Campus91

茉莉 佳

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16 Double Game

Double Game 9

「もっと余裕を持って、小説書きを楽しめよ」

“カシャン”
ダメ押しのようなひと言に、わたしは荒々しくカップをソーサーに置いた。紅茶の雫が、あたりに飛び散る。
「なに?! わたしより成績が上になったからって、いきなりそんな批評めいたこと言うわけ?」
「そういうわけじゃないけど」
「じゃあ、どんなわけなの?」
「批評とかじゃなく、ただアドバイスしてるだけだよ」
「川島君からアドバイスとかされなくっても、わかってるわよ」
「でも、今度の作品は、なんだか無理にストーリーを作ってるみたいで、キャラクターの言動が浮ついてるような印象を受けたよ」
「それは、川島君の個人的な感想でしょ?」
「そうかもしれないけど…」
「わたしはわたしなりに、いろんなメッセージを伝える工夫をしたのよ。どんな意味を込めて今回のお話し書いたのか、知りもしないくせに」
そう反論すると、川島君は少し不機嫌そうに言った。
「それ、審査員や読者みんなに、言ってまわるわけ?
『今回のお話しにはこんな意味を込めたから、理解して下さい』って」
その言葉は、燃え上がった炎に、さらに油を注いだ。
「なに? その上から目線!」
「別に、そういうわけじゃないよ」
「『小説書きを楽しめ』だなんて、気楽なこと言わないでよ! わたしは小説家になりたくて、必死なんだから」
「それはわかるけど…」
「写真のコンテストで金賞とって、小説コンクールでも簡単に佳作をとった川島君に、わかるわけないじゃない」
「そんな風に言うなよ。苦労なんて、人にひけらかすもんじゃないだろ」
「わたしが苦労をひけらかしてるって言いたいの?」
「違うよ。ただ、あまり必死になって力が入り過ぎると、いいものなんてできないって言いたいんだよ」
「どうせわたしには、佳作に入るような小説も書けないですよ」
「そんな、いじけるなよ」
「もういい! 帰る。ここの紅茶、まずい!」
そう言って、わたしは勢いよく席を立った。

わたしって最低。
ケンカするつもりなんてないのに、感情のコントロールができず、売り言葉に買い言葉で、つい川島君にくってかかってしまう。


 帰り道でも、ふたりは剣呑な雰囲気だった。
『仲直りしなくちゃ』という気持ちとはうらはらに、わたしはムスッと黙ったまま、機嫌悪そうに歩いていた。
川島君も、そんなわたしをどう扱っていいかわからず、手を焼いている様子。
帰り道、わたしたちはなにも話さず電車に乗り、いつもキスをする夜の公園を通ることもなく、まっすぐわたしの家に向かった。
こんな気持ちのまま、別れてしまいたくない。
気ばかり焦るけど、どんどん家に近づくだけだった。

つづく
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