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郡選び
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入学式が終わった後、レニアは式について来てくれたリーサと少し話せないかと思ったが、一年生は二人の教師に連れられて大広間を退場し、半数に分かれて、それぞれ左側と右側にある階段を上がって行った。
何階まで登るんだろうと、彼女が思い始めたところで階段の先が見えなくなった。
どうやら、最上階まで登って来たらしい。最上階の八階は今まで登って来た階に比べ、少し狭かった。
レニアがそう思ってしまう理由は、彼女たち新入生の前に真っ白い壁が先を塞ぐように立ちふさがっていたからだ。
その閉塞感に圧迫されているみたいに感じる。まっさらな壁には茶色のドアが二つだけ付いていた。
教師はそれぞれドアの前に立ち、レニアたちの方を引率してきた先生が口を開く。
濃紺の立派に見える服を着た、知的そうに見える先生だ。
「入学おめでとう、諸君。
さて、これからのことだが、君たちにはまず三つのグループに分かれてもらう。
本校ではこのグループのことを郡と呼び、六年間その郡で過ごしてもらう。
郡はそれぞれ、アリシオ郡、ステマラ郡、ソレイユ郡と呼び、寮の中でも学校行事でも郡の中で行動してもらう。
諸君にはこの先に進み自分にあった郡を選びとってもらいたい。
ドアの先に進んでからは先生方がいるので心配はない。
少し暗いかもしれないがまっすぐに進みなさい」
先生は一気に言うと隣の教師と一緒にドアを開けた。
一年生は一人、また一人と素直に中に入っていく。順々と一年生が減っていき、レニアもドアの中に入った。
そこは少し暗いだけでは言い足りないほど暗かった。
自分の手足が何とか見える程度で、先生がいるはずなのにどこにも見えない。
というよりも、人の気配がしない。
あれほど次々と一年生が入っていたのに、レニアの前に後ろにも同じ一年生の姿はなかった。不思議に思いながらも彼女はまっすぐ進んで見る。更に少し進んだところで、
「あー、そこで止まって」という声がした。
レニアは素直に声に従った。
暗いので足元を見ていた顔をあげると、目の前には若い男性教師が椅子に座り、木製の机に肘を掛けて現れた。
「おや、あんまり驚かないね」
その教師は残念とも感心ともどちらともいえないような声で言った。
レニアはどう返していいか分からず、ただ頷いただけだった。
「えー、まずは入学おめでとう。君を歓迎するよ。何をするか説明は聞いているよね?
じゃあ、名前を言ってもらおうか」
「レニア・キーファアルドです」
「えー、キーファアルド、キーファアルド…
もしかして、在校生の兄弟がいる?」
教師は名簿らしき紙を探りながら、思いついたように聞いた。
「えぇ、兄が一人」
「そうか、君はクレンの妹か。
なるほど、じゃあ大方予想がつく。
ではレニア、ここにあるある三つの箱の中から君が取りたいものを選びなさい」
教師は机の上にある三つの立方体を指した。形も大きさを同じで選び方が分からない。
レニアは少し戸惑った。
「あ、開けちゃだめだよ。
外箱だけで選ぶんだ。
大丈夫、手が自然と伸びるのを取ればいい」
レニアは余計に困ったが、一番左端の箱に決めた。
手がというより、自然と目についた箱だ。
レニアが箱を手に取ると、教師は「開けてみ」と促した。
彼女が蓋を開くと丸い薄っぺらい形の物が入っていた。
全体的に青色で表面は銀の装飾が施され、真ん中に銀色の三日月があった。
蓋が開けられるようになっていて、開けてみたら鏡だった。
「鏡です」
レニアは短く答えた。
教師は満足気に笑う。
「どうやら君はアリシオ郡みたいだね。
その鏡はアリシオ郡である証拠さ。
それがないと君は寮に入れないから、無くしてはいけないよ。
出口は私を越えて真っ直ぐに行ったところにある。
それじゃあレニア、今度は教室で会おう」
教師に軽く手を振られ、レニアはまた暗い中を歩き始める。
