はりぼてスケバン弐

あさまる

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「あぁ、いや……私にとっても授業の復習になるなーって。ほら、よく言うでしょ?人に教えると自分の復習になってより理解出来るって。」
所謂反芻というものだ。
テレビで見齧った程度の知識を華子が言う。

「そ、そっちっすか……。」
がっかり。
丸雄が苦笑いする。

「え?どういうこと?」
いまいち彼の言葉の意味が分からない。

「いや、何でもないっす……。姐さんは姐さんだったってことっす。」

「……?」
意味不明。
それに、何でもないわけがない。
しかし、きっとこれ以上追及しても口を割らないだろう。
華子は、この話題をこれで終わりにすることにした。


「あー……飽きたっす……。」

「え?また?」

先ほどと同じやりとり。
しかも、それから三十分も経っていない。
流石に華子も嫌になってくる。

「だって飽きたんっすもん……。」

「……そうは言ってもなぁ……。」
彼の集中力のなさに関しては些か不服ではあるものの、華子も少なからず手持ち無沙汰となっているのは事実だ。
彼に少しばかり肩入れしてしまう。
しかし、だからといって中断するわけにはいかない。

「……。」
懇願するような視線。
丸雄が、そのニックネームに引けを取らない柴犬のような庇護欲をかき立てられるようなものを華子へ向ける。

「何かないっすか?」

「何かって……何?」

「例えばご褒美とは……どうっすか?」

「ご褒美かー……うん、良いよ。」
どうせ、丸雄のことだ。
ジュースや昼食を奢れくらいのものだろう。
安請け合いする華子。

その時の彼女はうっかり見逃してしまった。
丸雄がこっそりと、ニヤリとほくそ笑んでいた。
まるで、それは作戦通りと言わんばかりのものであった。

今日復習した中から抜粋し、小テストを即席で華子が作成。
そして、それを丸雄が解いていく、という形式だ。

思えば、華子はこの時に疑うべきであった。
面倒だ、面倒だとずっと言っていた彼が、こうもあっさりテストを行うことを受け入れたのだ。
勝算があるに決まっている。


数十分後。
丸雄から用紙を受け取り、華子が答え合わせを行い終えた。

「……う、嘘でしょ……?」
驚愕の声を上げる華子。
彼女の目線の先あるのは、もちろん採点後のテスト用紙だ。

正解と不正解。
割合でいえば、正解の方が多かったのだ。

それも、僅差ではない。
圧倒的に正解数が多かったのだ。
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