ハニトラリップサーヴィス

真城詩

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ハニトラリップサーヴィス6

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 リキュールの肩を抱いたまま上階へ行くと、拘りぬいて選んだ俺のソファにチェシャが慣れ親しんだ様子で座り込んでいた。彼は俺とリキュールを認めると、お、と言って書類に注いでいた目をこちらに向けた。

「チェシャ。早いな、もう調べ終わったのか?」

「いや、全てではない。とりあえずここで休憩しようかと思ってな」

なるほど、と口にするとリキュールがうざったいとでも言うように俺の腕を振りほどいた。

「なんだよ、さっきまで可愛くここに収まっていてくれたのに」

「もう必要ないでしょう、ここはあなたの私室よね?」

「そうだが?」

「女一人満足に扱えないボスってのが構成員たちにとって可哀想すぎてわざわざあなたの腕の中にいたのよ」

「……そういうことか」

チェシャが乾いた笑いをあげる。

「俺は構成員の内に入らないのかよ?」

「あなたは私がこいつから情報を抜いたことを知っているでしょう」

「くくっ、まあそうだな」

おいボス、気の強い女がタイプなのかよと冗談めかした口調で付け加えたチェシャはいつも以上に疲れている様子だった。そりゃあそうだろう。俺が勝手に彼の仕事を増やしたのだ。

「チェシャ、悪いな。いつも俺の我儘に付き合ってもらって」

「いや? 本当にいつものことだからな、気にしていない」

「そこまで言われるとなんか考えもんだな」

チェシャは、お二人さんが来たなら帰るか、と言って俺の部屋を後にした。またあの書類地獄に籠りに行くのだろう。おう、お疲れと声をかけて見送ると、こちらを振り向かないままひらひらと手を振って去って行った。聞き捨てならないことを口にして。

「リキュール……だっけか? まあ、隠し事はほどほどにな」

と。俺がよく飲み込めない事実に戸惑っているとリキュールは静かな声で、

「その、隠し事に加担したのはあなたでしょう? 笑わせない猫、さん?」

そう言った。
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