8 / 14
第八章
しおりを挟む
宮廷楽師としての初日。
私は王宮の西翼にある楽師控室へと向かった。
廊下を歩く私の足取りは、昨日とは比べ物にならないほど軽い。
もう叔父の顔色を窺う必要はない。ペトラの嫌味に耐える必要もない。
私は自由だ。自分の力で、この地位を掴み取ったのだ。
「おはようございます、クレア様」
楽師控室の扉を開けると、昨日選考会で共に合格した令嬢たちが既に集まっていた。
マーガレット、エリザベス、アナスタシア、ヴィクトリア、シャーロット。
「おはようございます」
私は微笑んで挨拶を返した。
「クレア様、昨日は本当に素晴らしかったわ」
マーガレットが嬉しそうに近づいてきた。
「私、あなたの演奏を聴いて鳥肌が立ったの。首席合格も納得だわ」
「ありがとうございます」
私は謙遜して頭を下げた。
「皆様の演奏も素晴らしかったです」
「そんなことないわ」
エリザベスが笑った。
「私たちとクレア様では、明らかに格が違う。ねえ、皆もそう思うでしょう?」
他の令嬢たちも頷いた。
だが――その中で一人だけ、私を見つめる視線が冷たかった。
ヴィクトリア・カーライル。
彼女は四番目に名前を呼ばれた令嬢で、ハープの名手だと聞いている。
「ヴィクトリア様?」
私が声をかけると、彼女はふいと顔を背けた。
「......別に。何でもないわ」
その時、控室の扉が開いた。
グレゴリー卿が入ってきた。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます」
私たちは一斉に立ち上がり、頭を下げた。
「本日から、皆さんは正式に宮廷楽師です。まずは職務内容について説明しましょう」
グレゴリー卿は書類を広げた。
「宮廷楽師の主な仕事は三つあります。
一つ目、宮廷行事での演奏。晩餐会、舞踏会、式典など。
二つ目、王族や高位貴族への個人レッスン。三つ目、音楽堂での定期演奏会です」
彼は私たちを見回した。
「特に首席合格者のクレアには、重要な任務を任せることになります」
「はい」
私は姿勢を正した。
「来週、王宮で王太子殿下の誕生祝賀会が開催されます。そこでの演奏を、あなたに任せたい」
控室がざわついた。
「王太子殿下の祝賀会?」
「それは......大役ですわ」
「クレア様、すごい」
グレゴリー卿は続けた。
「この祝賀会には、国内外の賓客が集まります。
特に、隣国ヴァルデマール王国からは王女殿下も来訪される。
あなたの演奏で、我が国の文化水準の高さを示してほしい」
「わかりました」
私は深々と頭を下げた。
「精一杯、務めさせていただきます」
「期待しています」
グレゴリー卿は満足げに頷いた。
説明が終わり、他の令嬢たちが控室を出ていく中、グレゴリー卿が私を呼び止めた。
「クレア、少しよろしいですか」
「はい」
彼は声を潜めた。
「一つ、警告しておきたいことがあります。
王室魔導師団の団長、リチャード・ストラトフォード侯爵についてです」
私は息を呑んだ。
侯爵――それも王室魔導師団の団長。
「あの男は、音花の恵みのような特殊能力に異常な執着を持っています。
おそらく、あなたの母君の記録も把握しているでしょう」
「では......」
「ええ。あなたにも接触してくる可能性が高い。
もし彼に声をかけられたら、決して一人で対応しないこと。すぐに私かアーロン隊長に知らせてください」
「わかりました」
私は頷いた。
「ストラトフォード侯爵は、この国で五本の指に入る高位貴族です。
あなたのような爵位のない娘では、彼の要求を断ることは容易ではない。
だからこそ、一人で対峙してはいけません」
グレゴリー卿の表情は、真剣そのものだった。
◆
その日の午後、私は音楽堂で一人、練習していた。
王太子殿下の祝賀会。
これは私にとって、宮廷楽師としての最初の大仕事だ。
