無能冒険者、魔王の娘を助けたら結婚することになりました ~スキル<畜産>にモンスター育成が追加されたので、軍を育てて勇者を蹂躙する〜

凩凪凧

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第一章 元魔王幹部アラブット蹂躙編

魔王城、迫る

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 ***

 俺たちは今、山にいた。
 数は絞ったとはいえ、魔物を引き連れて歩くのである。さすがに街中を堂々と通るわけにはいかない。
 そのため、魔王城前の街を迂回し、山の方面から奇襲するルートをとったのだ。
 とはいえ、相手に認知されることは織り込み済みである。エリザベスが敵を感知していたように相手もできると考えておいた方がいいだろう。
 だから、いつどこからでもかかってこられていいように、俺を含めて五つの部隊に編成している。

 まず中心に位置するのが俺の部隊、ゴブたろうとポチ太をここにおき、ゴブリン念話での部隊間通信、そしてポチ太がいることにより、部隊間での移動を容易くしている。一応、ここが司令塔である。

 そして前を行き、先陣を切るのがラビーニャの部隊である。
 一番危険な先鋒には行ってほしくはなかったのだが、本人立っての希望とその適正の高さから選ばざるを得なかったのである。なぜなら戦闘能力はポチ太を抜いたら二番目に高い。ネームドになったサムトとレズバの二人を相手にして一歩も引かないのだ。そして、まだ本気を見たこともない。剣聖スキルをどこまで使いこなせるのかも教えてもらっていないのだ。乙女に秘密はつきものなのかもしれない。
 ラビーニャの部隊には多くのウルフ系の魔物を編成させている。感知能力の底上げである。魔力感知はリザードマン系でも行えるのだが、それに嗅覚が加わるウルフ系の方が秀でている。敵の発見、迅速な処理が期待できるのだ。

 そして、左手にはサムトの部隊、右手にはレズバの部隊を配置している。
 二人とも訓練の成果が出ているのか、大きくレベルを伸ばしている。さらにネームドとなったこともあり、戦闘力は申し分ないだろう。
 そして魔物の本能ともいえる魔力感知だって行える。信頼のおける俺の配下であった。

 最後の後方の部隊はエリザベスとセーラの部隊である。
 セーラは広範囲に魔法を打ってもらうため、そして近接戦闘が一番できないために後ろにいってもらった。本当なら家でお留守番させていてもよかったのだが、入れ違いにアラブットに攻められては元も子もない。そのため、護衛の意味も含めて、戦闘力の底が知れないエリザベスとペアを組んでもらっている。
 奇襲が来ても敵感知のスキルで対策はとれる。なんなら魔法で仕留めてもらってもいいのだ。後ろからの奇襲で死ぬとしたら、この二人の裏切りによるものしか考えられないくらい隙はない。ウルフ種、昆虫種、リザードマン種の混合部隊である。一番バランスがいい。

 急遽考えた部隊編成だったが、うまく機能しているみたいだった。
 たまに現れる野生の魔物に加え、アラブットの手下でさえも早期発見、倒すことができていたのだ。
 そこらにいる魔物ではラビーニャや、レズバ、サムトの実力には敵わない。
 誇らしいことである。

 そうして魔王城が目で確認できるほどに近づいたところだった。山の頂上から見えるそれは暗雲の中にあり、強い気配を放っていた。まだ山をもう一つ乗り越えないとたどり着けないというのに、見ていると首筋がチリチリとする。

 そして、一つの影が城から現れるのが見えた。
 それは翼をもち、長い尾を持ち、ここの位置からでもとても巨大なことがわかる。
 陰はどんどんとこちらに近づいてくる。

 そう、俺はその正体を知っている。
 つい最近、その姿を見たことあるのだ。

 確実にこちらを認知し、向かってくるそれに、俺は全身の毛を逆立てる。
 あれに対抗することができるのは、きっと彼女しかいない。
 隣にいるゴブたろうに俺は指示を出す。

「エリザベスを!」
「もう来ておるぞ!」

 彼女は既にその姿を現していた。
 幼女の姿ではなく、巨大な竜の姿で俺の頭上を飛び、そして近づいてくるそれに向かって突撃していく。

 今、俺たちの目の前では恐ろしい戦いが始まろうとしていた。
 ドラゴンが二匹、争いを始めているのだ。

「やはり生き延びていたか、エリザベス」
「貴様に借りを返さないといけないからの、地獄から戻ってきたのじゃ」

 その一言だけを交わし、二つの影は重なり合う。
 牙と牙、尻尾と尻尾、そして口から放たれるブレス。
 彼女たちが起こす風圧は、周りの木々を揺らし、雲を吹き飛ばす。
 羽ばたきをするだけで小さな家なんかは吹き飛ばされるのではないだろうか。

 作戦通り、空中で上手く敵を引き付けてくれているな。
 これなら最大の懸念が解決されているな。

「後方部隊は中心と合流、その後、エリザベスが時間を稼いでくれている間に魔王城に突撃する」
「うむ、その言葉の仰せの通りに伝えますぞ」
「いいか、敵が出たら極力倒して進め。 取り逃すと背中を刺されることになるぞ」

 俺はポチ太の背に乗り、その毛を撫でる。
 

 魔王城は既に目前に迫っていた。
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