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37.この手をとって
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「おい、ブレイデン」
ブレイデンは振り返ることなく、ネイトの手をしっかりと握り締めると夜の闇を走り抜けて行く。
「ブレイデン!」
身長差があるのだから、当然足の長さだって違う。何度も足をもつれさせながら、息も絶え絶えに何度も呼び掛ける。
「お前、何しに来たんだよ」
そう言うと、やっとブレイデンが足を止めた。
「……チャーリーさんから、聞きました。ネイトさんに言い寄るちょっと危ない男が、ブローチを人質にしてる。内密に迎えに行ってって」
ネイトにとって都合の良くないところは伏せられた、ざっくりとした説明だった。
「あと、いけすかない奴かもしれないから、殴りたくなる前に逃げてって」
ロイの印象は、チャーリーの中で随分と悪いらしい。ネイトは苦笑した。
この角を曲がれば、城まではすぐだった。
「……チャーリーさん、心配してましたよ」
「だからって、ブレイデンを迎えに寄越すなんて……面倒なことに巻き込んで悪いな」
「いえ、ブローチはありますよね?」
「ああ、大丈夫」
ポケットにはしっかりと、受け取ったブローチが入っている。ネイトは服の上からそっと、触れて確かめた。
「チャーリーさんは誤魔化していましたけど、俺にはなんとなく分かります。お二人は恋人同士だったんですね」
「そうだよ……なんか、ごめん」
嫌な気持ちにさせてたら申し訳ない、とか嫌わないでほしい、とかどれから伝えていいのかが分からなかった。
「俺なら貴方を悲しませたりしません」
ブレイデンはネイトと向き合うと、涙の跡が残る目尻を優しく拭った。
ネイトはそれに気付かれたくなくて、すっと下を向いた。
「そうだな、ありがとう」
ネイトは目を真っ赤にして、薄い唇を持ち上げて笑って見せた。長い前髪が目にかかるのをそっと退けてやると、彼はされるがままで目を閉じた。睫毛が涙で濡れている。
ブレイデンは小さく溜息を吐いた。俺ではだめでしょうか、そう問いたいが答えはもうわかっているような気がした。
せめて、この人の涙を知られないようにとブレイデンはそっとネイトに体を寄せた。熱の籠った小さな頭が、ブレイデンの肩に押し付けられる。その表情を、ちらりと盗み見る。ネイトはただ、じっと何かに耐えるように瞼を閉じているだけだった。
もう少しだけ、このままでいたい。ブレイデンがネイトの背中に手を回しかけたときだった。
「ネイト、ブレイデーン!」
チャーリーが遠くの方から足早に駆けて来るのが見えた。その顔は僅かに青褪めていて、少し目が潤んでいる。
ネイトがするりと体を離す。ブレイデンは行き場を失った手をしばらく彷徨わせていた。
「ああ、ネイト」
チャーリーが勢い良くネイトの胸に飛び込んでくる。そうだ、ずっと心配してくれたんだ。
「チャーリー待っててくれたのか、大丈夫だって言っただろう」
ほら、これ返してもらったから。と、ネイトは持っていたブローチをチャーリーに手渡した。
チャーリーはそれを両手で丁寧に受け取ると、良かった、良かった、と呟きながら上着のポケットの奥に締まった。
「……ネイト、ごめんね。怒らないで」
潤んだ瞳で上目遣いのまま、チャーリーは謝罪を繰り返していた。そういえば、喧嘩らしい喧嘩なんて、今までで一度か二度あったくらいだ。慣れない喧嘩が嫌なのだろう。
「いいんだ、俺の方こそ心配してくれてたのにごめん。ブレイデンにまで声を掛けてくれて……ありが「アルベルト王子にバレた」」
「……は?」
ブレイデンは振り返ることなく、ネイトの手をしっかりと握り締めると夜の闇を走り抜けて行く。
「ブレイデン!」
身長差があるのだから、当然足の長さだって違う。何度も足をもつれさせながら、息も絶え絶えに何度も呼び掛ける。
「お前、何しに来たんだよ」
そう言うと、やっとブレイデンが足を止めた。
「……チャーリーさんから、聞きました。ネイトさんに言い寄るちょっと危ない男が、ブローチを人質にしてる。内密に迎えに行ってって」
ネイトにとって都合の良くないところは伏せられた、ざっくりとした説明だった。
「あと、いけすかない奴かもしれないから、殴りたくなる前に逃げてって」
ロイの印象は、チャーリーの中で随分と悪いらしい。ネイトは苦笑した。
この角を曲がれば、城まではすぐだった。
「……チャーリーさん、心配してましたよ」
「だからって、ブレイデンを迎えに寄越すなんて……面倒なことに巻き込んで悪いな」
「いえ、ブローチはありますよね?」
「ああ、大丈夫」
ポケットにはしっかりと、受け取ったブローチが入っている。ネイトは服の上からそっと、触れて確かめた。
「チャーリーさんは誤魔化していましたけど、俺にはなんとなく分かります。お二人は恋人同士だったんですね」
「そうだよ……なんか、ごめん」
嫌な気持ちにさせてたら申し訳ない、とか嫌わないでほしい、とかどれから伝えていいのかが分からなかった。
「俺なら貴方を悲しませたりしません」
ブレイデンはネイトと向き合うと、涙の跡が残る目尻を優しく拭った。
ネイトはそれに気付かれたくなくて、すっと下を向いた。
「そうだな、ありがとう」
ネイトは目を真っ赤にして、薄い唇を持ち上げて笑って見せた。長い前髪が目にかかるのをそっと退けてやると、彼はされるがままで目を閉じた。睫毛が涙で濡れている。
ブレイデンは小さく溜息を吐いた。俺ではだめでしょうか、そう問いたいが答えはもうわかっているような気がした。
せめて、この人の涙を知られないようにとブレイデンはそっとネイトに体を寄せた。熱の籠った小さな頭が、ブレイデンの肩に押し付けられる。その表情を、ちらりと盗み見る。ネイトはただ、じっと何かに耐えるように瞼を閉じているだけだった。
もう少しだけ、このままでいたい。ブレイデンがネイトの背中に手を回しかけたときだった。
「ネイト、ブレイデーン!」
チャーリーが遠くの方から足早に駆けて来るのが見えた。その顔は僅かに青褪めていて、少し目が潤んでいる。
ネイトがするりと体を離す。ブレイデンは行き場を失った手をしばらく彷徨わせていた。
「ああ、ネイト」
チャーリーが勢い良くネイトの胸に飛び込んでくる。そうだ、ずっと心配してくれたんだ。
「チャーリー待っててくれたのか、大丈夫だって言っただろう」
ほら、これ返してもらったから。と、ネイトは持っていたブローチをチャーリーに手渡した。
チャーリーはそれを両手で丁寧に受け取ると、良かった、良かった、と呟きながら上着のポケットの奥に締まった。
「……ネイト、ごめんね。怒らないで」
潤んだ瞳で上目遣いのまま、チャーリーは謝罪を繰り返していた。そういえば、喧嘩らしい喧嘩なんて、今までで一度か二度あったくらいだ。慣れない喧嘩が嫌なのだろう。
「いいんだ、俺の方こそ心配してくれてたのにごめん。ブレイデンにまで声を掛けてくれて……ありが「アルベルト王子にバレた」」
「……は?」
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