甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

文字の大きさ
上 下
73 / 154
11

11ー3

しおりを挟む
「簡単だよ、一緒に写真写って?」

そんなことで良いのか?
「え?そ、そんなことですか?」

「うん!ほら、良いでしょ?」

そんなことならば良いか。
「大丈夫ですよ。」

シュバッ!
翔子の言葉を聞くや否や、女性は翔子の真横に移動した。

カシャシャシャシャシャシャ……。
連写。
呆気に取られる翔子をよそに、自身の携帯電話で写真を撮る女性。

オロオロ。
どうしよう。
どうすれば良いのだろう。
どんな表情で写れば良いのだろう。
ただただ困惑するだけの翔子。


「……ふぅ、ありがとう。」
満足げな女性。

こんなことで良かったのか。
「い、いえ……どういたしまして……です……?」
本当にこんなことで良かったのか分からない翔子。
つい語尾が上がり、疑問文のようなものになってしまった。

「さっ!買い物買い物っ!」

「え、でもっ、そんな……。」
こんなことで服を買ってもらう訳にはいかない。
依然としてオロオロしている翔子。

「もー!ほら、行くよっ!」
先ほどよりも強引に翔子を連れていく女性であった。


「あ、あの……あ、海部江です……。」

「……え?」

「あ、海部江翔子って言います……。その……私の名前です……。」

歩き始め、無言になっていた。
その空気に耐えられなくなった翔子。
なぜか自己紹介をし始めた。

「び、びっくりしたぁ……。そっか、翔子ちゃんか。」
ふふふ。
目を真ん丸に見開く女性。
そして、微笑みながらそう言った。

「は、はい。翔子です。」

「なら私も自己紹介しないとだね。私は風野あずみ、春部大の二年生だよ。よろしくね、翔子ちゃん。」
にっこり。
あずみは微笑みながら翔子へ言った。

「はい、風野先輩。よろしくお願いします。」
あずみにつられ、微笑む翔子であった。

「……。」

「と、どうしました?」
急に無言になるあずみ。
そんな彼女を見て不安になってしまった翔子が焦りながらそう言う。

「へ?あっ、いや、な、何でもないよ?」
オロオロ。
先ほどまでの翔子のように慌ててしまうあずみ。
その顔は真っ赤になっている。

「そ、そうですか?」
とても何でもないようには見えない。
翔子がそのような質問をする。

「うん、そうだよ。大丈夫、大丈夫。大丈夫だからっ!ね?ほら、早く服を買いに行こう!」
やはり力技。
これ以上質問は受け付けないという様子のあずみであった。
しおりを挟む

処理中です...