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第2章 空飛ぶ物流改革
第8話 理想の彼氏 ~お茶を注いでくれるし肩も揉んでくれる~
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「それなんじゃが、デルシクスから気になる話を聞いておっての。近々会いに行ってみんかの?」
研究室でデータを眺めていたブレンが話に加わってきた。
ラウンジの冷凍庫から愛用のジョッキを取り出し、昼間だというのに麦酒をどぽどぽ注ぐ。
デルシクスは、昔の冒険で一緒に旅をした仲間の一人だ。機械神に仕えるノームの司祭で、老け顔でぼやいてばかりいたのでみんなに”爺さん”と呼ばれていた。
「爺さんが?どんな話だ?」
「さっき、自慢がてらアニエスのガーゴイルが飛んでいる映像を送ってやったのよ。そうしたら、ちょうど紹介したい細工師がいると返信があっての」
そういえば、ブレンと爺さんは仲が良かった。
大雑把に分けると、ドワーフは中大型の機械を、ノームは精密機械を専ら得意としている。それぞれに職人として通じるものがあるのだろう。
「わかった、会いに行こう。……と言いたいところだが、俺とブレンは明日から王都でサリオン通販の報告会か」
ブレンの父親、つまりドワーフ王国の国王陛下が、今回の事業に興味を持ってくれているらしい。こんなチャンスを逃すわけにはいかないので、俺とブレンは毎晩せっせと報告資料を作っている。
「国王陛下に会うわけだから、ちょっと行って話して帰ってくる、みたいな無礼はできないよなあ」
「最低限、明日夜の晩餐会と明後日の報告会は外せんかの。その後のことは儂が引き受けよう」
予定では、もう2日くらい王都に滞在して、有力貴族へのコネ作りをするつもりだった。
細かいスケジュールを埋めていない分、ここはキャンセルさせてもらおう。
「ありがたい。じゃあ爺さんには3日後以降で会いに行けると返信しておいてくれ」
「了解じゃ。機械仕掛けの都に行くのは、リュートとアニエスの二人で良いかの?」
「ゴヨウケンハ、ナンデショウカ」
ブレンがそういった瞬間、突然エンシン君が喋りだした。
「あ、あらごめんなさい。私の名前に反応しちゃったみたい。エンシン君、あなたはエンシン君なのよ?他の名前には反応しな」
「リュート、お茶持ってきてでシカ」
慌てた様子で何か言い始めたアニエスを遮り、セナがお茶を要求してきた。普段プロデューサーと呼ばれているので、突然名前で言われるとどきっとするな。
「お、おう」
立ち上がって、冷蔵庫に向かおうとする俺の前を、スーっと音もなくエンシン君が横切る。冷蔵庫を開け、お茶の瓶を取り出し、セナの前に運んで行った。
「リュートは賢いでシカね」
「キョウシュクデス」
「セ、セナちゃん?ちょっと向こうでお話が」
「リュート、肩揉んで貰える?」
何だ何だ?
今度はシャイルに肩揉みを要求されたが、俺に先んじてエンシン君がシャイルの肩を揉みだす。
「あー、上手ね。ありがとうリュート」
「キョウシュクデス」
「シャイルちゃーん、あなた魔剣に興味あったわよね。とっておきの一振りがあるんだけど」
……なるほど、読めてきた。エンシン君、もともとリュートという名前でこき使われていたのか。
「アニエス、お前……」
「ひぃっ!?リュート、これは違うのよ?」
「ゴヨウケンハ、ナンデショウカ」
後ろでは、セナが飲みかけたお茶をぶばっと噴き出している。
もうめちゃくちゃだ。
「すまん、俺が何かと頼りすぎるから、ストレス溜まってたんだな」
「えっ!?ええと、そうね。ちょっと、ストレスが」
「で、ガーゴイルに俺の名前を付けて」
「だから、ちがうの」
「こき使ったり、サンドバッグにしていたと」
「え?」
「ん?」
あれ?違うのか?
