はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
86 / 118
7

5

しおりを挟む
今、目の前にいるお前がその何かのイベントとやらだ。
自身のルックスを俯瞰して評価することが出来ないのだな。
つい、胸中で突っ込んでしまう華子であった。


「う、うわー……入りづらいなー……。」
少し離れた場所。
ボソリと呟く声。
それは、秋姫のものであった。

待ち合わせの時間が刻々と近づいて来る。
足踏みしている場合ではない。

自身の頬を叩き、気合いを入れる秋姫。
そして、その人混みの中へと飛び込んで行くのだった。


「……うわっとと……危なっ……。と、通して下さーい。」
少しずつ進む。
しかし、押し戻される秋姫。

牛歩。
それでも尚、諦めずに進んで行く。

以後その繰り返し。
揉みくちゃにされながら、ようやく二人の元へと辿り着いた時には、ボロボロになっていた。


「……ご、ごめん……遅くなった……。」
肩を大きく上下に揺らし、額から大粒の汗を流している。
必死に声を振り絞り、秋姫が謝罪する。

「い、いや……取り敢えず何か飲み物でも飲む?」

「……一旦どこか落ち着いた場所にでも……。」

流石に秋姫の様子が心配になったのだろう。
二人が彼女にそんな声をかける。

「ご、ごめん……ありがとう……。」
二人の好意に甘えることとしよう。
苦笑いで返事をする秋姫であった。


「……。」

「しかし、こんな都会に来たのは久しぶりだな。」

「そうなんだー、なら色々見ようね。」

「……。」

気まずい。
二人の輪に入れない。

隣合って歩く亥玄と華子。
その後ろを着いて行く秋姫。
二人へ話かけ辛く、居心地が悪かった。

周辺の視線と声が今も尚二人へ向けられる。
どれもこれもが褒め称えるものであった。


ようやく秋姫の一息つける場所へと辿り着いた。
全国チェーンのカフェだ。

二人の後ろから店内へ入る秋姫。
しかし、彼らが立ち止まってしまい、見事に華子の後頭部に自身の鼻をぶつけてしまった。

「……痛っ……て、どうしたの?」
二三歩程の後退。
秋姫は想定外の痛みに涙目になってしまった。

「い、いや……その……勢いで入ったは良いものの……。」

「注文の仕方がさっぱり分からん。」

しどろもどろな華子。
そして、堂々としている亥玄。

「……あはは、なら私がまとめて注文してくるよ。」
苦笑い。
秋姫が言った。


店員のいるカウンターへ向かう秋姫。
そして、先に席へと向かう華子と亥玄。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

わたし

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

異世界に跳べない俺は今日も近所の居酒屋でアルバイトをする。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

社会の落ちこぼれから最強パーティーのリーダーになるお話

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

処理中です...