絶対に成功させなければならない。
私はリュートを手に取り、演奏を始めた。
祝賀会にふさわしい、華やかで優雅な曲。
音符が流れ、音楽堂に響き渡る。
だが――どうしても、違和感があった。
技術的には完璧だ。テンポも、音程も、全て正確。
それなのに、何かが足りない。
私は演奏を止め、ため息をついた。
「困っているようだな」
背後から声がした。
振り返ると、アーロンが立っていた。
「アーロン様」
「様、は要らない。アーロンでいい」
彼は私の隣に座った。
「どうした?」
「技術的には問題ないんです。でも――何かが足りない気がして」
私は正直に答えた。
「祝賀会にふさわしい華やかさが、出せていないような......」
「華やかさ、か」
アーロンは少し考えた。
「お前の演奏を聴いていて思ったことなんだが――」
彼は窓の外を見た。
「お前が一番輝くのは、技術を見せつけようとしている時じゃない」
「では、いつですか?」
「誰かのために演奏している時だ」
アーロンは私の方を向いた。
「選考会で演奏した『星降る夜の子守唄』。
あれは、お前の両親への想いが込められていた。だから、聴く者の心を動かした」
「でも、祝賀会では......殿下のために演奏すべきですよね」
「そうだな」
アーロンは頷いた。
「だが、お前は殿下と会ったこともない。心を込めろと言われても、難しいだろう」
「はい......」
私は肩を落とした。
「なら」
アーロンは立ち上がり、私の前に立った。
「俺のために、演奏してみろ」
「え?」
「祝賀会の練習だ。俺を殿下だと思って、演奏してくれ」
彼は椅子に座り、姿勢を正した。
「さあ、始めてくれ」
私は戸惑いながらも、リュートを構えた。
アーロンのために。
この人のために、演奏する。
指が弦に触れる。
音が生まれる。
最初は――やはり硬かった。
でも、演奏を続けるうちに、何かが変わっていくのを感じた。
アーロンの表情。
彼は真剣に、私の演奏を聴いている。
その視線に応えたい。
この人を、喜ばせたい。
気づけば、私は心を込めて演奏していた。
技術だけではなく、感情も乗っている。
アーロンへの――何だろう、この気持ちは。
感謝?
それとも......。
曲が終わった。
アーロンは拍手をした。
「良かった。さっきとは全然違う」
「本当ですか?」
「ああ」
彼は立ち上がり、私に近づいた。
「その調子でいけば、祝賀会も成功する」
心臓が、激しく胸を打っている。アーロンの手の温もり。
優しい声。
私は――この人のために、演奏したいのかもしれない。
心から祝福したい相手。
それは、もしかして......。
「クレア?」
アーロンが不思議そうに私を見た。
「顔が赤いぞ。体調が悪いのか?」
「いえ、何でもありません」
私は慌てて顔を背けた。
何を考えているの、私。
これは形式的な関係。
アーロンは私を守るために、契約を結んだだけ。
でも――。
「今日はもう休め」
アーロンが言った。
「無理をすると、本番で力が出せなくなる」
「はい」
私はリュートを片付けた。
だが、胸の鼓動は収まらなかった。
◆
夜、宿舎へ戻る途中。
私は王宮の庭園を通り抜けていた。
月明かりの下、噴水が美しく輝いている。
アーロンとの練習のことを思い出し、また顔が熱くなる。
あの人のために演奏したい。
その気持ちが、どんどん強くなっている。
「クレア・エヴァンス嬢」
突然、前方から声がかけられた。
立ち止まると、豪華な魔導師のローブを纏った男が、こちらへ歩いてきた。
月明かりに照らされたその顔――。
整った顔立ちだが、目には冷たい光が宿っている。
そして、そのローブの胸元には、王室魔導師団の紋章。
まさか。
「初めまして、クレア嬢。私の名を、ご存知かな?」
男は優雅に微笑んだ。
その立ち振る舞い、纏う空気――。
グレゴリー卿が警告していた人物。
