって、姿勢の美しさは絶対条件なのよ。ナオミは『ヴォーグ』の表紙を飾りたいんでしょ?!」

そう言ってみっこは、基本的な立ち方から歩き方、ポーズのとり方まで、繰り返し繰り返し、それこそ手取り足取り教えていく。
そのレッスンは確かに、ナオミの言うように厳しいものだったけど、とっても熱心で、力がこもっていた。
そうやって教えているみっこを見ていると、『この子は本当に、モデルを愛しているんだなぁ』って思えてくる。
それにナオミも、以前、学園祭の前に、みっこにバインダーを頭に乗せられて、歩かされたときに較べると、ずいぶん仕草が綺麗になったというか、洗練されてきた気もする。
スタイルにしても、確かに胸は少し小さくなったかもしれないけど、二の腕とかおなか回りがすっきりしてきて、太ももからお尻にかけてのセルライトもなくなり、全体的に一皮向けて、ハリウッド体型にも磨きがかかってきたみたい。ジャズダンスのママさんたちも、みっことナオミのレッスン内容に興味があるらしく、時々みんなでふたりを見つめては、ひそひそと何かを話しあっていた。

つづく
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