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12 CANARY ENSIS
CANARY ENSIS 14
モルディブの朝は青かった。
まだ夜の色が抜けきらない澄み切った空に、いきなり太陽が昇っていき、薄水色の風が、ベッドで眠るわたしの頬を、心地よく撫でる。
カーテン越しに差し込むまぶしい光で、わたしは目を醒した。
となりには川島君が眠っている。
白いはだかの胸が、朝の光にまぶしく映る。
そうだった…
ふたりとも、なにも着ないで眠ったんだった。
「なんか… からだが重い」
はじめて迎える南国の爽やかな朝だというのに、軽いけだるさで、気分はくすんでいる。
朝のなぎさを歩けば少しは気も晴れるかと思い、川島君を起こさないように、わたしはベッドからすり出た。
「あ。みっこ? おはよう」
「おはようさつき。ずいぶん早いのね」
海岸を散歩していたわたしは、ホテルの前のなぎさで軽くストレッチをしていたみっこを見つけ、声をかけてみた。
「朝から運動?」
「撮影前に、ちょっとからだをほぐしとこうと思って。さつきは夕べはよく眠れた?」
「ううん… なんだかだるいの」
「だるい? 大丈夫?」
「うん。なかなか寝つけなかったから…」
わたしの言葉に、みっこは察したようにクスッと笑う。
「川島君、寝かせてくれなかったの?」
「えっ?」
みっこの言葉に、顔から火が出るくらい恥ずかしくなって、うつむく。
わたし、なんてことしちゃったんだろ?
信じられない。
なんだかすごく、非現実的…
ううん。
『非日常的』っていうのかな?
そのときの川島君もわたしも、いつものふたりとは全然違っていて、ただのひとつがいの動物になっていたような感じ。
どうしてあんな、はしたないことができちゃったんだろ?
「わたし… はじめてだったの」
思わずみっこに告白したものの、恥ずかしさで顔が上げられない。
「…そっか」
屈伸をやめたみっこは、わたしに向かって、ニッコリ微笑みかけた。
「おめでとう、さつき」
「おめでとうって…」
「座らない?」
なぎさに腰をおろしながら、みっこはわたしを促す。わたしもみっこのとなりに座りこんだ。
まだ水平線の低い所にある太陽は、わたしたちに真横から光を投げかけ、モルディブの景色に深い陰影を刻んでいた。
まぶしそうに、みっこは太陽に手をかざしながら言う。
「なんだか、羨ましいな~」
「え?」
「実を言うとね。モルディブには3年前に、直樹さんと来たことがあるの」
「直… 藍沢さんと?」
「うん。まだ、幸せの絶頂にいた頃だったかな。
そのときのあたしたち、それこそ食事もろくにとらないで、一日中抱きあってたくらいだった。飽きることなく、お互いに求めあってた。なんか、懐かしいな~…」
「みっこ…」
「ふふ。大丈夫よ。だけど、肌を重ねあえる人がすぐ近くにいるって、最高に幸せなことよね」
「う… ん」
そう言えば、川島君も同じようなことを言ってたな。
『ぼくは今、最高に幸せだよ。こうやって大好きなさつきちゃんと、肌を重ねられて』
って。
「でも、まだなにか、実感わかないのよ。嬉しいような、怖いような…」
「まあ、恋愛って… 頭で考えるものじゃないと思うわよ」
「うん… そうよね。後悔はしてないわ。わたし、川島君とこうなれて、ほんとに幸せだと思ってるもの」
「さつき… よかったわね」
そう言ったみっこは、わたしを見つめ、わずかに翳りのある表情で微笑んだ。
斜めからさす太陽の、影のせい…
つづく
まだ夜の色が抜けきらない澄み切った空に、いきなり太陽が昇っていき、薄水色の風が、ベッドで眠るわたしの頬を、心地よく撫でる。
カーテン越しに差し込むまぶしい光で、わたしは目を醒した。
となりには川島君が眠っている。
白いはだかの胸が、朝の光にまぶしく映る。
そうだった…
ふたりとも、なにも着ないで眠ったんだった。
「なんか… からだが重い」
はじめて迎える南国の爽やかな朝だというのに、軽いけだるさで、気分はくすんでいる。
朝のなぎさを歩けば少しは気も晴れるかと思い、川島君を起こさないように、わたしはベッドからすり出た。
「あ。みっこ? おはよう」
「おはようさつき。ずいぶん早いのね」
海岸を散歩していたわたしは、ホテルの前のなぎさで軽くストレッチをしていたみっこを見つけ、声をかけてみた。
「朝から運動?」
「撮影前に、ちょっとからだをほぐしとこうと思って。さつきは夕べはよく眠れた?」
「ううん… なんだかだるいの」
「だるい? 大丈夫?」
「うん。なかなか寝つけなかったから…」
わたしの言葉に、みっこは察したようにクスッと笑う。
「川島君、寝かせてくれなかったの?」
「えっ?」
みっこの言葉に、顔から火が出るくらい恥ずかしくなって、うつむく。
わたし、なんてことしちゃったんだろ?
信じられない。
なんだかすごく、非現実的…
ううん。
『非日常的』っていうのかな?
そのときの川島君もわたしも、いつものふたりとは全然違っていて、ただのひとつがいの動物になっていたような感じ。
どうしてあんな、はしたないことができちゃったんだろ?
「わたし… はじめてだったの」
思わずみっこに告白したものの、恥ずかしさで顔が上げられない。
「…そっか」
屈伸をやめたみっこは、わたしに向かって、ニッコリ微笑みかけた。
「おめでとう、さつき」
「おめでとうって…」
「座らない?」
なぎさに腰をおろしながら、みっこはわたしを促す。わたしもみっこのとなりに座りこんだ。
まだ水平線の低い所にある太陽は、わたしたちに真横から光を投げかけ、モルディブの景色に深い陰影を刻んでいた。
まぶしそうに、みっこは太陽に手をかざしながら言う。
「なんだか、羨ましいな~」
「え?」
「実を言うとね。モルディブには3年前に、直樹さんと来たことがあるの」
「直… 藍沢さんと?」
「うん。まだ、幸せの絶頂にいた頃だったかな。
そのときのあたしたち、それこそ食事もろくにとらないで、一日中抱きあってたくらいだった。飽きることなく、お互いに求めあってた。なんか、懐かしいな~…」
「みっこ…」
「ふふ。大丈夫よ。だけど、肌を重ねあえる人がすぐ近くにいるって、最高に幸せなことよね」
「う… ん」
そう言えば、川島君も同じようなことを言ってたな。
『ぼくは今、最高に幸せだよ。こうやって大好きなさつきちゃんと、肌を重ねられて』
って。
「でも、まだなにか、実感わかないのよ。嬉しいような、怖いような…」
「まあ、恋愛って… 頭で考えるものじゃないと思うわよ」
「うん… そうよね。後悔はしてないわ。わたし、川島君とこうなれて、ほんとに幸せだと思ってるもの」
「さつき… よかったわね」
そう言ったみっこは、わたしを見つめ、わずかに翳りのある表情で微笑んだ。
斜めからさす太陽の、影のせい…
つづく
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