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武術学校ギリカ・カーレ
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剣と魔術の名門ギリカ・カーレの校舎は首都ソルシアナの外れに位置している。
外れといってもこの国で一番賑わいがある場所の圏内なのでそこまで閑散としている訳ではない。
先端が槍のように尖った高い鉄柵の隙間から見える中の風景は広々としていて生徒たちにとって充実した環境がそこにあるのが想像された。
鉄柵よりも少し高く、校門にあたる正門の扉はシンプルだが装飾が施され、名門校の威厳を醸し出していた。
今日はその扉が大きく開かれ、真新しい制服を着た新入生とその保護者と思われる父母たちがぞろぞろ門をくぐっている。
新入生はみな大きな旅行鞄をぶら下げ、新調した制服では少し動き辛そうであった。
今、校門の下をくぐったレニアも例外ではなくちょっとした動きで制服に皺が付かないか行動には細心の注意を払いつつ歩いている。
校門を抜けると目の前には噴水が見えた。その噴水から先は校舎へと続いている。
校舎の前では何人か在校生が待ち構えており、新入生がそれぞれ持っている鞄を預かっては校舎とは別の建物へ運んでいた。
おそらく寮へ運んでいるのだとレニアは思い至る。彼女も校舎の前で鞄を渡して、自分の氏名を名乗ってから校舎へ入った。
その時に校舎二階にある大広間へ行くように説明されたので、レニアは他の新入生たちが二階へ移動する流れに付いて行く。
階段の前や途中では在校生が立って新入生が迷わないように手で行き先を示していた。
二階の大広間は入学式ように綺麗な飾り付けが施されていた。
白い壁には紺色の布がレースのように飾られ、それを金色の球体で留めてあった。
天井には見たことがない位大きいシャンデリアがぶら下がり、大広間の一番奥の壁にはギリカ・カーレの校章とレミルド連合王国の国旗が貼られている。
ギリカ・カーレのGと、一本の剣に全く同じ形大きさの双星が入った校章は制服の左胸にも付いていた。
新入生たちはシャンデリアを見て、落ちてこないか言ったり、足元の絨毯が上等そうなのをしげしげと見つめていた。
大広間の前半分を占めていた席が全部埋まったことで新入生が全員揃ったことになる。
すると、一人の男性教師が新入生の一番前列左端に座っている金髪の男の子に声をかけた。
明るい金髪が耳を隠すように覆っていて、髪型だけならショートカットの女の子みたいな感じだった。
彼は教師から筒状に丸められたら紙を受け取っていた。
教師から直々に声をかけられたのは彼一人だったので、その存在は新入生に異様な静けさをもたらす。
そのまま静けさを保つこと十分程したら在校生やその他の教員、後に続いて保護者が入ってきた。
また、静寂が訪れたことで入学式が始まった。
正直、入学式は卒業式ほど感動的ではないとレニアは小級学校の経験から思っていた。
だから、退屈なのはありのままの感想を述べている。
名門ギリカ・カーレの入学式といえども他校と大きく変わることはない。
それでも彼女が驚いたのは、入学式に国王代理として国の大臣が出席していたことと、ギリカ・カーレの校長ラドラ・ピポラグットがあの大きな国旗と校章を背景にしてもちっぽけに見えない威厳と迫力を備えていたことだ。
そこはさすがと言うべきところであるが、レニアはもっと驚くべきものを入学式で目にした。
式の最後には新入生の一人が代表して入学への誓いを言う場面があった。
その誓いを言うのは直前に紙の筒を渡されたあの少年である。
彼は壇上へ上がったが、手には何も持っていなかった。
そのまま校長と横顔を見せるかたちで向かい合う。
