足枷つきのエデン

真城詩

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足枷つきのエデン

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俺はここに囚われている。詳しく言えばこの部屋、だ。でもそんなことはどうでもよくて、問題なのは囚われているってとこだ。文字通り俺はこの部屋に閉じ込められている。誘拐されたんだ。ご丁寧に足枷まで嵌っていて、この部屋の中でさえも俺の行動範囲は制限されている。衣食には困っていない。誘拐犯のおじさんがたくさん服をくれた上に毎日ちゃんと洗濯してくれる。ご飯も毎日作ってくれる。最初は毒入りではないのかと心配したが、そんなことはなく、寧ろ店物なんかよりも美味しいのではと思うくらいに旨い。行動制限がされていると言っても、その範囲の中にゲームはあるし、ベッドも本棚もある。それにおじさんは毎日俺に欲しいものを聞いてはそれを買ってきてくれる。毎日楽しいし、黙っていても旨い飯は出てくるし、おじさんは優しいし、俺は結構あのおじさんが好きかもしれないし。誘拐されたってのに。つまり問題はだ。囚われているのが割に快適であることだ。ただ一つを除いて。それはセックスだ。おじさんは俺を犯す。毎日犯す。ヤッた後は優しくしてくれるし後処理なんかもしてくれるが俺に同性愛の趣味はない。ああ、おじさんが帰ってきた。またセックスの時間だ。

「あっあぁぁ、そこっだめぇっなんかくるっ」
「そっか、君はここがいいんだね。いいよ。たくさん気持ちよくなって」
「あぁああぁあんっ、らめぇえ、うあぁっ」
「かわいいね、愛してるよ」
「あ!あ!♥~~~!!」

でも、言い忘れてたけれどセックスは気持ちいい。気持ちよくておかしくなりそうなくらいに。

いや、もう俺はおかしくなっているのか?ゲームも漫画も満喫する程度に誘拐犯の部屋で寛いでいるなんて。出された飯を疑うことなく食べるだなんて。おじさんが優しいと思うだなんて。好きかもしれないと思うだなんて。

でももうこの生活に慣れちまったんだ。この生活以外考えられないんだ。幸せなんだよ。

なあ、だれか教えてくれ。俺はおかしくなったのか?
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