勇者と幼馴染

cocmiko

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 私、『白川光(しらかわひかり)』はある日突然、異世界の聖女として召喚された。
私を召喚した宮廷魔術師が言うには『セレスティア』では数百年に1度魔王が封印から解かれ、世界に災厄をもたらすとされている。魔王は完全消滅することは不可能な存在とされており(魔王はこの世界の負の感情の集合体であり、世界の負の感情がある一定数を超えると復活するとされている)。
この話を知るのはこの世界を内面から深く知る魔術師と外の世界からきた聖女のみである)、魔王の復活の前に神託を受けた勇者と別世界にいる聖女が召喚され、魔王を討伐するという伝説があるとされている。彼は別世界にいる聖女(男性の場合は聖者)の素質のある人物を召喚する力を持っている。
ちなみに彼曰く魔王の完全復活は半年後を目安と観測しているとのことだ。それまでに聖力のコントロールと魔王の影響を受け穢れた者たちや場所の浄化の訓練をマスターし、旅に出るとされている。


 召喚されて早々彼の指導の下、聖女として力の訓練が行われた。どうやら私の聖女としての力は以前召喚された聖女よりも強く基礎となる浄化と回復以外にも防御に特化した光魔法を持っていることが判明した。
 
 



  最終試験を乗り越え聖女として認められた後、共に旅をする勇者と初めて対面することになった。
彼の姿を初めて見たときは私は驚きを隠せないでいた。それは外見があまりにも私の幼馴染にそっくりであったことだ。髪や瞳の色は正反対だが幼馴染をコピーしたような見た目だった。思わず「えっ」漏れ出た声に勇者には少し驚かれてしまったが誤魔化した。

勇者こと『ユウ』は幼馴染と違いとても優しい人であった。慣れない旅にも私のことを気遣い、異世界の知識に無知な私にわかりやすく説明してくれたり積極的に魔物と戦い守られてばかりいる自分に罪悪感を感じたこともあった。その度に彼に申し訳ない気持ちであることを伝えると彼はいつも「自分もヒカリに守ってもらっている。自分が旅の途中で病に侵されても助けてくれたり、自分にできないことをしてくれてとても感謝している。」あまりにも幼馴染と性格が違いすぎて彼に少し心を奪われそうな自分がいた。





 様々な出会いと別れ、困難を乗り越え、幾度も魔物の血を浴び、聖女の力と勇者の力が1つとなり──ついに魔王は滅んだ。



 魔王討伐の旅が終わり、気が付いたら異世界転移してから1年半経過していた。
国では魔王が消滅し平和が訪れたことに国中でお祭りと私とユウの祝賀パーティーとパレードが行われた。慣れない祝賀パーティーが終わり、用意された部屋で少し落ち着いたときに宮廷魔術師が私の元に訪れた。彼は「魔王討伐おめでとう」という言葉と共に「任務を終えた聖女は自分の世界に帰れる」ことを話してくれた。
 
「私・・・帰れるの?確か召喚される前に爆発事故に巻き込まれはず・・・。」

私はここに召喚される前、バイトの帰り道の繁華街ビルの爆発事故に巻き込まれていたことを思い出した。


「それについては安心してほしい。私の魔法の力で魂のみ転移し、体の方は保護魔法かけたから現状無傷の昏睡状態になっているよ。あとこっちでは1年半経過してるけど向こうは7日間しか経過してないよ。」

そのことに私は安堵したが、どこか帰りたくない気持ちもあった。彼はそれを察したのか「勇者のこと気になっているのかい?」と見抜かれてしまった。
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