はりぼてスケバン弐

あさまる

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「ふふーん、どうっすか、どうっすか?」
ニヤニヤ。
この結果は当たり前だ。
そう言わんばかりの丸雄が、小憎たらしくほくそ笑んでいる。

「い、いや……凄い良い点数……だけど……。」

「だけど?どうしたっすか?」

「う、うーん……。」
納得出来ない。
華子はつい、唸り声を出してしまう。

確かに、理不尽に難しい問題などではない。
しかし、かといって簡単なわけでもなかったはずだ。
今までの彼の理解度、そしてこれまで聞いていた彼の成績でこのような点数など取れるわけがないのだ。

「もー、だったら早くご褒美ちょうだいっすよー。」

「で、でも……おかしいよ!」

「え?何がっすか?」

「だ、だって藤柴君がこんなに正解するなんておかしいじゃん!」

「おかしくないっすよ?」

「え?」

「だって、今まではわざと成績下げるようにしてたんっすもん。」

「……っ!?ど、どういうこと!?」
つい、声が大きくなる。

今までの会話の積み重ね。
それに加えてこの一撃。

司書の咳払い。
そして、一睨み。
それは華子達へ向けられた警告であった。


「……ね、ねぇ、どういうことなの……!?説明してよっ……!」
忠告があった。
流石にそれを無視出来ない。
華子が小声でこっそりかつ、感情的にはっきりと丸雄へ質問をぶつける。

「黒校の生徒が高成績だなんてみっともないじゃないっすか。」

「え?……?……は?」
思考。
駄目だ。
考えても一切分からない。
あまりにも理解の範疇を越えている。
脳がショートしそうだ。

「さ!さささ、ご褒美!ご褒美っす!」
ここが攻め時。
丸雄がこの勢いのまま押し込もうとする。

「ハイ。」
完全敗北。
これで二連敗の華子。
思考が出来ず、ただ返事をするのみの存在と成り下がってしまっていた。

「何が良いかなー、ご褒美……楽しみっすね、姐さん?」

「ハイ。」

「姐さん?」

「ハイ。」

「今日、良い天気っすね。」

「ハイ。」

「今日のデート、楽しいっすね。」
ニコニコ。
本心なのだろう。
そう言う丸雄は笑顔だ。

「ハイ……え?何て?」
今何て言った?
聞き返す華子。
しかし、それを追及することは出来なかった。


ぐうー……。
静かな室内。
その中で響く音。

「え?……ね、姐さん……?」
丸雄の視線が、手元のノートから目の前にいる華子へと向けられる。
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