「......ストラトフォード侯爵」
私は警戒しながら答えた。
「ご明察」
侯爵は満足げに頷いた。
「王室魔導師団の団長を務めております。昨日の選考会、拝見させていただきました。素晴らしい演奏でしたね」
「ありがとうございます」
私は一歩、後退りした。
グレゴリー卿の言葉を思い出す。
「決して一人で対応しないこと」
でも今、ここには私しかいない。
それに、相手は侯爵。この国で五本の指に入る高位貴族。
爵位も地位もない私が、無下に断れば――それだけで不敬罪に問われかねない。
「そう警戒しないでください」
侯爵は一歩、近づいてきた。
「少し、お話ししたいだけです」
私は動けなかった。
今すぐにでも逃げたい。
でも、ここで背を向けて逃げ出せば、侯爵の機嫌を損ねる。
高位貴族の怒りを買うことが、どれほど恐ろしいか。
叔父の屋敷で、散々見てきた。
「あなたの母君、レイラ・エヴァンスについて昔話でも――」
「クレア」
横から、凛とした声が響いた。
アーロンだった。
私と侯爵の間に割って入ってくれる。
「アーロン隊長」
侯爵は少し驚いた様子だったが、すぐに笑顔を作った。
「これはこれは。深夜の巡回ですか?」
「クレアを探していた」
アーロンは冷たく答えた。
「侯爵、彼女に何か用ですか?」
「そんなに邪険にしないでくれたまえ。ただの挨拶ですよ」
侯爵は肩をすくめた。
「新しい宮廷楽師に、祝いの言葉を述べようと思いまして」
「そうですか」
アーロンは私の肩に手を置いた。
「では、挨拶は済んだようですね。クレア、行こう」
「はい」
私はアーロンに従った。
侯爵は――私たちの背中を、じっと見つめていた。
その視線が、背筋に冷たく突き刺さる。
私は王宮の西翼にある楽師控室へと向かった。
廊下を歩く私の足取りは、昨日とは比べ物にならないほど軽い。
もう叔父の顔色を窺う必要はない。ペトラの嫌味に耐える必要もない。
私は自由だ。自分の力で、この地位を掴み取ったのだ。
「おはようございます、クレア様」
楽師控室の扉を開けると、昨日選考会で共に合格した令嬢たちが既に集まっていた。
マーガレット、エリザベス、アナスタシア、ヴィクトリア、シャーロット。
「おはようございます」
私は微笑んで挨拶を返した。
「クレア様、昨日は本当に素晴らしかったわ」
マーガレットが嬉しそうに近づいてきた。
「私、あなたの演奏を聴いて鳥肌が立ったの。首席合格も納得だわ」
「ありがとうございます」
私は謙遜して頭を下げた。
「皆様の演奏も素晴らしかったです」
「そんなことないわ」
エリザベスが笑った。
「私たちとクレア様では、明らかに格が違う。ねえ、皆もそう思うでしょう?」
他の令嬢たちも頷いた。
だが――その中で一人だけ、私を見つめる視線が冷たかった。
ヴィクトリア・カーライル。
彼女は四番目に名前を呼ばれた令嬢で、ハープの名手だと聞いている。
「ヴィクトリア様?」
私が声をかけると、彼女はふいと顔を背けた。
「......別に。何でもないわ」
その時、控室の扉が開いた。
グレゴリー卿が入ってきた。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます」
私たちは一斉に立ち上がり、頭を下げた。
「本日から、皆さんは正式に宮廷楽師です。まずは職務内容について説明しましょう」
グレゴリー卿は書類を広げた。
「宮廷楽師の主な仕事は三つあります。
一つ目、宮廷行事での演奏。晩餐会、舞踏会、式典など。
二つ目、王族や高位貴族への個人レッスン。三つ目、音楽堂での定期演奏会です」
彼は私たちを見回した。
「特に首席合格者のクレアには、重要な任務を任せることになります」
「はい」
私は姿勢を正した。
「来週、王宮で王太子殿下の誕生祝賀会が開催されます。そこでの演奏を、あなたに任せたい」
