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14 Summer Vacation
Summer Vacation 8
「さあ、お待たせしました、さつきさん。おなかすいたでしょう?」
そう言いながら、みっこママが大きなお皿をミトンで掴んで、ダイニングルームに運んできた。
「わぁ、キッシュですね。わたし大好物です!」
テーブルに置かれたほうれん草とベーコンの美味しそうなキッシュを見て、思わず興奮して声を高める。みっこママは嬉しそうに微笑んだ。
「あと、ガスパチョも作ってみたわ。みっこ。キッチンにサラダがあるから、運んでちょうだい」
「あ。わたしも運びます」
「いいのよ。さつきはお客さんなんだから、そこに座ってて」
席を立ちかけたわたしをみっこは抑え、キッチンからサラダを持ってくる。キッシュを取り分けながら、みっこママはひとりごとのようにつぶやく。
「そうですよ。こんなときでないと、みっこは手伝ってくれないんだから。さつきさん、みっこはそちらではなに食べてます? インスタントやファーストフードばかりじゃないでしょうね?」
「いえ。みっこがインスタントを食べてるところは、見たことがないです」
「さつきがうちに遊びにきたときは、なにか作ってくれるわ。さつきって、料理がとっても上手なんだから」
「もうっ、この子はみっともない。ごめんなさい、さつきさん。こんななんにもできない子で」
「あ~っ。ママそれはひどいんじゃない? あたしだって福岡でひとり暮らしするようになって、少しは家事も覚えたんだから」
「ははは。そう言うママだって、みっこのことは言えないよ。新婚の頃は家事が苦手で、なにもできなかっただろう」
みっこパパがそう言って、みっこに助け舟を出す。ママは真っ赤になって、恥ずかしそうに頬に手を当てた。
「それは、できなかったんじゃなくて、やれなかったんですよ。あの頃はまだモデルのお仕事をしていて、仕事柄手荒れは厳禁でしたから」
「まあ、そういうことにしておこう。だけど思い出すなぁ。わたしが会社から帰ってくると、まずはママの脱ぎ散らかした服を、全部片づける仕事が待っていたのを」
「パパ…」
「わたしが作ってあげた料理を、『こんな美味しい料理ははじめて』と言って、ママはパクパク食べてくれたしなぁ。あのときにママの胃袋を、ガッチリ掴んだよ」
「いやですわパパ。そんな昔のこと、人にバラさないで下さいよ」
「ははは。すまない。ママのおかげで、わたしの家事能力はうんと上がったよ。ははは」
「もう、あなたったら」
昔のことを思い出してか、愉快そうにみっこパパは笑い、釣られてママも苦笑した。
「どうだった? あたしのパパとママ」
「うん。とっても素敵な人たち。ほんとに仲いいのね」
「でしょ。自慢の両親よ」
「あは。それって、なんだか逆ね」
「ママもね。あたしがモデルの仕事を再開したら、福岡に住むことを許してくれるようになったの。相変わらずお小言は多いけどね。
パパからの仕送りのことは、やっぱりバレちゃってたけど、それももう公認って感じになって、これからは平和な大学生活が送れそうよ」
「よかったじゃない。やっぱり家庭内でゴタゴタしてたら、仕事にも勉強にも、身が入らないもんね」
「まあ、東京と福岡の掛け持ちで、忙しくなるでしょうけどね」
食事が終わって、デザートにしっかり『福砂屋』のカステラを、紅茶といっしょに頂いたあと、わたしたちは、二階のみっこの部屋でくつろいだ。
彼女の部屋は、いろんなものを福岡に持っていっているせいか、どことなく殺風景で、本棚とローボードには、隙間が目立っている。
綿のキャミソールにショートパンツのラフな格好で、みっこはベッドの上で大きなクッションにもたれかかり、綺麗な脚をゆったりと伸ばしている。そのとなりに、わたしも腰をおろして話す。みっこのベッドはスプリングがしなやかで、ふかふかな感触がとってもいい気持ち。
