涙に消えた言葉

真城詩

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涙に消えた言葉

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彼らはアスリートとして対等だった。少なくとも、グラウンドの上では。

「っく、あぁっ!」
「んだよ、このくらいも耐えられないのか? もう声上げてんじゃねーか」
「っや、や、だって、ぇ……」
「おら、ケツ上げろ」

涙を流しながら言われた通りに尻を上げる彼はグラウンド上でのプライドなどまるで無い様子。ライバルの男性器を秘孔に受け入れてなお、もっと欲しい、もっと欲しいとでも言うようにそこをひくつかせて誘っている。激しい律動。その後、彼のライバルは彼のナカから自身をずるりと抜き、彼の顔の前にそれを差し出した。彼は舌をちろりちろりと動かし、精液に塗れた男根を舐る。その動きですら男には酷く煽情的に見えるのだった。

「っむぐ!? お、ぅんっん!」

喉奥に再び硬くなった性器を打ち付ける。彼の喉は突然の、最奥への刺激にきゅうと締まった。男はせせら笑う。

「イラマで下おっ勃てるとか変態だな」
「っう、うぅ……」

ついにその涙は生理的なものから情動的なものへと変わった。好きな男に変態と言われて喜べる男は少ないだろう。彼とて、この状況を心から望んでいるわけではないのだ。ただ、彼は男が好きなだけだった。だから、グラウンドでの勝ち負けをセックスに持ち込むのはどうだ、そう提案されたときに首を縦に振った。好きな男の身体に触れられる機会が出来た、それだけで理由は充分すぎるほどだった。以来、彼は男に負け続けている。何故かは分からない。彼にはそれを知るすべもない。

「……ぅぃ」
「あ? なんだよ、舌休めるんじゃねえよ」

好き、微かに届けようとした気持ちは今日も伝わらないままだった。
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2022.01.19 ユーザー名の登録がありません

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