控室がざわついた。
「王太子殿下の祝賀会?」
「それは......大役ですわ」
「クレア様、すごい」
グレゴリー卿は続けた。
「この祝賀会には、国内外の賓客が集まります。
特に、隣国ヴァルデマール王国からは王女殿下も来訪される。
あなたの演奏で、我が国の文化水準の高さを示してほしい」
「わかりました」
私は深々と頭を下げた。
「精一杯、務めさせていただきます」
「期待しています」
グレゴリー卿は満足げに頷いた。
説明が終わり、他の令嬢たちが控室を出ていく中、グレゴリー卿が私を呼び止めた。
「クレア、少しよろしいですか」
「はい」
彼は声を潜めた。
「一つ、警告しておきたいことがあります。
王室魔導師団の団長、リチャード・ストラトフォード侯爵についてです」
私は息を呑んだ。
侯爵――それも王室魔導師団の団長。
「あの男は、音花の恵みのような特殊能力に異常な執着を持っています。
おそらく、あなたの母君の記録も把握しているでしょう」
「では......」
「ええ。あなたにも接触してくる可能性が高い。
もし彼に声をかけられたら、決して一人で対応しないこと。すぐに私かアーロン隊長に知らせてください」
「わかりました」
私は頷いた。
「ストラトフォード侯爵は、この国で五本の指に入る高位貴族です。
あなたのような爵位のない娘では、彼の要求を断ることは容易ではない。
だからこそ、一人で対峙してはいけません」
グレゴリー卿の表情は、真剣そのものだった。
◆
その日の午後、私は音楽堂で一人、練習していた。
王太子殿下の祝賀会。
これは私にとって、宮廷楽師としての最初の大仕事だ。
絶対に成功させなければならない。
私はリュートを手に取り、演奏を始めた。
祝賀会にふさわしい、華やかで優雅な曲。
音符が流れ、音楽堂に響き渡る。
だが――どうしても、違和感があった。
技術的には完璧だ。テンポも、音程も、全て正確。
それなのに、何かが足りない。
私は演奏を止め、ため息をついた。
「困っているようだな」
背後から声がした。
振り返ると、アーロンが立っていた。
「アーロン様」
「様、は要らない。アーロンでいい」
彼は私の隣に座った。
「どうした?」
「技術的には問題ないんです。でも――何かが足りない気がして」
私は正直に答えた。
「祝賀会にふさわしい華やかさが、出せていないような......」
「華やかさ、か」
アーロンは少し考えた。
「お前の演奏を聴いていて思ったことなんだが――」
彼は窓の外を見た。
「お前が一番輝くのは、技術を見せつけようとしている時じゃない」
「では、いつですか?」
「誰かのために演奏している時だ」
アーロンは私の方を向いた。
「選考会で演奏した『星降る夜の子守唄』。
あれは、お前の両親への想いが込められていた。だから、聴く者の心を動かした」
「でも、祝賀会では......殿下のために演奏すべきですよね」
「そうだな」
アーロンは頷いた。
「だが、お前は殿下と会ったこともない。心を込めろと言われても、難しいだろう」
「はい......」
私は肩を落とした。
「なら」
アーロンは立ち上がり、私の前に立った。
「俺のために、演奏してみろ」
「え?」
「祝賀会の練習だ。俺を殿下だと思って、演奏してくれ」
彼は椅子に座り、姿勢を正した。
「さあ、始めてくれ」
私は戸惑いながらも、リュートを構えた。
アーロンのために。
この人のために、演奏する。
指が弦に触れる。
音が生まれる。
最初は――やはり硬かった。
でも、演奏を続けるうちに、何かが変わっていくのを感じた。
アーロンの表情。
彼は真剣に、私の演奏を聴いている。
その視線に応えたい。
この人を、喜ばせたい。
気づけば、私は心を込めて演奏していた。
技術だけではなく、感情も乗っている。
アーロンへの――何だろう、この気持ちは。
感謝?
