異世界へようこそ!

野上葵

文字の大きさ
18 / 33

18

しおりを挟む
暗闇の中、あの人は誰だったのだろうかと考えた。
「『いずみに大好きだって……後悔はしてないって伝えて……』か……」

そういえば何かいずみが前言ってたな……。家族を失ったって……。家族を失うってどれだけ辛いことだろうか。俺は死んだ側だから、よく分からないんだが。

…………

目を開けると、いつの間にかさっきの森に戻っていた。
少し歩いていると、いずみ達にあった。いずみは、明るい表情で手を振ってきた。

「治!全クリしたのです!難しかったのです!」

ああ、俺がいない間にもう……。早いな。いずみ達は。
なんか、悲しくなった。

「もう!どこ行ってたの!?治!あんたを探すためにどれだけ苦労したと思ってんの!?あとで袋叩きにしてやるわ!」

うざったい毒舌女神は置いておこう。それより、いずみに伝えなくてはいけないことがある。

「なんか、夢みたいなものを見ていた気がする。あ、いずみ」
「なんなのです?」
「その夢みたいなので、いずみに似てる綺麗な人、あ、こんなにちんちくりんじゃなかったけど」
「ちんちくりんとは失礼な!私は立派な【れでぃ】なのです!」
「その人がいずみのことが大好きだってさ。後悔はしてないって言ってた。それをいずみに伝えてくれとも言ってた。その人お姉さんかお母さんか友達か妹かよく分かんねえけどよ。前家族のことでもめたから、多分家族かなって……っていずみ?」

いずみは正気を失ったような顔をしていた。いずみの目には走馬灯のようなものが写っているのだろうか。とにかく、緊急事態なのは確かだ。大丈夫なのだろうか。

「その人は……黒髪……でしたか?私に……そっくりでしたか?……私より……背が高くて、髪も長くて、優しかった……ですか?」

いつもの口癖の『なのです』も無くなっている。俺は黙ってこくりと頷いた。すると、いずみは小さく微笑んで下を向いた。

「お姉ちゃん……。お姉ちゃん……」

いずみは涙を流していた。それを黙って見ているのが耐えられなくなったのか、ノヴィアがいずみを抱きしめていた。

「さくら!!!さくらお姉ちゃん!!うあああ!!」
「……今日くらいは……大泣き……した方がいい……」

いずみは泣き崩れ、その場にへたり込もうとしていたところを、ノヴィアがぎゅっと抱きしめる。それに続いて、いずみも抱きしめ返す。やはり、家族を失ったというのはこのことだったのか。

少し時間も余っていたので、いずみの家族の話を聞くことにした。

「私のお姉ちゃん……。さくらお姉ちゃんはいつも優しくて、綺麗で、強くて、自慢のお姉ちゃんだったのです。でも、私の住んでた村全体で大きな火事があって、私のお母さんもお父さんもお姉ちゃんも皆焼け死んでしまったのです。クエストにいるはずの敵が村に入り込んできて……。そこから、私も戦おうとしたのですが、子供は戦力外だからここに入るなと……」

中々辛い体験だ。子供だからとのけ者にされて、あとで焼け死んだ姿を見るのは。

「それからここに来たの?」

ナイトが問いかける。少し間をあけて、いずみは首をふるふると横にふった。

「いえ……村全体が焼けた後、『ひまわり』という孤児院の人が、私を引き取ってくださって……。そこは地獄のようなところだったのです。食べ物は年齢順だったので、私は殆ど食べれなくて。しかも、部屋も年齢順なので、私は2年程、部屋がなかったのです」
「それならどこで寝るの!?寝るところないじゃない!」

うん。それは俺も思った。

「外で寝ていたのです。冬場は寒かったのですが……そこでノヴィアと会って、ずっと2人で寝ていたのです」
「……懐かしい……」

ノヴィアも孤児院の子供だったのか……。色々明らかになっていく。こういう話を聞くと、俺は凄く幸せ者なのだなと強く感じる。

『タイムアーーーップ!!!!そこまでだよーー!結果発表!!全クリおめでとう!200コインゲットーー!!』

つくづくたけもんもナイトも空気が読めないな。でも、こんな日常がずっと続けばいいと思っている自分がいる。この日常を終わらせたくない自分がいる。素直になれない自分がいる……。

「続きはそのうち話すのです。でも、まずはこのスゴロククエストのクリアなのです!あともう少しでゴールに近づけるのです!」
「そうね!ゴールの前に……ピックミーアップ!!!回復しとかないと、このままじゃもたないからね!」
「ありがとうなのです!ここからはぶっちぎるのです!」
「よし!行くか!」

色々なクエストをクリアしていき、残りのマスが4となった。ここまでで、俺らのパーティーのコイン額は4250コイン、あっちのデブのパーティーは4050コインとなった。
さあ、ここからが、勝負の分かれ道だ。

「よし!サイコロふれ!」

******
地震は大丈夫でしょうか?
心より無事をお祈りします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...