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暗闇の中、あの人は誰だったのだろうかと考えた。
「『いずみに大好きだって……後悔はしてないって伝えて……』か……」
そういえば何かいずみが前言ってたな……。家族を失ったって……。家族を失うってどれだけ辛いことだろうか。俺は死んだ側だから、よく分からないんだが。
…………
目を開けると、いつの間にかさっきの森に戻っていた。
少し歩いていると、いずみ達にあった。いずみは、明るい表情で手を振ってきた。
「治!全クリしたのです!難しかったのです!」
ああ、俺がいない間にもう……。早いな。いずみ達は。
なんか、悲しくなった。
「もう!どこ行ってたの!?治!あんたを探すためにどれだけ苦労したと思ってんの!?あとで袋叩きにしてやるわ!」
うざったい毒舌女神は置いておこう。それより、いずみに伝えなくてはいけないことがある。
「なんか、夢みたいなものを見ていた気がする。あ、いずみ」
「なんなのです?」
「その夢みたいなので、いずみに似てる綺麗な人、あ、こんなにちんちくりんじゃなかったけど」
「ちんちくりんとは失礼な!私は立派な【れでぃ】なのです!」
「その人がいずみのことが大好きだってさ。後悔はしてないって言ってた。それをいずみに伝えてくれとも言ってた。その人お姉さんかお母さんか友達か妹かよく分かんねえけどよ。前家族のことでもめたから、多分家族かなって……っていずみ?」
いずみは正気を失ったような顔をしていた。いずみの目には走馬灯のようなものが写っているのだろうか。とにかく、緊急事態なのは確かだ。大丈夫なのだろうか。
「その人は……黒髪……でしたか?私に……そっくりでしたか?……私より……背が高くて、髪も長くて、優しかった……ですか?」
いつもの口癖の『なのです』も無くなっている。俺は黙ってこくりと頷いた。すると、いずみは小さく微笑んで下を向いた。
「お姉ちゃん……。お姉ちゃん……」
いずみは涙を流していた。それを黙って見ているのが耐えられなくなったのか、ノヴィアがいずみを抱きしめていた。
「さくら!!!さくらお姉ちゃん!!うあああ!!」
「……今日くらいは……大泣き……した方がいい……」
いずみは泣き崩れ、その場にへたり込もうとしていたところを、ノヴィアがぎゅっと抱きしめる。それに続いて、いずみも抱きしめ返す。やはり、家族を失ったというのはこのことだったのか。
少し時間も余っていたので、いずみの家族の話を聞くことにした。
「私のお姉ちゃん……。さくらお姉ちゃんはいつも優しくて、綺麗で、強くて、自慢のお姉ちゃんだったのです。でも、私の住んでた村全体で大きな火事があって、私のお母さんもお父さんもお姉ちゃんも皆焼け死んでしまったのです。クエストにいるはずの敵が村に入り込んできて……。そこから、私も戦おうとしたのですが、子供は戦力外だからここに入るなと……」
中々辛い体験だ。子供だからとのけ者にされて、あとで焼け死んだ姿を見るのは。
「それからここに来たの?」
ナイトが問いかける。少し間をあけて、いずみは首をふるふると横にふった。
「いえ……村全体が焼けた後、『ひまわり』という孤児院の人が、私を引き取ってくださって……。そこは地獄のようなところだったのです。食べ物は年齢順だったので、私は殆ど食べれなくて。しかも、部屋も年齢順なので、私は2年程、部屋がなかったのです」
「それならどこで寝るの!?寝るところないじゃない!」
うん。それは俺も思った。
「外で寝ていたのです。冬場は寒かったのですが……そこでノヴィアと会って、ずっと2人で寝ていたのです」
「……懐かしい……」
ノヴィアも孤児院の子供だったのか……。色々明らかになっていく。こういう話を聞くと、俺は凄く幸せ者なのだなと強く感じる。
『タイムアーーーップ!!!!そこまでだよーー!結果発表!!全クリおめでとう!200コインゲットーー!!』
つくづくたけもんもナイトも空気が読めないな。でも、こんな日常がずっと続けばいいと思っている自分がいる。この日常を終わらせたくない自分がいる。素直になれない自分がいる……。
「続きはそのうち話すのです。でも、まずはこのスゴロククエストのクリアなのです!あともう少しでゴールに近づけるのです!」
「そうね!ゴールの前に……ピックミーアップ!!!回復しとかないと、このままじゃもたないからね!」
「ありがとうなのです!ここからはぶっちぎるのです!」
「よし!行くか!」
色々なクエストをクリアしていき、残りのマスが4となった。ここまでで、俺らのパーティーのコイン額は4250コイン、あっちのデブのパーティーは4050コインとなった。
さあ、ここからが、勝負の分かれ道だ。
「よし!サイコロふれ!」
******
地震は大丈夫でしょうか?
心より無事をお祈りします。
「『いずみに大好きだって……後悔はしてないって伝えて……』か……」
そういえば何かいずみが前言ってたな……。家族を失ったって……。家族を失うってどれだけ辛いことだろうか。俺は死んだ側だから、よく分からないんだが。
…………
目を開けると、いつの間にかさっきの森に戻っていた。
少し歩いていると、いずみ達にあった。いずみは、明るい表情で手を振ってきた。
「治!全クリしたのです!難しかったのです!」
ああ、俺がいない間にもう……。早いな。いずみ達は。
なんか、悲しくなった。
「もう!どこ行ってたの!?治!あんたを探すためにどれだけ苦労したと思ってんの!?あとで袋叩きにしてやるわ!」
うざったい毒舌女神は置いておこう。それより、いずみに伝えなくてはいけないことがある。
「なんか、夢みたいなものを見ていた気がする。あ、いずみ」
「なんなのです?」
「その夢みたいなので、いずみに似てる綺麗な人、あ、こんなにちんちくりんじゃなかったけど」
「ちんちくりんとは失礼な!私は立派な【れでぃ】なのです!」
「その人がいずみのことが大好きだってさ。後悔はしてないって言ってた。それをいずみに伝えてくれとも言ってた。その人お姉さんかお母さんか友達か妹かよく分かんねえけどよ。前家族のことでもめたから、多分家族かなって……っていずみ?」
いずみは正気を失ったような顔をしていた。いずみの目には走馬灯のようなものが写っているのだろうか。とにかく、緊急事態なのは確かだ。大丈夫なのだろうか。
「その人は……黒髪……でしたか?私に……そっくりでしたか?……私より……背が高くて、髪も長くて、優しかった……ですか?」
いつもの口癖の『なのです』も無くなっている。俺は黙ってこくりと頷いた。すると、いずみは小さく微笑んで下を向いた。
「お姉ちゃん……。お姉ちゃん……」
いずみは涙を流していた。それを黙って見ているのが耐えられなくなったのか、ノヴィアがいずみを抱きしめていた。
「さくら!!!さくらお姉ちゃん!!うあああ!!」
「……今日くらいは……大泣き……した方がいい……」
いずみは泣き崩れ、その場にへたり込もうとしていたところを、ノヴィアがぎゅっと抱きしめる。それに続いて、いずみも抱きしめ返す。やはり、家族を失ったというのはこのことだったのか。
少し時間も余っていたので、いずみの家族の話を聞くことにした。
「私のお姉ちゃん……。さくらお姉ちゃんはいつも優しくて、綺麗で、強くて、自慢のお姉ちゃんだったのです。でも、私の住んでた村全体で大きな火事があって、私のお母さんもお父さんもお姉ちゃんも皆焼け死んでしまったのです。クエストにいるはずの敵が村に入り込んできて……。そこから、私も戦おうとしたのですが、子供は戦力外だからここに入るなと……」
中々辛い体験だ。子供だからとのけ者にされて、あとで焼け死んだ姿を見るのは。
「それからここに来たの?」
ナイトが問いかける。少し間をあけて、いずみは首をふるふると横にふった。
「いえ……村全体が焼けた後、『ひまわり』という孤児院の人が、私を引き取ってくださって……。そこは地獄のようなところだったのです。食べ物は年齢順だったので、私は殆ど食べれなくて。しかも、部屋も年齢順なので、私は2年程、部屋がなかったのです」
「それならどこで寝るの!?寝るところないじゃない!」
うん。それは俺も思った。
「外で寝ていたのです。冬場は寒かったのですが……そこでノヴィアと会って、ずっと2人で寝ていたのです」
「……懐かしい……」
ノヴィアも孤児院の子供だったのか……。色々明らかになっていく。こういう話を聞くと、俺は凄く幸せ者なのだなと強く感じる。
『タイムアーーーップ!!!!そこまでだよーー!結果発表!!全クリおめでとう!200コインゲットーー!!』
つくづくたけもんもナイトも空気が読めないな。でも、こんな日常がずっと続けばいいと思っている自分がいる。この日常を終わらせたくない自分がいる。素直になれない自分がいる……。
「続きはそのうち話すのです。でも、まずはこのスゴロククエストのクリアなのです!あともう少しでゴールに近づけるのです!」
「そうね!ゴールの前に……ピックミーアップ!!!回復しとかないと、このままじゃもたないからね!」
「ありがとうなのです!ここからはぶっちぎるのです!」
「よし!行くか!」
色々なクエストをクリアしていき、残りのマスが4となった。ここまでで、俺らのパーティーのコイン額は4250コイン、あっちのデブのパーティーは4050コインとなった。
さあ、ここからが、勝負の分かれ道だ。
「よし!サイコロふれ!」
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地震は大丈夫でしょうか?
心より無事をお祈りします。
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