それとも......。
曲が終わった。
アーロンは拍手をした。
「良かった。さっきとは全然違う」
「本当ですか?」
「ああ」
彼は立ち上がり、私に近づいた。
「その調子でいけば、祝賀会も成功する」
心臓が、激しく胸を打っている。アーロンの手の温もり。
優しい声。
私は――この人のために、演奏したいのかもしれない。
心から祝福したい相手。
それは、もしかして......。
「クレア?」
アーロンが不思議そうに私を見た。
「顔が赤いぞ。体調が悪いのか?」
「いえ、何でもありません」
私は慌てて顔を背けた。
何を考えているの、私。
これは形式的な関係。
アーロンは私を守るために、契約を結んだだけ。
でも――。
「今日はもう休め」
アーロンが言った。
「無理をすると、本番で力が出せなくなる」
「はい」
私はリュートを片付けた。
だが、胸の鼓動は収まらなかった。
◆
夜、宿舎へ戻る途中。
私は王宮の庭園を通り抜けていた。
月明かりの下、噴水が美しく輝いている。
アーロンとの練習のことを思い出し、また顔が熱くなる。
あの人のために演奏したい。
その気持ちが、どんどん強くなっている。
「クレア・エヴァンス嬢」
突然、前方から声がかけられた。
立ち止まると、豪華な魔導師のローブを纏った男が、こちらへ歩いてきた。
月明かりに照らされたその顔――。
整った顔立ちだが、目には冷たい光が宿っている。
そして、そのローブの胸元には、王室魔導師団の紋章。
まさか。
「初めまして、クレア嬢。私の名を、ご存知かな?」
男は優雅に微笑んだ。
その立ち振る舞い、纏う空気――。
グレゴリー卿が警告していた人物。
「......ストラトフォード侯爵」
私は警戒しながら答えた。
「ご明察」
侯爵は満足げに頷いた。
「王室魔導師団の団長を務めております。昨日の選考会、拝見させていただきました。素晴らしい演奏でしたね」
「ありがとうございます」
私は一歩、後退りした。
グレゴリー卿の言葉を思い出す。
「決して一人で対応しないこと」
でも今、ここには私しかいない。
それに、相手は侯爵。この国で五本の指に入る高位貴族。
爵位も地位もない私が、無下に断れば――それだけで不敬罪に問われかねない。
「そう警戒しないでください」
侯爵は一歩、近づいてきた。
「少し、お話ししたいだけです」
私は動けなかった。
今すぐにでも逃げたい。
でも、ここで背を向けて逃げ出せば、侯爵の機嫌を損ねる。
高位貴族の怒りを買うことが、どれほど恐ろしいか。
叔父の屋敷で、散々見てきた。
「あなたの母君、レイラ・エヴァンスについて昔話でも――」
「クレア」
横から、凛とした声が響いた。
アーロンだった。
私と侯爵の間に割って入ってくれる。
「アーロン隊長」
侯爵は少し驚いた様子だったが、すぐに笑顔を作った。
「これはこれは。深夜の巡回ですか?」
「クレアを探していた」
アーロンは冷たく答えた。
「侯爵、彼女に何か用ですか?」
「そんなに邪険にしないでくれたまえ。ただの挨拶ですよ」
侯爵は肩をすくめた。
「新しい宮廷楽師に、祝いの言葉を述べようと思いまして」
「そうですか」
アーロンは私の肩に手を置いた。
「では、挨拶は済んだようですね。クレア、行こう」
「はい」
私はアーロンに従った。
侯爵は――私たちの背中を、じっと見つめていた。
その視線が、背筋に冷たく突き刺さる。
32
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』
ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。
現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。
実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます
さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。
生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。
「君の草は、人を救う力を持っている」
そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。
不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。
華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、
薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。
町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。
家族から冷遇されていた過去を持つ家政ギルドの令嬢は、旦那様に人のぬくもりを教えたい~自分に自信のない旦那様は、とても素敵な男性でした~
チカフジ ユキ
恋愛
叔父から使用人のように扱われ、冷遇されていた子爵令嬢シルヴィアは、十五歳の頃家政ギルドのギルド長オリヴィアに助けられる。
そして家政ギルドで様々な事を教えてもらい、二年半で大きく成長した。
ある日、オリヴィアから破格の料金が提示してある依頼書を渡される。
なにやら裏がありそうな値段設定だったが、半年後の成人を迎えるまでにできるだけお金をためたかったシルヴィアは、その依頼を受けることに。
やってきた屋敷は気持ちが憂鬱になるような雰囲気の、古い建物。
シルヴィアが扉をノックすると、出てきたのは長い前髪で目が隠れた、横にも縦にも大きい貴族男性。
彼は肩や背を丸め全身で自分に自信が無いと語っている、引きこもり男性だった。
その姿をみて、自信がなくいつ叱られるかビクビクしていた過去を思い出したシルヴィアは、自分自身と重ねてしまった。
家政ギルドのギルド員として、余計なことは詮索しない、そう思っても気になってしまう。
そんなある日、ある人物から叱責され、酷く傷ついていた雇い主の旦那様に、シルヴィアは言った。
わたしはあなたの側にいます、と。
このお話はお互いの強さや弱さを知りながら、ちょっとずつ立ち直っていく旦那様と、シルヴィアの恋の話。
*** ***
※この話には第五章に少しだけ「ざまぁ」展開が入りますが、味付け程度です。
※設定などいろいろとご都合主義です。
※小説家になろう様にも掲載しています。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる