4 / 8
第4話 A級昇格
しおりを挟む
町の外に出て、少し開けた場所に着く。
騒ぎを聞きつけて、エリイも慌てて美利の様子を見に来た。
「準備はいいか?」
「いつでも」
美利が言う「いつでも」と言う割に、ただ無造作に立っているだけだった。
それが逆に隙が無いようにも見える。
「じゃあいくぜッ!!」
先程までの雰囲気とは一変し、一瞬にして距離を詰めると、拳を振るう。
(速いッ!?)
美利は咄嵯に反応して刀を抜き放ち、攻撃を防ぐ。
(だが――)
美利はその腕を斬り落とそうと試みる。
だが、それは失敗に終わる。
「ぐっ!!」
美利は数メートル吹っ飛ばされる。
そして追撃が来る前に立ち上がる。
(今のは何が起きた……!?)
考える暇も無く、今度は蹴りが飛んでくる。
それも防ごうとしたが、吹き飛ばされる。
(一体どんな技を……!?)
その後も攻め続けられ、何とか避けるものの、反撃する余裕は無い。
(このままでは不味い……)
美利は一度距離を取ると、納刀し居合の構えに入る。
(これは賭けに近い。だが、上手く行けば彼を倒せる筈……)
美利は深く息を吸い込み、吐く。
そして、一筋の光が走った様に見えた。
次の瞬間には、目の前に大男の姿は無く、代わりに首の無い胴体が転がっていた。
「……ふぅー」
美利はゆっくりと息を吐き出すと、腰を下ろした。
やってしまった。この世界で初めて人間を殺めてしまった。
そう思われていた。
「流石、だな……」
「……何故生きているのですか?」
「俺のスキルだよ。『再生』って言うのがあって、この通り元に戻る訳だ」
「そうですか。ではもう一度だけ戦いましょう。次は首を貰います」
美利は再び立ち上がり、抜刀の構えをする。
しかし、レイジは手を差し出す。それはストップの構えだ。
「いや。次は本当に死ぬ。これは1日に1度だけ使えるスキルでな。ユキムラ、最近ここら一体の魔物連中の危険度が跳ね上がって、魔王復活が近いと言う噂を知ってるか?」
「はい。なんでも、元々は倒せなかったために封印することになった最恐の魔王だとか……」
「そうだ。その魔王が復活すると、魔物達の強化が始まる。それに伴って、この周辺にいる魔物達のレベルが格段に上がるんだ」
「そうですか……。それで、私にどうしろと」
「緊急昇進だ。俺を倒した以上、Aランク以上の実力で間違いは無い。だから、お前さんはAランクに昇進する」
美利は納得した様子で、ギルドカードを渡し、手続きを済ませる。
その間、レイジはゴブリンジェネラルの死体を持っていく。
そして、美利は晴れてAランク冒険者となった。
その後、美利達は宿に戻った。
その日の夜のこと、美利の部屋の扉がノックされる音が聞こえる。
美利が返事をして、ドアを開けるとそこには気まずそうな表情をしたエリイが立っていた。
「エリイ、こんな夜更けにどうしたのですか?」
「昼間のことなんだけど……。大丈夫?」
「ああ、あれですね。別に気にしてませんよ」
「そう? でも、ミトリさんは凄いなぁ~! あんなに強いなんて!! 今度、私にも修行を付けてよ!」
「私のは我流です。なので教えられることはありません」
「そっか……残念」
「ですから、今日はもう寝なさい」
「うん……。お休みミトリさん」
エリイは部屋に戻っていった。
その後、美利はベッドで横になりながら考え事をしていた。
(Aランク。ゴブリンジェネラルやレイジさんのような格闘系の相手では、簡単に吹き飛ばされる。また、身体については身体強化魔法の影響か、肉体の表面しか切れない場合もある……)
美利は自分の手を見ながら呟く。
そして、静かに目を閉じた。
ゴブリンジェネラルを斬った最後の攻撃、何かが違った。
背中を斬った時、首を貫いた時、表面しか切れなかった時とは違う感覚があった。
(「黒夜」、私がこの世界で魔力が宿った様に、貴女にも魔力が宿るか、或いは纏わせることが出来るのかもしれませんね)
美利は心の中でそう思う。確証では無いが、そんな気がするのだ。
翌日、美利はギルドで依頼を受けることにした。
ゴブリンジェネラルが出現したと言うことで、他の魔物達が活発化している恐れもあるため、Aランク冒険者として相応しい依頼をこなす必要があった。
そして、美利はある一つのクエストを受けることにした。
それは、オークの集落の調査である。
「エリイ、オークとはどのような魔物なのでしょうか?」
「えっと、豚の顔をしていて、人型だけど知性は低いかな。あと、集団で生活したり、集落を作ったりするよ」
「ゴブリンと同じような物ですか?」
「そうだよ。ただ、強さは段違いに高いけど」
「そうですか。ありがとうございます」
美利は受付へと行き、そのクエストを受けることにする。
エリイも付いて来て、一緒に受けることになった。
エリイは心配そうに美利に問いかける。
昨日のことが尾を引いていないかと。
しかし、美利は平然と答えた。
全く気にしていないと。
そして、二人は町を出て森へと向かった。
騒ぎを聞きつけて、エリイも慌てて美利の様子を見に来た。
「準備はいいか?」
「いつでも」
美利が言う「いつでも」と言う割に、ただ無造作に立っているだけだった。
それが逆に隙が無いようにも見える。
「じゃあいくぜッ!!」
先程までの雰囲気とは一変し、一瞬にして距離を詰めると、拳を振るう。
(速いッ!?)
美利は咄嵯に反応して刀を抜き放ち、攻撃を防ぐ。
(だが――)
美利はその腕を斬り落とそうと試みる。
だが、それは失敗に終わる。
「ぐっ!!」
美利は数メートル吹っ飛ばされる。
そして追撃が来る前に立ち上がる。
(今のは何が起きた……!?)
考える暇も無く、今度は蹴りが飛んでくる。
それも防ごうとしたが、吹き飛ばされる。
(一体どんな技を……!?)
その後も攻め続けられ、何とか避けるものの、反撃する余裕は無い。
(このままでは不味い……)
美利は一度距離を取ると、納刀し居合の構えに入る。
(これは賭けに近い。だが、上手く行けば彼を倒せる筈……)
美利は深く息を吸い込み、吐く。
そして、一筋の光が走った様に見えた。
次の瞬間には、目の前に大男の姿は無く、代わりに首の無い胴体が転がっていた。
「……ふぅー」
美利はゆっくりと息を吐き出すと、腰を下ろした。
やってしまった。この世界で初めて人間を殺めてしまった。
そう思われていた。
「流石、だな……」
「……何故生きているのですか?」
「俺のスキルだよ。『再生』って言うのがあって、この通り元に戻る訳だ」
「そうですか。ではもう一度だけ戦いましょう。次は首を貰います」
美利は再び立ち上がり、抜刀の構えをする。
しかし、レイジは手を差し出す。それはストップの構えだ。
「いや。次は本当に死ぬ。これは1日に1度だけ使えるスキルでな。ユキムラ、最近ここら一体の魔物連中の危険度が跳ね上がって、魔王復活が近いと言う噂を知ってるか?」
「はい。なんでも、元々は倒せなかったために封印することになった最恐の魔王だとか……」
「そうだ。その魔王が復活すると、魔物達の強化が始まる。それに伴って、この周辺にいる魔物達のレベルが格段に上がるんだ」
「そうですか……。それで、私にどうしろと」
「緊急昇進だ。俺を倒した以上、Aランク以上の実力で間違いは無い。だから、お前さんはAランクに昇進する」
美利は納得した様子で、ギルドカードを渡し、手続きを済ませる。
その間、レイジはゴブリンジェネラルの死体を持っていく。
そして、美利は晴れてAランク冒険者となった。
その後、美利達は宿に戻った。
その日の夜のこと、美利の部屋の扉がノックされる音が聞こえる。
美利が返事をして、ドアを開けるとそこには気まずそうな表情をしたエリイが立っていた。
「エリイ、こんな夜更けにどうしたのですか?」
「昼間のことなんだけど……。大丈夫?」
「ああ、あれですね。別に気にしてませんよ」
「そう? でも、ミトリさんは凄いなぁ~! あんなに強いなんて!! 今度、私にも修行を付けてよ!」
「私のは我流です。なので教えられることはありません」
「そっか……残念」
「ですから、今日はもう寝なさい」
「うん……。お休みミトリさん」
エリイは部屋に戻っていった。
その後、美利はベッドで横になりながら考え事をしていた。
(Aランク。ゴブリンジェネラルやレイジさんのような格闘系の相手では、簡単に吹き飛ばされる。また、身体については身体強化魔法の影響か、肉体の表面しか切れない場合もある……)
美利は自分の手を見ながら呟く。
そして、静かに目を閉じた。
ゴブリンジェネラルを斬った最後の攻撃、何かが違った。
背中を斬った時、首を貫いた時、表面しか切れなかった時とは違う感覚があった。
(「黒夜」、私がこの世界で魔力が宿った様に、貴女にも魔力が宿るか、或いは纏わせることが出来るのかもしれませんね)
美利は心の中でそう思う。確証では無いが、そんな気がするのだ。
翌日、美利はギルドで依頼を受けることにした。
ゴブリンジェネラルが出現したと言うことで、他の魔物達が活発化している恐れもあるため、Aランク冒険者として相応しい依頼をこなす必要があった。
そして、美利はある一つのクエストを受けることにした。
それは、オークの集落の調査である。
「エリイ、オークとはどのような魔物なのでしょうか?」
「えっと、豚の顔をしていて、人型だけど知性は低いかな。あと、集団で生活したり、集落を作ったりするよ」
「ゴブリンと同じような物ですか?」
「そうだよ。ただ、強さは段違いに高いけど」
「そうですか。ありがとうございます」
美利は受付へと行き、そのクエストを受けることにする。
エリイも付いて来て、一緒に受けることになった。
エリイは心配そうに美利に問いかける。
昨日のことが尾を引いていないかと。
しかし、美利は平然と答えた。
全く気にしていないと。
そして、二人は町を出て森へと向かった。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる