あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「ようやく帰って来られた……。いやー、長かった……と言うか、なかなか進めなかった……。」

とある駅。
いくつもの路線があり、人々が行き交う賑やかな場所。
その中で、一際目立つ少女。
彼女がぽつりと呟いた。

眼鏡にマスク。
おまけに真っ黒なストローハット。

彼女の顔の大半は隠れている。
コロコロとタイヤを転がすキャリーバックは高額で高品質なものだ。
それらのせいか、何者かは分からないが、そのただならぬ者のオーラは隠しきれていない。

本人にそのつもりがあるのかは分からない。
しかし、注目の的であった。
そうなれば、彼女が何者なのか気づく者も出てくる。


「あっ、あのっ!すみません!」
声をかけられる。

「はい?」

「そ、その……女優の城原美咲さんですか!?」
彼女を呼び止めたのは、中学生くらいの少女二人組であった。

あぁ、またか。
しかし、対策法はある。
「いえ、違いますよ?」

その堂々とした返答。
その圧に、質問した方がついたじろいでいまう。

「え?そ、そうですか……。すみません……。」

「いえ、構いませんよ。では私はこれで……。」
マスクの中でにっこりと微笑む。
そして足早に移動するのであった。

背中に彼女らの声を聞きながら進む。
危ない、危ない。

「今は女優じゃなくて、プライベート、学生の白原美咲だからね……嘘はついてないから……。」
ふふふ。
ひとり言を呟く美咲であった。

肯定してはいけない。
そうすれば、たちまち人が集まり歩けなくなってしまう。
そのせいで、何度も飛行機や電車に乗り遅れてしまった。
もうそんな失敗を繰り返すわけにはいかない。


目的地を再度確認。
ようやく日本へ帰って来れた。
ようやくあの場所へ戻れるのだ。
これ以上無駄なことは出来ない。

「待っててね……私の……私だけのお姫様……。」


所変わり、かすみの家。
授業が終わり、過去のアルバムを再度探していた。

万が一。
万が一にも、彼女らの写真がどこかから出ると思ったのだ。

結果。
収穫はゼロ。
彼女らとの思い出は何一つ出て来なかった。


ピンポーン。
インターホンの音が鳴る。

誰だろうか?
いや、誰が来るかなど、本当は彼女自身分かっている。
しかし、認めなくないのだろう。

玄関へ向かい、ドアアイを見る。
そこにいたのは、エルであった。
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