蟻喜多利奈のありきたりな日常

あさまる

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海部照姉妹の日常

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利奈の教室の一角。
そこに彼女らは集まっている。
そこには目的の彼女の姿と、見知った者達の姿があった。

「はぁ……本当に可愛いなぁ……もう食べちゃいたい……。最早奇跡の存在……。私のお人形さん……。」
蜜柑が、うっとりと視線の先の彼女を見ながら呟く。
そこにいたのは利奈だ。

次第に映像の中の音声が聞こえてくる。
室内の声が、彼女の耳にも届いた。

「朝までは晴れてたのになぁ……。」

「そうだね、急に雨が降ってしまったもんね。」

「うん……。」

「まるで、何らかの力で強引にねじ曲げられたみたい……。」
そう言うと、路歩子の視線が移る。
斜め上。
そこにあるのは、彼女らからは見えないはずの蜜柑の視線があった。

「……ロボっち?」

「……何でもない。」

利奈と路歩子のやりとりだ。
彼女らの言う通り、窓の外は真っ黒な雲が埋めており、大粒の雨がうるさいくらいに降り注いでいる。

「……。」
きっと、路歩子には気づかれていただろう。
しかし、そんなことはどうでも良い。
些末なことだ。
それよりも罪悪感で、利奈を見ていた蜜柑はチクりと胸が傷んだことが問題だろう。

突如降ってきた雨。
誰のせいでもないはずだ。
そのはずなのに、彼女は自分のせいだと思っていた。

本来ならば、思い上がりも甚だしいということになるだろう。
しかし、そうも言えない。

この日、確かに晴れてたし、本来その天気は今まで続くはずであったのだ。
それが、彼女がここに引き籠った瞬間にこの大雨だ。

偶然ではない。
必然の結果であるのだ。

天気を司る神。
それが、彼女の正体なのだ。


「どうしよう……私、今日は傘持ってきてないんだよね……。」

それは大変だ。
利奈がずぶ濡れで帰宅する姿など見たくない。
それに、万が一風邪でも引いてしまったら一大事だ。
そうなった暁には、きっと、錯乱してここら一帯を吹き飛ばす大嵐を呼び寄せてしまうだろう。
そんな事態は避けねばなるまい。

「大丈夫。こんなこともあろうかと、折り畳み傘を持って来てる。いざとなれば相合傘をしてあげる。」
フンス。
したり顔で鼻息荒く路歩子が言っている。

駄目だ。
罪悪感が嫉妬心へ移り変わる。

却下。
論外。
あってはならない。

「本当?ロボっちありがとう!」

「なっ!?」
利奈の返答に、つい声が出てしまう蜜柑。

これはまずい。
これも駄目だ。
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