楽しいひとときと、これでようやくみっこに会えて、明日には川島君と会う予定もできたおかげか、わたしの不安も、今は少し落ち着いていた。
つづく
そう言いながら、みっこママが大きなお皿をミトンで掴んで、ダイニングルームに運んできた。
「わぁ、キッシュですね。わたし大好物です!」
テーブルに置かれたほうれん草とベーコンの美味しそうなキッシュを見て、思わず興奮して声を高める。みっこママは嬉しそうに微笑んだ。
「あと、ガスパチョも作ってみたわ。みっこ。キッチンにサラダがあるから、運んでちょうだい」
「あ。わたしも運びます」
「いいのよ。さつきはお客さんなんだから、そこに座ってて」
席を立ちかけたわたしをみっこは抑え、キッチンからサラダを持ってくる。キッシュを取り分けながら、みっこママはひとりごとのようにつぶやく。
「そうですよ。こんなときでないと、みっこは手伝ってくれないんだから。さつきさん、みっこはそちらではなに食べてます? インスタントやファーストフードばかりじゃないでしょうね?」
「いえ。みっこがインスタントを食べてるところは、見たことがないです」
「さつきがうちに遊びにきたときは、なにか作ってくれるわ。さつきって、料理がとっても上手なんだから」
「もうっ、この子はみっともない。ごめんなさい、さつきさん。こんななんにもできない子で」
「あ~っ。ママそれはひどいんじゃない? あたしだって福岡でひとり暮らしするようになって、少しは家事も覚えたんだから」
「ははは。そう言うママだって、みっこのことは言えないよ。新婚の頃は家事が苦手で、なにもできなかっただろう」
みっこパパがそう言って、みっこに助け舟を出す。ママは真っ赤になって、恥ずかしそうに頬に手を当てた。
「それは、できなかったんじゃなくて、やれなかったんですよ。あの頃はまだモデルのお仕事をしていて、仕事柄手荒れは厳禁でしたから」
「まあ、そういうことにしておこう。だけど思い出すなぁ。わたしが会社から帰ってくると、まずはママの脱ぎ散らかした服を、全部片づける仕事が待っていたのを」
「パパ…」
「わたしが作ってあげた料理を、『こんな美味しい料理ははじめて』と言って、ママはパクパク食べてくれたしなぁ。あのときにママの胃袋を、ガッチリ掴んだよ」
「いやですわパパ。そんな昔のこと、人にバラさないで下さいよ」
「ははは。すまない。ママのおかげで、わたしの家事能力はうんと上がったよ。ははは」
「もう、あなたったら」
昔のことを思い出してか、愉快そうにみっこパパは笑い、釣られてママも苦笑した。
「どうだった? あたしのパパとママ」
「うん。とっても素敵な人たち。ほんとに仲いいのね」
「でしょ。自慢の両親よ」
「あは。それって、なんだか逆ね」
「ママもね。あたしがモデルの仕事を再開したら、福岡に住むことを許してくれるようになったの。相変わらずお小言は多いけどね。
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「まあ、東京と福岡の掛け持ちで、忙しくなるでしょうけどね」
食事が終わって、デザートにしっかり『福砂屋』のカステラを、紅茶といっしょに頂いたあと、わたしたちは、二階のみっこの部屋でくつろいだ。
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綿のキャミソールにショートパンツのラフな格好で、みっこはベッドの上で大きなクッションにもたれかかり、綺麗な脚をゆったりと伸ばしている。そのとなりに、わたしも腰をおろして話す。みっこのベッドはスプリングがしなやかで、ふかふかな感触がとってもいい気持ち。
楽しいひとときと、これでようやくみっこに会えて、明日には川島君と会う予定もできたおかげか、わたしの不安も、今は少し落ち着いていた。
つづく
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