琥珀は紅玉の夢を見る

真城詩

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看病

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書庫の書を読み漁って少しでも朱火の症状に当てはまるものはないかと探す。ごほ、ごほという咳の音が聞こえてはねやに戻り、朱火の背中をさすった。布を水に浸しては朱火の額に当ててやる。冷たいのが気持ちいいのか、心地よさそうな顔をする朱火が唯一の救いだ。琥珀は朱火の看病に熱心だった。よく山へ行っては薬草を採り、書を読みながら煎じたり、すり下ろして何かと混ぜたり、乾かして粉末にしたりしていた。そしてそれを朱火に飲ませる。最初の内は朱火も元気で、また苦いやつかぁとか何とか言っていたのだが最近はもうそれを言う元気もなく、ただただありがとな、といって飲み干すだけだ。琥珀が見るに朱火は毎日うとうとと寝たり起きたりを繰り返しているようだ。とはいっても眠っている時間のほうが絶対的に長かったが。

朱火が倒れてから数日、彼は寝たきりのままだった。ごほごほと咳込み、鼻水も出ている。本人が言うには熱っぽく、頭痛もするらしい。喉も腫れていて、水を飲むのも辛そうだ。しかし、少なくともみすずの症状とは違っていることが琥珀にとって安心できる材料の一つだった。みすずは、発症して一週間で死んでしまったから。もし朱火のそれが命を蝕むような物であっても、とりあえず一つの可能性は消え失せた。それだけで琥珀は少し安心できた。

「朱火、起きておるか?調子はどうだ?」

そう言って閨をのぞき込むことが琥珀の日常となり、それ以外は書を読むか薬草を採りに行くか料理をしているかになった。琥珀の一日は朱火の看病に追われていた。流石の朱火ももう風邪だといって笑っていられるような元気がなくなり、それが琥珀には寂しかった。せめて笑っていて欲しかった。琥珀は朱火の笑顔が好きだった。良くなりますようにと人型を作って川にも流した。信じてはいなかったが呪術の類も全て試した。それでも朱火は良くならなかった。最初は完食できていた料理も、次第に残すことが増え、一口も食べられない時もあった。苦しんでいるのが自分であったならと何回願ったことか。朱火同様に、琥珀もまた一日ずつやつれていった。そんな琥珀を見て朱火もまた心配していた。自分の看病のために琥珀までもが病にかかったようになっている。それは朱火にとって耐えられないことの一つだった。朱火が体調を崩してから二人の寝床を離していたので朱火は知らないが、琥珀はろくに眠れていなかった。それは不安と過去の記憶に苛まれてで、琥珀の精神と体力を削った。二人ともが、体調を崩していた。
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