彼が校長に一礼して両手を胸の前で肩幅より少し狭く広げると、先程の筒状の紙がなんと彼の両手の間に現れたのだ。
一人でに結ばれていたリボンが解かれ、紙が広がり、彼が持てる状態になる。
彼は何事もなかったように紙を持ち、壇上で誓いを言おうとした。
レニアと他の新入生たちは呆然と眺め続ける。退屈だと感じていた彼女には目が覚めるほどの光景だった。
会場が緊張感に包まれるなか、凛としているがどこか柔らかくも感じる声が響いた。
「私たち新入生一同は本日よりギリカ・カーレ第三十九期生として迎え入れていただくにあたり、己の中にある剣を磨き、古代レミルド人から受け継いだ魔術の力を高め、栄えある本校の歴史を連ねられるよう、武術と魔術に精進することをここに誓って、誓いの言葉とします」
言い終わり、代表の男の子が一人でに元の筒状に戻った紙を渡そうとし、校長の片手が紙の先端に触れた途端、紙の両端が光始め、眩しい粒子になっていく。
そのまま全て消えてしまうのかと思いきや、端から来た二つの光が合体し、周りに散らばっていた光の粒子が集まり始めた。 粒子は片手でなんとか持てる球体を作り出し、徐々に球体は青色に染まっていく。
完全に青く綺麗な球体ができあがると、その球体は青い粒子を散りばめながら天井のシャンデリアへと飛んでいった。
シャンデリアはよく見ると六つの球体がはめ込める小さな台座があり、そのうちの空席の台座に青い球体が収まった。
全ての球が揃い、シャンデリアは本来の輝かしさを取り戻したようにきらびやかに光る。
赤、青、緑、黄、紫、橙の六色の中で青色の球体は最も輝いて澄んでいた。
深海の一滴をすくったような美しさに新入生のみずみずしさが映し出されているようだ。
「今年の一年生のカラーは青ですな。いや、若々しくて清々しい色です。素晴らしい!」
校長が一言発した後に続いて会場から拍手が湧き上がる。
代表の彼は校長に一礼、拍手の中を自分の席まで戻った。
始まりから一変した雰囲気に無事ギリカ・カーレの入学式は終了を告げる。
外れといってもこの国で一番賑わいがある場所の圏内なのでそこまで閑散としている訳ではない。
先端が槍のように尖った高い鉄柵の隙間から見える中の風景は広々としていて生徒たちにとって充実した環境がそこにあるのが想像された。
鉄柵よりも少し高く、校門にあたる正門の扉はシンプルだが装飾が施され、名門校の威厳を醸し出していた。
今日はその扉が大きく開かれ、真新しい制服を着た新入生とその保護者と思われる父母たちがぞろぞろ門をくぐっている。
新入生はみな大きな旅行鞄をぶら下げ、新調した制服では少し動き辛そうであった。
今、校門の下をくぐったレニアも例外ではなくちょっとした動きで制服に皺が付かないか行動には細心の注意を払いつつ歩いている。
校門を抜けると目の前には噴水が見えた。その噴水から先は校舎へと続いている。
校舎の前では何人か在校生が待ち構えており、新入生がそれぞれ持っている鞄を預かっては校舎とは別の建物へ運んでいた。
おそらく寮へ運んでいるのだとレニアは思い至る。彼女も校舎の前で鞄を渡して、自分の氏名を名乗ってから校舎へ入った。
その時に校舎二階にある大広間へ行くように説明されたので、レニアは他の新入生たちが二階へ移動する流れに付いて行く。
階段の前や途中では在校生が立って新入生が迷わないように手で行き先を示していた。
二階の大広間は入学式ように綺麗な飾り付けが施されていた。
白い壁には紺色の布がレースのように飾られ、それを金色の球体で留めてあった。
天井には見たことがない位大きいシャンデリアがぶら下がり、大広間の一番奥の壁にはギリカ・カーレの校章とレミルド連合王国の国旗が貼られている。
ギリカ・カーレのGと、一本の剣に全く同じ形大きさの双星が入った校章は制服の左胸にも付いていた。
