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6.本当の自分は
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「アルベルト王子……、大丈夫ですか?」
「どうして? 大丈夫だ」
「……この様な所、貴方の目に触れさせたくなかった」
「活気があっていいじゃないか。……ああ、窓からちょうど城の灯りが見えているね」
アルベルトが目を細めて遠くの灯りを見つめている。
「ええ、そうですね」
この灯りを見ながら、貴方を重ねて名前も知らない男と寝ていました。なんて、口が裂けても言えない。
「ここは一部屋に風呂があるのか、なかなかだな」
アルベルトは無邪気に部屋をうろうろ歩き回っている。
「……本当に護衛も付けずにここまで来たのですか?」
「ああ、そうだ。そんなに心配するな、今まで見つかったことはないし、もしも見つかっても君のことは黙っている」
「そういうことではありません、貴方の身の安全が心配なのです」
今頃、城の方では大騒ぎになっているかもしれないと冷や冷やしていたが、どうやらそんな心配はいらないようだ。
「私はそれより、君の様な男がここを出入りしていたことに驚いたよ。ルイス侯爵もだいぶ遊び慣れた方だが、これほど深い世界は知らないだろうね」
「俺は……いえ、私の様なとは、どういうことでしょうか?」
「いいよ、あまり硬くならないで。"俺"っていう君も新鮮だよ。そうだな、私の知っているネイト・ハワードは真面目でしっかり者で……後、色事に無関心なのかと思っていた。ルイス侯爵たちと卑猥な談笑しているのを聞くことがあるけど、君自身の話は聞いたことがないから」
よく見ているな、と思った。彼らの話は大抵武勇伝ばかりで、ネイトはそれに合わせて話をするのが得意だった。相手の欲しい言葉やリアクションをすればいい。聞き役に徹すれば、自分の話もしなくて済む。
アルベルトだけは例外だ。どんな顔をして、どう振舞えばいいかが全く分からない。
ーーそれもそうだ、彼に勝手な憧れを抱いてもうすぐ五年近くになるのだから。
頭の中で彼はいつでも優しく笑いかけてくれるけど、することはたったひとつ。不健全な妄想は何の役にも立たない。俺の性癖は貴方で形成されたと言っても過言ではない。
「……そんな大層な人間ではありませんよ」
「よく言う。君も大概私に夢を見ているだろう」
一瞬、頭の中を見られてしまったのか、とぎょっとした。
「君が見ている私は、ほんの一部でしかない。本当の私を知ったら、それこそ君に嫌われてしまうのが怖い」
俯きがちに薄く笑う様は、どことなく妖艶だ。安宿特有の仄暗さと埃っぽさの所為だろうか、倒錯感に溺れてしまいそうだ。
「貴方を嫌うなど、絶対にあり得ません。私は貴方のことを……」
言いかけて口を噤む。駄目だ、相当に酔っている。上手い言葉が見つからないまま、ネイトは困ったように額に手を当てた。
「……さあ、そろそろ準備をしようか」
「どうして? 大丈夫だ」
「……この様な所、貴方の目に触れさせたくなかった」
「活気があっていいじゃないか。……ああ、窓からちょうど城の灯りが見えているね」
アルベルトが目を細めて遠くの灯りを見つめている。
「ええ、そうですね」
この灯りを見ながら、貴方を重ねて名前も知らない男と寝ていました。なんて、口が裂けても言えない。
「ここは一部屋に風呂があるのか、なかなかだな」
アルベルトは無邪気に部屋をうろうろ歩き回っている。
「……本当に護衛も付けずにここまで来たのですか?」
「ああ、そうだ。そんなに心配するな、今まで見つかったことはないし、もしも見つかっても君のことは黙っている」
「そういうことではありません、貴方の身の安全が心配なのです」
今頃、城の方では大騒ぎになっているかもしれないと冷や冷やしていたが、どうやらそんな心配はいらないようだ。
「私はそれより、君の様な男がここを出入りしていたことに驚いたよ。ルイス侯爵もだいぶ遊び慣れた方だが、これほど深い世界は知らないだろうね」
「俺は……いえ、私の様なとは、どういうことでしょうか?」
「いいよ、あまり硬くならないで。"俺"っていう君も新鮮だよ。そうだな、私の知っているネイト・ハワードは真面目でしっかり者で……後、色事に無関心なのかと思っていた。ルイス侯爵たちと卑猥な談笑しているのを聞くことがあるけど、君自身の話は聞いたことがないから」
よく見ているな、と思った。彼らの話は大抵武勇伝ばかりで、ネイトはそれに合わせて話をするのが得意だった。相手の欲しい言葉やリアクションをすればいい。聞き役に徹すれば、自分の話もしなくて済む。
アルベルトだけは例外だ。どんな顔をして、どう振舞えばいいかが全く分からない。
ーーそれもそうだ、彼に勝手な憧れを抱いてもうすぐ五年近くになるのだから。
頭の中で彼はいつでも優しく笑いかけてくれるけど、することはたったひとつ。不健全な妄想は何の役にも立たない。俺の性癖は貴方で形成されたと言っても過言ではない。
「……そんな大層な人間ではありませんよ」
「よく言う。君も大概私に夢を見ているだろう」
一瞬、頭の中を見られてしまったのか、とぎょっとした。
「君が見ている私は、ほんの一部でしかない。本当の私を知ったら、それこそ君に嫌われてしまうのが怖い」
俯きがちに薄く笑う様は、どことなく妖艶だ。安宿特有の仄暗さと埃っぽさの所為だろうか、倒錯感に溺れてしまいそうだ。
「貴方を嫌うなど、絶対にあり得ません。私は貴方のことを……」
言いかけて口を噤む。駄目だ、相当に酔っている。上手い言葉が見つからないまま、ネイトは困ったように額に手を当てた。
「……さあ、そろそろ準備をしようか」
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