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それぞれの夜
9.ダン•バーナードの夜
しおりを挟む「エミリア•テイラーは亡くなりました」
レックス、という刑事は酷く淡々と言った。口髭を生やして、一つも表情を動かさない。
「そんな……嘘だろう。エミリア……」
エミリア、もういないなんて信じられなかった。
「あの、彼女のお腹の子は……? 無事なんですか? 」
「お腹の子……? いいえ、彼女は妊娠などしていません。レックスさん、お聞きしたいことが……」
「待ってくれ! 妊娠していないだと?」
ダンは複雑な表情を浮かべているが、喜んでいるような声だった。レックスが頷くと、ダンは大きく天を仰いだ。その目には涙が浮かんでいる。
「良かった……!ええ、刑事さん。何でも答えます」
「それでは……エミリアさんが体調が優れないと部屋へ行った後、貴方は彼女に空いに行きましたか?」
「ええ、確かにエミリアの部屋に行きました」
レックス、という刑事はダンを犯人だと疑っているようだった。
エミリアの死因は毒によるものだそうだ。最初は階段から落ちたことが原因かとも思ったが、どうやら毒で朦朧としていて階段から落ちたという。
「ですが、毒など飲ませていません」
「でもね、ダンさん。貴方、はこの家に住むクロエさんと結婚を前提にお付き合いされてるんだろう? こんな暗がりで二人で会うなんて誤解してもいいと言っているようなものだ」
「……」
「黙っていたら、貴方が犯人だと言う説が濃厚になります」
「脅されていたんだ……子どもが出来たと」
「それはつまり?」
「一度だけだ。一度だけエミリアと寝てしまった。子どもができるなんて思ってもいなかった。わかるだろう?」
避妊はしていたとダンは強調している。だが、100%などないのだ。今回はエミリアの虚偽ではあるが。
「あの女、子どもが出来たからクロエと別れて欲しいと言ったんだ。俺が言わないなら、自分が言うと部屋に呼びつけたんだよ。クロエの前で体調が悪い振りをして、俺の気を引こうとしていたんだ」
「……それで殺した?」
「まさか、俺は子どもの父親だぞ。まあ、実際子どもなんていなかったけど」
子どもごと殺してしまう人間もいることをレックス刑事は知っている。だが、ダンは嘘を言っていないようだった。
「それならクロエさんはこの事を知っていますか」
「ああ、話したよ。クロエには本当に悪いことをした」
「彼女は怒っていた?」
「怒るというか、泣かせてしまった。……クロエを疑っているのか?」
「階段の上で立ち尽くす彼女を何人も見ている」
「死因は毒殺だと刑事さんが言ったんですよ……! クロエは人を殺すような人間ではない」
「それなら他に気になることはある?」
ダンは目を閉じて状況を思い出しているようだった。
「……そうだな。フレデリックとすれ違った。あいつはジジと付き合う前にエミリアとも付き合っていたことがある」
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