6 / 8
第6話 圧倒的強者との修行
しおりを挟む
「ユキムラ」
「ギルドマスター、おはようございます」
ギルドで今日も何か依頼が無いか探していると、レイジが声を掛けて来る。
「お前さんに客人だ」
そう言って後ろに立つ方は、禿頭の年配者で、巨大な木の杖を持っていた。
なんでも、賢者と言う魔法使いの最高階級の職業についた人物で、世界にも3人しか居ない人物とのことだった。
「初めまして、私はミトリと言います」
「お主がミトリか……。ワシはアルダじゃ。よろしくの」
「それで、どのような用件で?」
「それはワシより、この者に説明させる」
そう言って、アルダは後ろに控える男を指し示す。
その男は三十代前半の、精力的で筋肉質な体つきをしており、大きな大剣を持っていた。
「お初にお目にかかります。私は宮廷近衛騎士団団長を務めております、ガゼルと申します。Aランクに数日で昇進したとされるユキムラ殿に、折り入ってご相談があるのです」
「私に?」
「はい。実は、国王陛下の命を受け、近々この国へ攻め込もうとする蛮族共を討伐すべく出陣するのですが……少々厄介な敵がおりまして……」
「厄介、と言いますと?」
「単刀直入に言いますと、ドラゴンです」
「竜種ですか……」
「はい。それも、かなり強力な個体らしく、我が国の騎士達を悉く葬っています」
「成程……」
美利は考える。
確かに、竜種は強大な存在であり、並大抵の冒険者や騎士では歯が立たないだろう。
それを理解した上で、美利は一つの提案をする。
「私が引き受けても構いませんが、条件があります」
「条件ですと?」
「私一人で戦わせて下さい」
「……なっ!?」
美利の言葉を聞き、周りの者達は驚愕した。
何せ、彼女はAランクになったとはいえ、つい先日冒険者になったばかりなのだ。しかも魔法や魔力を知らなかったと言う。
いくら戦闘能力に長けているとは言え、たった一人だけでドラゴンに立ち向かうなど自殺行為に等しい。
しかも、相手は今まで数多の猛者たちを殺してきたのだ。
そんな相手に、ただの人間が勝てるはずがない。
だが、美利の目を見て、それが冗談ではないことを確信する。
「……分かりました。その申し出、承りましょう」
「ありがとうございます。それでは、準備が出来次第、出発しますので……」
「いや、その前に、お主にはそもそもの基礎を学んでもらう。そのために、儂等が此処におる。我流で構わんが、更に成長する機会が欲しいだろう」
アルダの言葉に美利はうなずく。そして、二人は美利を連れて訓練場へと向かった。
訓練場では既に多くの者が待機しており、その中にはエリイの姿もあった。
美利と目が合うと微笑みながら手を振ってくる。
(さて、まずは基礎からだ)
美利は目の前に居る強面の男、ガゼルから手ほどきを受ける。
彼の指導は非常に的確で、美利は力任せであるが故にいなされる。勿論その切っ先は確かにガゼルを斬ってはいるが。
(太刀は入る、しかし致命的な打撃も表面しか斬れない……)
一撃の威力を重視する美利の剣術に対し、ガゼルの武術は相手の動きを読み取り、受け流し、隙を作る。
美利は何度も地面に叩きつけられ、転がされ、投げ飛ばされた。
それでも、美利は立ち上がる。
そして、数時間後――
美利の全身には青アザができており、息も絶え絶えになっていた。
しかし、その顔はいつからか、満面の笑みに変わっていた。
狂気と誰もが思ったことだろう。
ガゼルは弱い。美利と比べ圧倒的に。しかし、彼女と互角以上に渡り合えたのは、彼女が無知だったからに他ならない。
魔法も知らず、戦い方も知らない彼女は、剣道がこの世にあれば圧倒できただろう。
無くても人斬り時代の我流はそれだけで十分だった。
しかし、それでも彼女がガゼルを倒すに至らなかった理由は、その圧倒的な魔法や魔力の使い方の知らなさが原因だった。
「ミトリさん、貴方は一体なんなんだ?」
「私は人間ですよ。ただ、少しだけ他の人よりも強いだけのね」
「……そうか」
その言葉を最後にガゼルは気を失った。
アルダはゆっくりと近付くと、エリアハイヒールを使って二人の傷を癒した。
「ミトリよ、明日は儂が相手をする。今日は休め」
「はい」
美利は素直に返事をして、エリイの元へと戻って行った。
「ミトリ、大丈夫?」
「問題ありません。それにしても、中々に難しいですね」
「そりゃあ、相手は近衛騎士団団長様だもん。寧ろ最終的に倒す方が異常だって……」
「そうなんですか?」
「うん。普通なら、最初の数分で負けてると思うよ。でも、ミトリは……いや、ミトリだし、そうだよね……」
半ばあきらめるように納得するエリイだった。
翌日はアルダの魔法基礎と魔法攻撃、魔法防御の基礎、バフ、デバフについて、そして回復魔法についてを教えて行く。
当然一朝一夕に出来るものではないが、それでも美利は1週間もすればおおよそのマスターをすることが出来た。
賢者の魔法と宮廷近衛騎士団の剣裁きを覚えた美利は、いざドラゴンとの戦いに備えるのだった。
