人斬り異世界冒険譚

黒百合 - クロユリ -

文字の大きさ
5 / 8

第5話 オークの群れ

しおりを挟む
森の中を進むこと数時間。
遂に目的の場所に着いたようだ。
そこは大きな洞窟で、入り口には見張りと思われるオークが二体居た。
「どうしますか? 正面突破ですか?」
「うーん。確かにそれが一番早いかも……」
「では、早々に終わらせるとしましょう」
「そうだね」
美利は刀を抜き放ち、エリイは弓を構える。
エリイはレンジャーと言う職業に転職。転職に伴ってEランクに降格となった。
今の彼女の役割は後方支援、作戦を練ったり敵の情報を美利に教える役割となった。
美利はオークに向かって走り出し、一体の首を斬り飛ばす。
そして、もう一体を斬ろうとしたその時だった。
「ッ!?」
美利は咄嵯にその場から離れ、背後を振り向く。
すると、先程まで美利が立っていた場所に槍が刺さっていた。
「ミトリさん、今のは……」
「恐らく、遠距離からの投擲でしょう。オークにも、そのような知性があるのですか?」
「無いことも無いけど、基本は直接来るからね。槍を使う魔物は確か――」
エリイの言葉が終わらないうちに、次々と矢も飛んでくる。
美利はそれらを全て刀で弾き落としていく。
しかし、いつまでも避け続けることは出来ない。
美利はエリイを抱きかかえると、木の上に飛び乗った。
そこから弓矢が飛んできた方角を見据え、矢が発射されたと同時に跳躍した。
一瞬にして距離を詰め、そのまま首を――
「ッ!!」
刎ね飛ばそうとして、飛んで来た鎗の攻撃によって防がれる。
「随分と臆病な方達ですね」
(しかし、このままでは近付くことすら難しい……。散らばって我々を矢と槍で攻撃して来る。連携もあるが、オークにしては知能が高い……)
「エリイ、援護お願い出来ますか?」
「勿論! 任せて!」
美利は刀を鞘に納め、抜刀術の構えを取る。
そして、大きく息を吸い込み吐き出す。
エリイはいつでも撃てる様に準備をする。
そして、美利は何かが自分を包み込み、それが刀に流れて行く感覚を掴む。
後は、その感覚を矢や鎗を打つ者達に向けて飛ばすだけ。
「何、その技!?」
刀を抜いた瞬間、その斬撃が木々をなぎ倒してオークたちを切り裂いて行く。
「まだ、加減が難しいですね……」
美利はそう呟きながら、エリイと共に奥へ進んで行った。
オーク達を倒しつつ奥に進む二人。
エリイは美利の戦い方に驚いていた。
剣戟の衝撃波を放つスキルなど今まで見たことも聞いたこともないからだ。
そして、彼女はふと思った。
美利はいったいどうやってあの力を手に入れたのか。
気になったエリイは聞いてみた。
「ミトリ、さっきの誰に教わったの?」
「いえ、教わったわけではありません。ただ、身体に纏わる何かを刀に載せて飛ばしただけです」
「身体に纏わる何か……って、これのこと?」
そう言ってエリイは魔力を可視化させて掌で浮かせる。
「まさか、魔力を知らないの?」
「魔力……?」
美利は不思議そうな表情でエリイを見る。その反応を見て、エリイは驚愕した。
この世界の住人は生まれた時から体内に魔力を宿している。そして、誰もがそれを操ることが出来る。
しかし、美利の反応はそれに当てはまっていないのだ。
「となると、さっきのはウインドカッターの何か上位的な魔法にでもなるのかな……」
「エリイさん?」
「あぁ、ごめんごめん。しかし、そっかー、魔法を知らないのかー。つくづく規格外だね」
そうエリイは笑う。美利はそれに微笑み返す。
その後も順調にオークを狩り続け、遂に集落の中心と思われる広場へと辿り着く。
そこには多くのオーク達がおり、皆が武装していた。
美利達はその数の多さに驚きつつも、冷静に状況を判断する。
そして、美利はエリイに下がる様に言うと、刀を構える。
一体一体がそこそこの強さを持つ中で、集団が相手となれば多少手古摺る可能性もあった。
そして、オーク達が一斉に襲い掛かってきた。
美利は素早く動き、一体ずつ確実に仕留めていく。
エリイは後方から美利を狙撃し、サポートする。
(やはり、固い……!)
オーク達の皮膚はかなり固く、普通の人間であれば一太刀浴びせるだけでも容易ではないだろう。
美利も例外ではなく苦戦しており、一撃ごとに手に痺れを感じていた。
だが、ここで退く訳にはいかない。
美利は心の中で自分に言い聞かせる。
そして、遂に最後の一体を切り伏せる。
他のオークと比べて体格が良く、少し強かった。
肩で息をしながら仲間たちが全員殺されても全く武器を構えなかった、他とは違うオークがゆっくりと立ち上がる。
「人間、お前、強いな……」
「随分と悠長にされるのですね。既に、お仲間は倒れたと言うのに……」
「俺、強者との戦い、望む」
「そうですか……」
美利は刀に付いた血を払うと、再び構え直す。
それと同時に、オークは駆け出した。
美利は迎え撃つために、一歩踏み出す。
刹那、オークは美利の目の前まで移動してきた。
しかし――
「がはっ!?」
「ゴブリンジェネラルの方が、私を愉しませてくれました。貴方はどうでしょうか?」
美利は刀を振るう。
首と胴体が切り離されたオークはその場に倒れ込む。
美利はそれを見届けると、エリイの元へと戻った。
「ミトリ、大丈夫だった?」
「えぇ、問題ありません」
「これでクエスト達成だね」
「はい」
オークの素材を取り、二人はそのまま町へと戻って行った。
ギルドに着く頃には夕方である。
美利は早速受付に行き、依頼を達成したことを報告する。
報酬として大銀貨二枚を受け取った。
そして、その足で宿屋へと向かう。
部屋に着き、エリイが荷物を置いてベッドで寛ぐ。
靴を投げ出し、足をパタパタさせながら身体を伸ばしていた。
その姿を見た美利は思わずクスリと笑ってしまう。
「緊張から解かれたのでしょう。Dランク冒険者ではパーティーでもオークの群れを相手にすることはありませんから」
「かもねー。はぁ~、足パンパンだよぉ」
「では、一つ、足裏マッサージでもしてあげましょうか」
首を傾げるエリイの横に座り、膝の上にエリイの素足を乗せる。
そして、彼女の足裏に親指を当てて指圧する。
「いっ!? 痛った! ちょ、ちょっと、ミトリ! 待って! ストップ!」
「気持ち良いですよ? ほら、もっと力を込めますよ!」
「やめ! ホント! ひぎぃ!?」
エリイは必死に暴れるが、美利がガッチリ掴んで離さないため逃れられない。
結局、美利が満足するまで指圧は行われ、翌日エリイは身体の軽さに驚かされることになるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...