あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「……全く、どこかの馬鹿のせいでかすみに逃げられちゃったじゃない。」

「本当に、馬鹿なチビのせいで私のかすみが逃げてしまいました。これ以上不快なことはないでしょうね……。」

「……私の?お前のじゃない、私のかすみだ。」

「……。」

「……。」

ギロリ。
睨み合う二人。
先ほどまでも言い争っていた。
しかし、今の雰囲気はそれまでのものとはまるで違うものであった。

「……夜覚えておけよ?」
今までの大人しく可愛らしい声からは考えられないドスの効いたものがゆかりの口から飛び出た。

「まぁまぁ……お婆さんは短気で恐いですね……。何されるか分かったもんじゃありません。」
挑発するエル。
その瞳は妖しく輝き、狂気じみた印象を与える。

お婆さん。
ゆかりの先輩であるエル。
そんな彼女がゆかりのことをそう呼んだ。
しかし、ゆかりもそれに対して言及することはなかった。


しばらく無言の睨み合いが続く。
しかし、それも数分で終わり、二人は無言で歩き始めた。
ゆかりは元来た道を、エルはかすみが向かった方へと歩いて行った。


既に疲労が溜まっているかすみ。
なんとか教室に入り、授業の準備をしていた。

昼休みまではゆっくり出来るだろう。
そんなことを思っていた。

授業を受け、放課には次の時限の用意をする。
その繰り返し。

徐々に体力が回復していくかすみ。
しかし、それもすぐに消費してしまうこととなる。


昼休み。
かすみの教室中に響き渡る声。
「かすみさん!」

そして、静かに届く耳を癒す声。
「……かすみちゃん。」

「……うん、来てくれてありがとう。今行くね。」
微笑むかすみ。
その笑みには、少なからず疲労が見えていた。
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