Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
214 / 300
17 しあわせの作り方

しあわせの作り方 5

「さっきも電話したのに、コールバックしてくれなかったのね」
「あ、ごめん。ちょっと手が離せなくて」
「いいんだけど… 昨日のリハ、『見に来る』ってさつき言ってたのに、来ないから心配になって、電話してみたのよ」
「ごめん。ちょっと、急用が入っちゃって、行けなくなったの」
「そう… 残念」
「あっ。わたし、今から出かける所だから」
「そうなの?」
「うん、ちょっと買い物に。ごめんね」
「…ううん。あたしこそ、いきなり電話しちゃって、ごめんね。またゆっくり、話ししようね。いろいろ相談したいこともあるし」
「そうね。じゃあ」
「…じゃあね」

よそよそしく電話を切って、わたしは買い物に出かけた。
トーンの下がった声のニュアンスから、みっこにはもう伝わっただろな。
わたしが彼女のこと、なんとなく避けてるのが。

もちろんわたしは、みっこのことが大好き。
いちばんの親友だと思っている。
だけど今は、彼女に対していろんなコンプレックスや嫉妬があって、まともに話せない。

みっこが、川島君の卒業展のモデルをした。

彼女の実力や容姿からすれば、それはなんの不思議もないことだけど、やっぱり、彼女が選ばれたことに嫉妬し、不安になってしまう。
川島祐二にとって、わたしは『恋人』ではあっても、『モデル』としての価値はないってこと。
そして、そんないきさつを、彼女から言ってもらえなかったことで、余計に寂しさと悔しさが募ってくる。
親友なのに、なんだか裏切られた気分。

 買い物の間中、そんな想いがエンドレスで、頭の中をグルグルまわり続けた。
こんなもやもやした気持ちでいるから、買い物から帰ってもしばらくはなにもする気がおこらず、わたしはベッドに転がったまま、ダラダラした時間を過ごてしまった。
ようやくケーキづくりにとりかかったのは、夕食も終わって、すっかり日も暮れてしまった頃。
母から『邪魔になるから、出しっ放しのケーキ道具をなんとかしなさい』と急かされて、わたしはようやく重い腰を上げ、ケーキづくりを再開させた。

生クリームをハンドミキサーで、軽く角が立つくらいに泡立てる。
そのクリームを、スポンジの表面にナッペしていき、残りのクリームは絞り出し袋に入れて、スポンジの上に形よく飾っていく。
買ってきたフルーツは、ゼラチンにシロップを混ぜたものでコーティングし、配色を考えながら、スポンジの上に盛っていく。
ちょっと大人な味にしたかったので、シロップにはリキュールを多めに入れてみた。
地味なスポンジづくりと違って、ナッペとデコレーションは、ケーキづくりでいちばん楽しい作業。
さっきまでの悶々とした気分も忘れて、わたしはケーキづくりに没頭していった。


「よし。できあがり!」

そう言って、思わず笑みがこぼれる。
今日のケーキはラズベリーとブルーベリー、グレープフルーツやキーウィをたっぷり使った、フルーツデコレーションケーキ。
生クリームはちょうどいいやわらかさで、絞り出した形も綺麗だし、フルーツもシロップでつややかに輝いて、おいしそう。
我ながらいい出来で、思わずほっこり、顔がほころんでしまった。
とそのとき、電話のベルが鳴り、
「さつき~電話よ。森田さんから」
と、お姉ちゃんが玄関から、わたしを大声で呼ぶ声がした。

「もしもし?」
「さつき…」
電話に出てみると、みっこの沈んだ声。
「何回もごめんね。さつき、今は時間、大丈夫?」
「うん。大丈夫だけど」
「あたし、今、さつきんに近い公園の公衆電話からかけてるの。ちょっと来られない?」
「えっ? 今から?」
「顔見て、話したいし」
「でも…」
「無理そうならいいわ。もう帰るから」
「ううん。さっきまでケーキ作ってて、ちょうど完成したところなの。今から着替えて、10分くらいで行けるけど」
わたしがそう答えると、みっこは少し安堵したような声になった。
「うん、待ってる。ごめんね。いきなり呼び出して」

手近にあったワンピースに着替えて、わたしは急いで公園に向かった。
いったいどうしたんだろう?
みっこの声は、なんだか物思いに耽るように、重く、沈んでいた。
なにか悩みでもあるんだろう?
話って…

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
追放された『貸与者』は、不条理な世界を監査(清算)する 「お前のようなゴミはいらない」 勇者パーティの荷物持ちソラは、魔王討伐を目前に非情な追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 彼らの力はすべて、ソラの規格外のステータスを『借りていた』だけの虚飾に過ぎないことを。 「……わかった。貸していた力(資産)、すべて返還(清算)してもらうよ」 契約解除。勇者たちは凡人へと転落し、ソラはレベル9999の万能感を取り戻す。 しかし、彼が選んだのは復讐ではない。 世界に蔓延る「不条理な負債」を暴き、正当な価値を再定義する『監査官』としての道だった。 才能なしと虐げられた少女ミィナを助け、ソラは冷徹に告げる。 「君の絶望は、私が買い取った。利息として……君を最強にしてあげよう」 「因果の空売り」「魂の差し押さえ」「運命の強制監査」 これは、最強の『貸与者』が、嘘まみれの英雄や腐敗した領地を、帳簿の上から「ざまぁ」する物語。