途中で振り向くとあの教師は机ごと消えていた。
レニアはさして気にせず歩き続ける。目の前に長方形の光が見えたので出口だなと思った。
何階まで登るんだろうと、彼女が思い始めたところで階段の先が見えなくなった。
どうやら、最上階まで登って来たらしい。最上階の八階は今まで登って来た階に比べ、少し狭かった。
レニアがそう思ってしまう理由は、彼女たち新入生の前に真っ白い壁が先を塞ぐように立ちふさがっていたからだ。
その閉塞感に圧迫されているみたいに感じる。まっさらな壁には茶色のドアが二つだけ付いていた。
教師はそれぞれドアの前に立ち、レニアたちの方を引率してきた先生が口を開く。
濃紺の立派に見える服を着た、知的そうに見える先生だ。
「入学おめでとう、諸君。
さて、これからのことだが、君たちにはまず三つのグループに分かれてもらう。
本校ではこのグループのことを郡と呼び、六年間その郡で過ごしてもらう。
郡はそれぞれ、アリシオ郡、ステマラ郡、ソレイユ郡と呼び、寮の中でも学校行事でも郡の中で行動してもらう。
諸君にはこの先に進み自分にあった郡を選びとってもらいたい。
ドアの先に進んでからは先生方がいるので心配はない。
少し暗いかもしれないがまっすぐに進みなさい」
先生は一気に言うと隣の教師と一緒にドアを開けた。
一年生は一人、また一人と素直に中に入っていく。順々と一年生が減っていき、レニアもドアの中に入った。
そこは少し暗いだけでは言い足りないほど暗かった。
自分の手足が何とか見える程度で、先生がいるはずなのにどこにも見えない。
というよりも、人の気配がしない。
あれほど次々と一年生が入っていたのに、レニアの前に後ろにも同じ一年生の姿はなかった。不思議に思いながらも彼女はまっすぐ進んで見る。更に少し進んだところで、
「あー、そこで止まって」という声がした。
レニアは素直に声に従った。
暗いので足元を見ていた顔をあげると、目の前には若い男性教師が椅子に座り、木製の机に肘を掛けて現れた。
「おや、あんまり驚かないね」
その教師は残念とも感心ともどちらともいえないような声で言った。
レニアはどう返していいか分からず、ただ頷いただけだった。
「えー、まずは入学おめでとう。君を歓迎するよ。何をするか説明は聞いているよね?
じゃあ、名前を言ってもらおうか」
「レニア・キーファアルドです」
「えー、キーファアルド、キーファアルド…
もしかして、在校生の兄弟がいる?」
教師は名簿らしき紙を探りながら、思いついたように聞いた。
「えぇ、兄が一人」
「そうか、君はクレンの妹か。
なるほど、じゃあ大方予想がつく。
ではレニア、ここにあるある三つの箱の中から君が取りたいものを選びなさい」
教師は机の上にある三つの立方体を指した。形も大きさを同じで選び方が分からない。
レニアは少し戸惑った。
「あ、開けちゃだめだよ。
外箱だけで選ぶんだ。
大丈夫、手が自然と伸びるのを取ればいい」
レニアは余計に困ったが、一番左端の箱に決めた。
手がというより、自然と目についた箱だ。
レニアが箱を手に取ると、教師は「開けてみ」と促した。
彼女が蓋を開くと丸い薄っぺらい形の物が入っていた。
全体的に青色で表面は銀の装飾が施され、真ん中に銀色の三日月があった。
蓋が開けられるようになっていて、開けてみたら鏡だった。
「鏡です」
レニアは短く答えた。
教師は満足気に笑う。
「どうやら君はアリシオ郡みたいだね。
その鏡はアリシオ郡である証拠さ。
それがないと君は寮に入れないから、無くしてはいけないよ。
出口は私を越えて真っ直ぐに行ったところにある。
それじゃあレニア、今度は教室で会おう」
教師に軽く手を振られ、レニアはまた暗い中を歩き始める。
途中で振り向くとあの教師は机ごと消えていた。
レニアはさして気にせず歩き続ける。目の前に長方形の光が見えたので出口だなと思った。
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