はりぼてスケバン弐

あさまる

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「秋姫がいて良かったね。」
チェアー型の椅子に腰掛け、華子が口を開く。

「……まぁ、俺はこんな小洒落た店に来たことはなかったからな。お前はこういう場所なれてるもんだと思ってたから……意外だな。」
ふふふ。
華子の見たことのない微笑みを見せる亥玄。
何だかんだ言って、彼も楽しんでいるようだった。

「そうかな?私……秋姫の後ろに着いて行ってばっかりだったし、こういうところは苦手だったから……。」

「そうか。」

「……何その返事ー。嘘でももっと興味あるフリしてよー。ほらほら、黒校の頭の自分語りだよー?」
ぶーぶー。
不貞腐れた様子で華子が言う。

「……別に興味がないわけではないが……。」

「えー?本当ー?」

「本当だ。」

「本当に本当?」
ニヤニヤ。
ここが攻め時。
そう思った華子が彼へと詰め寄る。

「……う、うるさい。」

「ふふふ、番長は寛大だから見逃して上げるよ。」

「はいはい、お二人さん、お待たせしましたよー。」
三人分の飲み物を持ち、秋姫がやって来た。
それぞれ異なるものであった。

「ありがとう、いくらだった?」

「こちらもいくらか教えてくれ。」

「いや、大丈夫。私の奢りってことで。」
各々の前に飲み物を差し出しながら秋姫が言う。

「いや、そういうわけにはいかないだろ。」

「そうだよ、秋姫。これで足りる?」

二人が財布から千円札を取り出す。
しかし、秋姫は依然として拒否している。

「これは……その……今までの贖罪というか、その……。」
ボソボソ。
呟くように話す秋姫。

「……しょ、食材?もう調理されてない?」

「いや、待て、鼬原。飲み物は調理と言うのか?加工ではないのか?」

「……。」
駄目だ。
この二人には、通じないようだ。
苦笑いするしか出来ない秋姫であった。

自身の嫉妬心から取り返しのつかない過ちを犯してしまった。
もちろん、こんなもので償えるとは思ってはいない。
しかし、少しでも華子の為に何かをしたいと思った。

全てを打ち明けた。
自身の黒く醜い部分も曝け出した。

「……。」

「……。」

何かを思案している華子。
そして、何を考えているか分からない亥玄。

恐い。
逃げ出したい。

今回、華子を遊びに誘った目的はこれだ。
懺悔だ。
しかし、やはりいざこうして実際に行動すると、恐くて堪らない。

「えっと、秋姫?」
華子が口を開いた。
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