蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

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蟻喜多利奈の、自称ありきたりな夏休み

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夏休み。
学生の気分が一番上がるであろう時期。
そんな休暇が数日経過した頃。

「……あー……暑いー……溶けるー……いや、これはもう溶けてるなー……確実に溶けていってるよ……。なんか身体が水になってて蒸発してる気がしてるもん……うん、溶けてる。」
ドロリとまるでスライムが溶けているかのように寝転がっている少女。

蟻喜多利奈。
平盆高校に通う一年生だ。

もちろん、実際に溶けているわけでも蒸発しているわけでもない。
しかし、そう言ってしまうほど、今日の気温は異常だったのだ。

ジリジリと照りつける太陽。
そして、周囲で無数に鳴く虫の騒音。
不快指数の高いそれらを避ける為、彼女は今自宅にいた。

窓を閉めた室内で、クーラーの冷風が周囲を包んでいる。
そして、扇風機は首を降らず、彼女に直接当たるようにしていた。
そのお陰で辛うじて生きているようだった。

何か飲み物でも飲もうか。
しかし、冷蔵庫まで歩くのも億劫だ。
今少しでも動けば汗が身体中から噴き出てしまうだろう。
それでも冷蔵庫まで向かい、何か水分を接種しないと干からびてしまう。

カリカリになって良い出汁が出るようなものになってしまうだろう。
そんな下らないことが利奈の脳裏を駆け巡る。

もちろん、そんなこともあり得ない。
これもまた、比喩表現だ。
これもまた、暑さのせいだろう。

四季があるというのは良いことだ。
移り行く季節を楽しめる。
それぞれに、違った良いところがある。
しかし、そうは言っても限度があるだろう。

今日は、夏とはいえ非常に暑い。
それに、冬も酷く寒い時が多々ある。
春と秋は気温はちょうど良いが、今度は多量の花粉に悩まされる。

贅沢なことだが、夏は冬が恋しくなり、冬は夏が恋しくなる。
春と秋は、ズビズヒと鼻をすすりながら花粉が収まるのを待っている。

それにしても暑い。
暑過ぎる。
もしかすると、本当にこのまま溶けてしまうのではないか。

何度目になるか分からないが、もちろん、そんなことはあるわけがない。
暑さで正常な考えが出来ない利奈は、そんな馬鹿なことを考えていたのだ。


チラリ。
携帯電話を見る。
間もなく正午。
そろそろか。

利奈は、ある約束をしていた。
インターホンか鳴る。

動きたくない。
しかし、応対しないわけにもいかない。

「……よいしょっと……。」
のそのそと重い身体で玄関へ向かう。
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