新入生たちはシャンデリアを見て、落ちてこないか言ったり、足元の絨毯が上等そうなのをしげしげと見つめていた。
大広間の前半分を占めていた席が全部埋まったことで新入生が全員揃ったことになる。
すると、一人の男性教師が新入生の一番前列左端に座っている金髪の男の子に声をかけた。
明るい金髪が耳を隠すように覆っていて、髪型だけならショートカットの女の子みたいな感じだった。
彼は教師から筒状に丸められたら紙を受け取っていた。
教師から直々に声をかけられたのは彼一人だったので、その存在は新入生に異様な静けさをもたらす。
そのまま静けさを保つこと十分程したら在校生やその他の教員、後に続いて保護者が入ってきた。
また、静寂が訪れたことで入学式が始まった。
正直、入学式は卒業式ほど感動的ではないとレニアは小級学校の経験から思っていた。
だから、退屈なのはありのままの感想を述べている。
名門ギリカ・カーレの入学式といえども他校と大きく変わることはない。
それでも彼女が驚いたのは、入学式に国王代理として国の大臣が出席していたことと、ギリカ・カーレの校長ラドラ・ピポラグットがあの大きな国旗と校章を背景にしてもちっぽけに見えない威厳と迫力を備えていたことだ。
そこはさすがと言うべきところであるが、レニアはもっと驚くべきものを入学式で目にした。
式の最後には新入生の一人が代表して入学への誓いを言う場面があった。
その誓いを言うのは直前に紙の筒を渡されたあの少年である。
彼は壇上へ上がったが、手には何も持っていなかった。
そのまま校長と横顔を見せるかたちで向かい合う。
彼が校長に一礼して両手を胸の前で肩幅より少し狭く広げると、先程の筒状の紙がなんと彼の両手の間に現れたのだ。
一人でに結ばれていたリボンが解かれ、紙が広がり、彼が持てる状態になる。
彼は何事もなかったように紙を持ち、壇上で誓いを言おうとした。
レニアと他の新入生たちは呆然と眺め続ける。退屈だと感じていた彼女には目が覚めるほどの光景だった。
会場が緊張感に包まれるなか、凛としているがどこか柔らかくも感じる声が響いた。
「私たち新入生一同は本日よりギリカ・カーレ第三十九期生として迎え入れていただくにあたり、己の中にある剣を磨き、古代レミルド人から受け継いだ魔術の力を高め、栄えある本校の歴史を連ねられるよう、武術と魔術に精進することをここに誓って、誓いの言葉とします」
言い終わり、代表の男の子が一人でに元の筒状に戻った紙を渡そうとし、校長の片手が紙の先端に触れた途端、紙の両端が光始め、眩しい粒子になっていく。
そのまま全て消えてしまうのかと思いきや、端から来た二つの光が合体し、周りに散らばっていた光の粒子が集まり始めた。 粒子は片手でなんとか持てる球体を作り出し、徐々に球体は青色に染まっていく。
完全に青く綺麗な球体ができあがると、その球体は青い粒子を散りばめながら天井のシャンデリアへと飛んでいった。
シャンデリアはよく見ると六つの球体がはめ込める小さな台座があり、そのうちの空席の台座に青い球体が収まった。
全ての球が揃い、シャンデリアは本来の輝かしさを取り戻したようにきらびやかに光る。
赤、青、緑、黄、紫、橙の六色の中で青色の球体は最も輝いて澄んでいた。
深海の一滴をすくったような美しさに新入生のみずみずしさが映し出されているようだ。
「今年の一年生のカラーは青ですな。いや、若々しくて清々しい色です。素晴らしい!」
校長が一言発した後に続いて会場から拍手が湧き上がる。
代表の彼は校長に一礼、拍手の中を自分の席まで戻った。
始まりから一変した雰囲気に無事ギリカ・カーレの入学式は終了を告げる。
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