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13 Rainy Resort
Rainy Resort 12
「もしもし、川島君? 今日はお疲れさま。運転ありがとう」
「どういたしまして。さつきちゃんこそ、帰りはなんだか元気なかったけど、疲れたんじゃない?」
「そんなことない。大丈夫」
「ならいいんだけど。で、どうしたんだ?」
「別に… ただ、声が聞きたかっただけ」
「はは。嬉しいよ」
「川島君。旅行、楽しかった?」
「もちろんだよ」
「写真、どのくらい撮ったの?」
「フィルム5本くらいかな。後半は雨が降ったから、あまり撮れなかったけど」
「そんなに撮ったの?」
「いい被写体がたくさんあったしね」
「みっこって… 撮りがいがあるんじゃない?」
「そりゃあ、彼女はプロのモデルで、勘もいいしポーズもうまいし。つい、撮らされてしまうよな」
「ねえ。みっこのこと… どう思う?」
「どうって?」
「男の人ってみんな、みっこみたいな女の子を、好きになるのかな?」
「どうしたんだい? 急に」
「だって、昨日わたしたちといっしょに、ペンションに泊まっていたカップルとか、女の子たちも、『美人よね』とか『ピアノすっごい上手いよね、あこがれちゃう』とか言ってたし、テニスのときはカップルの男性が、ずっとみっこ見てて、彼女が焼きもちやいてたじゃない」
「ああ。そうだったよな。あのケンカはちょっとみっともなかったよな」
「みっこって美人だし、スタイルいいし、ピアノは上手でテニスもできてダンスはプロ級。しかもトップモデルのお嬢さまでしょ。男の人って、そういうのに憧れるんじゃない?」
「そりゃあ、『すごいな』とは思うけど、それと、『好きになる』ってのは、話が別だよ」
「そう?」
「逆に、そこまですごい子だと、たいていの男は引いちゃうんじゃないかな? 『高嶺の花』だって」
「『高嶺の花』か… 芳賀さんも言ってたな」
「もしかして、ぼくがみっこちゃんのこと好きになるとか、そんな風に考えてるわけ?」
「…」
「だから、元気がなかったとか?」
「…う、ん」
「バカだなぁ。ぼくはさつきちゃんが好きなんだから、そんなつまんない心配、しなくていいって」
「ほんとに?」
「ああ。みっこちゃんは確かに魅力的な子だけど、さつきちゃんはぼくにとって、いちばん好きな女の子なんだから」
「わたしの、どこが好き?」
「どこって、全部だよ」
「全部?」
「いちいち、口じゃ言えないくらいだよ」
「でも、言って」
「そうだな… やっぱり、根っこが同じってとこかな」
「根っこ?」
「ぼくとさつきちゃんって、生き方の根本の部分が同じような気がするんだよ。だから、話していても共感できるし、さつきちゃんといると、とっても落ち着くんだ」
「うん。それはわたしも感じるけど… 女としては、どうなの?」
「もちろん大好きさ。高校のときに同じクラスになったときは、最初はさつきちゃんの可愛らしさに魅かれてたから」
「そ、そう?」
「ふわふわした髪はいい香りだし、そのくりっとした大きな瞳で見つめられると、クラクラしてくるよ」
「ほんとに?」
「ああ。唇もふっくらしてて、マシュマロみたいで好きだな。肌なんかも白くてすべすべで、触ると気持ちいいし、おっぱいもプルンとしてて大きいし」
「もうっ。やだ!」
「ははは。さつきちゃんが『女として』なんて言うから」
しばらく川島君と他愛のない話をしたあと、電話を切ってまた机に向かい、日記の続きを書く。
『好き』と、言葉で告げられるのは、やっぱり嬉しいし、幸せなこと。そして、わたしのことを気遣ってくれる彼の気持ちを、とってもありがたく感じる。
だけど…
どんなに川島君に褒めてもらっても、やっぱりわたしの心には、なにか、すっきりしない雨雲が立ちこめたまま。
わたしには、みっこに勝てるだけの、川島君をもっと惹きつけるだけの、『魅力』ってあるのかな?
もちろんわたしは、みっこが好き。
心の底から、親友だと思っている。
だけど、わたしにとって森田美湖は、いちばん大切な友だちと同時に、いちばん怖い存在になってきているような気がした。
川島君は、わたしのことを『いちばん好きな女の子』と言った。
じゃあ、『二番』や『三番』はいるの?
わたしは川島君にとって、今は『一番』かもしれないけど、いつかはだれかに抜かれたりするの?
『根っこが同じ』って言葉も、わたしはみっこともそう感じているから、結局、川島君とみっこの『
根っこ』も、繋がっていることになるんじゃないの?