「ギルドマスター、おはようございます」
ギルドで今日も何か依頼が無いか探していると、レイジが声を掛けて来る。
「お前さんに客人だ」
そう言って後ろに立つ方は、禿頭の年配者で、巨大な木の杖を持っていた。
なんでも、賢者と言う魔法使いの最高階級の職業についた人物で、世界にも3人しか居ない人物とのことだった。
「初めまして、私はミトリと言います」
「お主がミトリか……。ワシはアルダじゃ。よろしくの」
「それで、どのような用件で?」
「それはワシより、この者に説明させる」
そう言って、アルダは後ろに控える男を指し示す。
その男は三十代前半の、精力的で筋肉質な体つきをしており、大きな大剣を持っていた。
「お初にお目にかかります。私は宮廷近衛騎士団団長を務めております、ガゼルと申します。Aランクに数日で昇進したとされるユキムラ殿に、折り入ってご相談があるのです」
「私に?」
「はい。実は、国王陛下の命を受け、近々この国へ攻め込もうとする蛮族共を討伐すべく出陣するのですが……少々厄介な敵がおりまして……」
「厄介、と言いますと?」
「単刀直入に言いますと、ドラゴンです」
「竜種ですか……」
「はい。それも、かなり強力な個体らしく、我が国の騎士達を悉く葬っています」
「成程……」
美利は考える。
確かに、竜種は強大な存在であり、並大抵の冒険者や騎士では歯が立たないだろう。
それを理解した上で、美利は一つの提案をする。
「私が引き受けても構いませんが、条件があります」
「条件ですと?」
「私一人で戦わせて下さい」
「……なっ!?」
美利の言葉を聞き、周りの者達は驚愕した。
何せ、彼女はAランクになったとはいえ、つい先日冒険者になったばかりなのだ。しかも魔法や魔力を知らなかったと言う。
いくら戦闘能力に長けているとは言え、たった一人だけでドラゴンに立ち向かうなど自殺行為に等しい。
しかも、相手は今まで数多の猛者たちを殺してきたのだ。
そんな相手に、ただの人間が勝てるはずがない。
だが、美利の目を見て、それが冗談ではないことを確信する。
「……分かりました。その申し出、承りましょう」
「ありがとうございます。それでは、準備が出来次第、出発しますので……」
「いや、その前に、お主にはそもそもの基礎を学んでもらう。そのために、儂等が此処におる。我流で構わんが、更に成長する機会が欲しいだろう」
アルダの言葉に美利はうなずく。そして、二人は美利を連れて訓練場へと向かった。
訓練場では既に多くの者が待機しており、その中にはエリイの姿もあった。
美利と目が合うと微笑みながら手を振ってくる。
(さて、まずは基礎からだ)
美利は目の前に居る強面の男、ガゼルから手ほどきを受ける。
彼の指導は非常に的確で、美利は力任せであるが故にいなされる。勿論その切っ先は確かにガゼルを斬ってはいるが。
(太刀は入る、しかし致命的な打撃も表面しか斬れない……)
一撃の威力を重視する美利の剣術に対し、ガゼルの武術は相手の動きを読み取り、受け流し、隙を作る。
美利は何度も地面に叩きつけられ、転がされ、投げ飛ばされた。
それでも、美利は立ち上がる。
そして、数時間後――
美利の全身には青アザができており、息も絶え絶えになっていた。
しかし、その顔はいつからか、満面の笑みに変わっていた。
狂気と誰もが思ったことだろう。
ガゼルは弱い。美利と比べ圧倒的に。しかし、彼女と互角以上に渡り合えたのは、彼女が無知だったからに他ならない。
魔法も知らず、戦い方も知らない彼女は、剣道がこの世にあれば圧倒できただろう。
無くても人斬り時代の我流はそれだけで十分だった。
しかし、それでも彼女がガゼルを倒すに至らなかった理由は、その圧倒的な魔法や魔力の使い方の知らなさが原因だった。
「ミトリさん、貴方は一体なんなんだ?」
「私は人間ですよ。ただ、少しだけ他の人よりも強いだけのね」
「……そうか」
その言葉を最後にガゼルは気を失った。
アルダはゆっくりと近付くと、エリアハイヒールを使って二人の傷を癒した。
「ミトリよ、明日は儂が相手をする。今日は休め」
「はい」
美利は素直に返事をして、エリイの元へと戻って行った。
「ミトリ、大丈夫?」
「問題ありません。それにしても、中々に難しいですね」
「そりゃあ、相手は近衛騎士団団長様だもん。寧ろ最終的に倒す方が異常だって……」
「そうなんですか?」
「うん。普通なら、最初の数分で負けてると思うよ。でも、ミトリは……いや、ミトリだし、そうだよね……」
半ばあきらめるように納得するエリイだった。
翌日はアルダの魔法基礎と魔法攻撃、魔法防御の基礎、バフ、デバフについて、そして回復魔法についてを教えて行く。
当然一朝一夕に出来るものではないが、それでも美利は1週間もすればおおよそのマスターをすることが出来た。
賢者の魔法と宮廷近衛騎士団の剣裁きを覚えた美利は、いざドラゴンとの戦いに備えるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる