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しおりを挟むhappy birthday to you
happy birthday to you
happy birthday dear....
happy birthday to...?
☆
君に何をあげたら喜ぶか分からなくて、ずっと考えていた。君は少し変わったものが好きだから。
カンカンという音で考えがどっかにいってしまった。目の前で赤い帽子を被った兵隊が行進している。その上で君も笑っていた。飾りのような笑顔だけど、それでもよかった。
「太鼓ってマヌケね」
それは君が勝手に、他の人形についていた太鼓を、固い顔をした兵隊につけたからじゃないか。でも僕はそれを言わずにそうだねと答えた。
今度はトントンと音がする。またどこかで人形が動き出したな。ネジ式の奴か、それでなくてもこの部屋は物に溢れているので今更気にしない。
目のとこをぐちゃぐちゃにナイフでいじくったテディベアを抱きながら、今日も包帯まみれになっている。だから僕のイメージで君は白という感じがする。まぁ包帯だけの白じゃあないんだけど。
「もうすぐお誕生日だね」
「……誕生日?」
フォークで兵隊を刺した君が、ぐりぐりとさらにそれを突き立てる。
「君がこの世に生を受けてから7度目の日のことだよ」
「それがどうしたの」
「みんな1年に1回あるから、お祝いするんだよ。僕は来年もいいことがあるようにって意味でその日を迎えている」
「……いいこと?」
「そうだよ。こうして君と変わらずにまた明日、明後日、1年後会えたら嬉しいだろ?」
相変わらず僕の言ってることは分からないって顔で、今度はフォーク曲げに挑戦し始めた。でも唐突にフォークを投げて立ち上がった。
「だったら次のはとびきりいいものに、豪華なお祝いにしよう。この次はいらないくらいの」
「……そうだね。いっぱいめっちゃくちゃにお祝いしよう」
「あははっなんか楽しそう! こんなのより! こんなのより!」
ナイフで刺されたクマが顔の前をぐるぐると回る。最後にカツーンと床に刺した後で、くるりと振り返った。
「それで、誕生日ってなに?」
僕は小さくため息をついて、テディベアからナイフを抜いてあげた。
☆
僕が君に始めて会ったのは2年前ぐらいだっけ。僕はあの街が気にいってたってほどでもないけど、ここよりはだいぶマシで。引越しなんてしたくなかったのに、それは避けられなかった。
車を使わないとお店が無いような田舎で、ふてくされていた僕は荷物を置いて早々に家から飛び出した。お母さんに早く帰ってきなさいよって言われたけど、心の中でべーっと返してやった。
小鳥が鳴くようなのどかな丘を歩いていると、森が見えてきた。遠くの方は山になっているみたいだ。本当に緑しか見えないなとため息をつく。前の家ならちょっと歩けばお菓子屋があったし、大型スーパーはいつも賑わっていた。
もう少し大人になったら、ここに来なくちゃいけなかった理由が分かるのかな?
少しだけ様子見ってことで、森の中に足を踏み入れる。中は舗道されていて、階段も作られていた。なんだか人口のものがあると冒険気分も失せる。
僕もいつまでもうじうじ反抗してるわけにはいかないから、この場所にもそれなりのいいところがあるだろうと思ったのに、この仕打ち。端っこの方に捨てられたみたいに立ち入り禁止の看板があったけど……。あーあ、秘密の場所とか、僕だけに見える妖精なんかはやっぱりないんだ。
今度は家から見えたカラフルな建物の正体でも掴んでやろうと、道を引き返そうとした。
そこで僕の視線は下に向けられる。よく見ると白いぽつぽつが辺りに散らばっている。半分埋まっていたのを拾って、土を指で落とすとそれはただの小石だった。
これも誰かが置いていったものだろう。ここで僕の頭にぴーんっと閃きが浮かんだ。
「ヘンゼルとグレーテル!」
そうだ。パンのクズをお家から帰り道が分かるように、道に落としていったんだ。と、いうことはこれを辿っていけばお菓子の家!
そこで僕は一息つく。さすがにそんなものがあるわけない。でもこの小石がずっと先まで続いていたら、何かがあるかも。それだけで好奇心を煽るには充分で、僕は歩を進めた。
誰もいない森はちょっぴり怖かった。でもまだ入ってきたところが見える。大丈夫だ。帰る時もこれを辿ればいいんだから。
小石はたまにぐちゃぐちゃに落ちていたので分かりやすいように整えながら歩くと、倍に疲れてしまった。そのうち足で土に跡がつくように、引きずって歩くようにした。
どのくらい来たのか。ちょうどいい切り株があったので腰を下ろす。足が疲れていた。
「ふぅ……こんなとこ、何もないや」
最初から分かっていたけど、少しの期待もなかったわけではない。風の音しかしない空間でしばらくじっとしていた。
ぽとりとどこかで音が鳴った。気のせいかと思いまたぼーっとしてると……ぽとり。何かが落ちる音。立ち上がって音のする方に耳を澄ませて近づく。
目の前に白い石が落ちた。僕のやつじゃない。どこかからそれが落とされているようだ。キョロキョロさせて気がついた。
いつの間にか、目の前には白い建物があった。本当に全部真っ白の。その二階の窓から、白い服を着た女の子がそれを投げているのだと気づいた。それは僕に帰れと言っているわけではなく、興味ありげにこちらに気づいて、というようなものだった。
ちょうどここが教会だと分かるのと、陽が女の子の背中に重なった時が一緒になって――そのとき僕は天使を見つけた。
「そこに行くよ!」と叫んで、入れる場所を探した。辺りは雑草だらけで綺麗とは言えなかったけど、中に入ると神聖な場所だと感じた。空気が澄んで、ステンドグラスから射す陽が綺麗で、僕は銀色の十字架に祈りを捧げた。
それから階段を見つけてさっきの子がいた場所を探す。後ろからドタドタと走る音がして振り向くと、ぎょっとしてしまった。
首が宙ぶらりんになっているクマを振り回し、包帯男みたいに白い包帯を身体中に巻いている。服の上からぐちゃぐちゃに巻いていたから、怪我をしてるってわけではないみたいだ。とにかくそのビジュアルにびっくりして尻餅をつくと、女の子はゲラゲラ笑った。はしたないし、失礼だと思ったけど、僕も一緒に笑っていた。
「こんにちは、初めまして」
「……? なんでここにいるの?」
「森の中を歩いてたんだよ。君が僕を見つけたから石を投げていたんだろ? それにしてもこんなところに教会があるなんてね」
女の子は綺麗な金色の髪をくるくるさせながら、自分の部屋に案内した。中も彼女と一緒で……僕はまたずっこけてしまった。
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