「やだ! 思考が思いっきりネガティブになっちゃってる。雨に降られたせいかな」
ひとりごとを言って、気を紛らすようにパタンとキャンパスノートを閉じると、ローボードに置いてあるミニコンポのスイッチを入れ、ベッドに寝転がって、ヘッドフォンを耳にした。
こんな気分のときは、音楽を聴くに限る。
選んだCDは、ショパンのプレリュード、『雨だれ』。
「ショパン… か…」
昨日の夜、ペンションの白いグランドピアノで、みっこが弾いたショパンを思い出す。
シトシトと雨音が淋しげに響く夜、わたしはピアノの旋律に耳を傾けた。
END
9th May 2011
2th Apr.2020 改稿
「どういたしまして。さつきちゃんこそ、帰りはなんだか元気なかったけど、疲れたんじゃない?」
「そんなことない。大丈夫」
「ならいいんだけど。で、どうしたんだ?」
「別に… ただ、声が聞きたかっただけ」
「はは。嬉しいよ」
「川島君。旅行、楽しかった?」
「もちろんだよ」
「写真、どのくらい撮ったの?」
「フィルム5本くらいかな。後半は雨が降ったから、あまり撮れなかったけど」
「そんなに撮ったの?」
「いい被写体がたくさんあったしね」
「みっこって… 撮りがいがあるんじゃない?」
「そりゃあ、彼女はプロのモデルで、勘もいいしポーズもうまいし。つい、撮らされてしまうよな」
「ねえ。みっこのこと… どう思う?」
「どうって?」
「男の人ってみんな、みっこみたいな女の子を、好きになるのかな?」
「どうしたんだい? 急に」
「だって、昨日わたしたちといっしょに、ペンションに泊まっていたカップルとか、女の子たちも、『美人よね』とか『ピアノすっごい上手いよね、あこがれちゃう』とか言ってたし、テニスのときはカップルの男性が、ずっとみっこ見てて、彼女が焼きもちやいてたじゃない」
「ああ。そうだったよな。あのケンカはちょっとみっともなかったよな」
「みっこって美人だし、スタイルいいし、ピアノは上手でテニスもできてダンスはプロ級。しかもトップモデルのお嬢さまでしょ。男の人って、そういうのに憧れるんじゃない?」
「そりゃあ、『すごいな』とは思うけど、それと、『好きになる』ってのは、話が別だよ」
「そう?」
「逆に、そこまですごい子だと、たいていの男は引いちゃうんじゃないかな? 『高嶺の花』だって」
「『高嶺の花』か… 芳賀さんも言ってたな」
「もしかして、ぼくがみっこちゃんのこと好きになるとか、そんな風に考えてるわけ?」
「…」
「だから、元気がなかったとか?」
「…う、ん」
「バカだなぁ。ぼくはさつきちゃんが好きなんだから、そんなつまんない心配、しなくていいって」
「ほんとに?」
「ああ。みっこちゃんは確かに魅力的な子だけど、さつきちゃんはぼくにとって、いちばん好きな女の子なんだから」
「わたしの、どこが好き?」
「どこって、全部だよ」
「全部?」
「いちいち、口じゃ言えないくらいだよ」
「でも、言って」
「そうだな… やっぱり、根っこが同じってとこかな」
「根っこ?」
「ぼくとさつきちゃんって、生き方の根本の部分が同じような気がするんだよ。だから、話していても共感できるし、さつきちゃんといると、とっても落ち着くんだ」
「うん。それはわたしも感じるけど… 女としては、どうなの?」
「もちろん大好きさ。高校のときに同じクラスになったときは、最初はさつきちゃんの可愛らしさに魅かれてたから」
「そ、そう?」
「ふわふわした髪はいい香りだし、そのくりっとした大きな瞳で見つめられると、クラクラしてくるよ」
「ほんとに?」
「ああ。唇もふっくらしてて、マシュマロみたいで好きだな。肌なんかも白くてすべすべで、触ると気持ちいいし、おっぱいもプルンとしてて大きいし」
「もうっ。やだ!」
「ははは。さつきちゃんが『女として』なんて言うから」
しばらく川島君と他愛のない話をしたあと、電話を切ってまた机に向かい、日記の続きを書く。
『好き』と、言葉で告げられるのは、やっぱり嬉しいし、幸せなこと。そして、わたしのことを気遣ってくれる彼の気持ちを、とってもありがたく感じる。
だけど…
どんなに川島君に褒めてもらっても、やっぱりわたしの心には、なにか、すっきりしない雨雲が立ちこめたまま。
わたしには、みっこに勝てるだけの、川島君をもっと惹きつけるだけの、『魅力』ってあるのかな?
もちろんわたしは、みっこが好き。
心の底から、親友だと思っている。
だけど、わたしにとって森田美湖は、いちばん大切な友だちと同時に、いちばん怖い存在になってきているような気がした。
川島君は、わたしのことを『いちばん好きな女の子』と言った。
じゃあ、『二番』や『三番』はいるの?
わたしは川島君にとって、今は『一番』かもしれないけど、いつかはだれかに抜かれたりするの?
『根っこが同じ』って言葉も、わたしはみっこともそう感じているから、結局、川島君とみっこの『
根っこ』も、繋がっていることになるんじゃないの?
「やだ! 思考が思いっきりネガティブになっちゃってる。雨に降られたせいかな」
ひとりごとを言って、気を紛らすようにパタンとキャンパスノートを閉じると、ローボードに置いてあるミニコンポのスイッチを入れ、ベッドに寝転がって、ヘッドフォンを耳にした。
こんな気分のときは、音楽を聴くに限る。
選んだCDは、ショパンのプレリュード、『雨だれ』。
「ショパン… か…」
昨日の夜、ペンションの白いグランドピアノで、みっこが弾いたショパンを思い出す。
シトシトと雨音が淋しげに響く夜、わたしはピアノの旋律に耳を傾けた。
END
9th May 2011
2th Apr.2020 改稿
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