はりぼてスケバン

あさまる

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鼬原華子は、目の前の惨劇にただただ唖然とするしか出来なかった。
しかし、この惨状を作り上げたのは彼女自身だ。

「あっ……。い、いや……その……わ、私は……。」
頭が真っ白になる。
辛うじて出た声は、続かない。

その場にいる全ての者が彼女を見た。
彼女の一挙手一投足に注目したのだ。

後悔先に立たず。
これは、まさに今の彼女の為にある言葉と言っても過言ではないものであった。


時間は数時間前に戻る。


華子は病弱で、中学生生活をまともに過ごせなかった。
それでも登校すれば、その一日一日を必死に生きていた。


憂鬱な気分とどこか期待する気持ち。
真逆な感情が、彼女の心を支配していた。

真新しい制服を着る。
真っ黒なブレザージャケットに、同じく黒いスカート。
そして、灰色のリボンだ。

これから三年間この制服と過ごしていくことになるだろう。
自身の成長を加味し、やや大きめに拵えたそれを着ている。

自身の部屋の隅にある姿見を見る。
この制服のデザインを担当した者は、もう少し明るいデザインが思い付かなかったのだろうか。
それが、これを最初に見た時から一貫している考えだ。

自身の姿が眼鏡越しに見える。
皺はおろか、汚れ一つない綺麗な制服。
そして、それを身に纏う自身の浮かばない表情。
なんともミスマッチだ。

今日は、彼女がこれから通うこととなる高校の入学式の日だ。
窓の外からはヒラヒラと桜の花弁が舞っている。
それは、彼女の門出を祝っているかのようだった。

「……く、クヨクヨしてても仕方ないっ!」
パチン!
自身の両頬を叩き、そんな一人言で鼓舞する華子であった。


彼女の携帯電話がブブブと鳴る。
別の高校へ入学が決まった友人からのメッセージがディスプレイに表示されていた。

橋川秋姫。
華子の中学生の時の友人だ。

その内容を確認する華子。
それは、今日から互いに別の高校へ通い、別々の道に進むが頑張ろうというものであった。
それに賛同する旨を送信し、彼女は部屋を出た。

朝の支度、朝食を済ませる。
入学式の案内、そして時刻表を何度も見比べて確認。
まだ時間に余裕がある。
華子は登校時間までワイドショーを見ていた。

内容など入ってくるわけがない。
遠くの事件より、自身の入学式。
そして、さらに言えばこの三年間の方が今の彼女にとっては重要であったのだ。
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