シャイルが「あちゃー」とか呟いているのが聞こえる。
「だから、俺に対する意趣返し的な」
「あー、えー、そうね。ちょっと、あなたが私を見る目について、悲しくなってきちゃって」
「それは、いつも悪いと思ってるから」
がっくりと肩を落とすアニエスを、さっきまでからかいモードだった二人が慰め始めた。
「姐さん、今回ばかりはごめんなさい。今夜もお酒、付き合うわ」
「ほら、甘えたくなったらセナに頼ってくれて良いでシカ。今夜は一緒に寝てあげるでシカね?」
「二人とも……」
なんなんだ。
状況を把握しきれない俺を尻目に、ブレンがこの場のまとめに入った。
「あー、とりあえずデルシクスには3日後に二人が行くと伝えておく。アニエス、予定だけ調整しておいてくれ」
「ほら姐さん、プロデューサーと二人で出張ですよ。元気出してください」
「どうせ何もないと思うでシカ、希望は捨てないで欲しいでシカ」
研究室でデータを眺めていたブレンが話に加わってきた。
ラウンジの冷凍庫から愛用のジョッキを取り出し、昼間だというのに麦酒をどぽどぽ注ぐ。
デルシクスは、昔の冒険で一緒に旅をした仲間の一人だ。機械神に仕えるノームの司祭で、老け顔でぼやいてばかりいたのでみんなに”爺さん”と呼ばれていた。
「爺さんが?どんな話だ?」
「さっき、自慢がてらアニエスのガーゴイルが飛んでいる映像を送ってやったのよ。そうしたら、ちょうど紹介したい細工師がいると返信があっての」
そういえば、ブレンと爺さんは仲が良かった。
大雑把に分けると、ドワーフは中大型の機械を、ノームは精密機械を専ら得意としている。それぞれに職人として通じるものがあるのだろう。
「わかった、会いに行こう。……と言いたいところだが、俺とブレンは明日から王都でサリオン通販の報告会か」
ブレンの父親、つまりドワーフ王国の国王陛下が、今回の事業に興味を持ってくれているらしい。こんなチャンスを逃すわけにはいかないので、俺とブレンは毎晩せっせと報告資料を作っている。
「国王陛下に会うわけだから、ちょっと行って話して帰ってくる、みたいな無礼はできないよなあ」
「最低限、明日夜の晩餐会と明後日の報告会は外せんかの。その後のことは儂が引き受けよう」
予定では、もう2日くらい王都に滞在して、有力貴族へのコネ作りをするつもりだった。
細かいスケジュールを埋めていない分、ここはキャンセルさせてもらおう。
「ありがたい。じゃあ爺さんには3日後以降で会いに行けると返信しておいてくれ」
「了解じゃ。機械仕掛けの都に行くのは、リュートとアニエスの二人で良いかの?」
「ゴヨウケンハ、ナンデショウカ」
ブレンがそういった瞬間、突然エンシン君が喋りだした。
「あ、あらごめんなさい。私の名前に反応しちゃったみたい。エンシン君、あなたはエンシン君なのよ?他の名前には反応しな」
「リュート、お茶持ってきてでシカ」
慌てた様子で何か言い始めたアニエスを遮り、セナがお茶を要求してきた。普段プロデューサーと呼ばれているので、突然名前で言われるとどきっとするな。
「お、おう」
立ち上がって、冷蔵庫に向かおうとする俺の前を、スーっと音もなくエンシン君が横切る。冷蔵庫を開け、お茶の瓶を取り出し、セナの前に運んで行った。
「リュートは賢いでシカね」
「キョウシュクデス」
「セ、セナちゃん?ちょっと向こうでお話が」
「リュート、肩揉んで貰える?」
何だ何だ?
今度はシャイルに肩揉みを要求されたが、俺に先んじてエンシン君がシャイルの肩を揉みだす。
「あー、上手ね。ありがとうリュート」
「キョウシュクデス」
「シャイルちゃーん、あなた魔剣に興味あったわよね。とっておきの一振りがあるんだけど」
……なるほど、読めてきた。エンシン君、もともとリュートという名前でこき使われていたのか。
「アニエス、お前……」
「ひぃっ!?リュート、これは違うのよ?」
「ゴヨウケンハ、ナンデショウカ」
後ろでは、セナが飲みかけたお茶をぶばっと噴き出している。
もうめちゃくちゃだ。
「すまん、俺が何かと頼りすぎるから、ストレス溜まってたんだな」
「えっ!?ええと、そうね。ちょっと、ストレスが」
「で、ガーゴイルに俺の名前を付けて」
「だから、ちがうの」
「こき使ったり、サンドバッグにしていたと」
「え?」
「ん?」
あれ?違うのか?
シャイルが「あちゃー」とか呟いているのが聞こえる。
「だから、俺に対する意趣返し的な」
「あー、えー、そうね。ちょっと、あなたが私を見る目について、悲しくなってきちゃって」
「それは、いつも悪いと思ってるから」
がっくりと肩を落とすアニエスを、さっきまでからかいモードだった二人が慰め始めた。
「姐さん、今回ばかりはごめんなさい。今夜もお酒、付き合うわ」
「ほら、甘えたくなったらセナに頼ってくれて良いでシカ。今夜は一緒に寝てあげるでシカね?」
「二人とも……」
なんなんだ。
状況を把握しきれない俺を尻目に、ブレンがこの場のまとめに入った。
「あー、とりあえずデルシクスには3日後に二人が行くと伝えておく。アニエス、予定だけ調整しておいてくれ」
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