人斬り異世界冒険譚

黒百合 - クロユリ -

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最終話 勝利と旅立ち

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アルダ、ガゼルはドラゴンと戦う美利が心配だった。流石に荷が重いかと思った直後、美利が飛び立った方向に巨大な真っ黒なドームが浮かび上がったのだ。
その塊が全て弱くとも広い範囲で美利の魔力を感じた。それと合わせて、魔人2人の魔力を感じると、アルダとガゼルはドラゴンとの一騎打ちは終わり、魔人が迫るのだから美利の獲物を奪っても文句は言われないだろうと、急いでドームに向かって駆け出した。

「随分息が上がっているのではないか、人間?」
「フハハハハハ!! 愉しませろと言っていたのだ、どうだ、愉しいか人間!!」
「………」
美利は次々と隕石を降らせ、魔人エルガとアギスに攻撃をぶつける。
しかし、大分魔力を消費した、ドラゴン相手に遊び過ぎたと後悔する。
「効かん、効かんぞ人間! フハハハハハ!!」
アギスの高笑いに、美利はイラつきながらも、冷静さを失わないように心掛けて攻撃を続ける。
一気に近付いたアギスは渾身の拳を美利に向けて振るう。
アギスの拳を受け止めると、美利はそのままアギスを地面に叩きつけた。
土煙が上がり、美利の姿が見えなくなる。
アギスはニヤリと笑みを浮かべると、再び美利に向けて拳を振り下ろす。
すると、地面から無数の槍が飛び出して来た。
それは美利が魔法で作った物であり、アギスの腕を貫く。
アギスは痛みに耐えながら美利の姿を探そうとすると、袈裟斬りにアギスは斬られる。
「なにぃ!?」
「近付き過ぎだ、バカが……!!」
1対1になった美利とアギス、美利の攻撃範囲内に近付いてしまえば、それは美利の独壇場だ。
アギスも接近戦を得意としているが、美利の方が上である。
そしてトドメを刺そうとした瞬間、アギスの口元に魔力が集まっていく。
咄嵯の判断で、美利はその場から離れると、先程までいた場所に大爆発が起こった。
爆風によって吹き飛ばされる美利だったが、空中で体勢を整える。
しかし、アギスの方を見ると、そこには無傷のアギスがいた。
「再生……!!」
「魔人特有の能力だ、お前達人間には適うまい!!」
アギスはそう言うと、美利に突撃した。
美利はアギスの攻撃をギリギリで避けようとするが、身体強化をしたアギスの動きを捉えきれず、直撃を食らう。
地面を転がった美利だが、すぐに立ち上がると、追撃しようとしたアギスを巨大な土の壁が防ぐ。
「間に合ったわい!」
「アルダ様……!!」
援軍としてアルダ、ガゼルが現れると、ガゼルはアギスに、アルダはエルガに向かい合う。
ともすれば、残る美利は三度ドラゴンと対峙する。
「私を一番弱いと判断したか、人間!!」
「事実、魔人の足元にも及ばない貴方と満身創痍の私、どちらが上か分かりますでしょう」
「嘗めるな、人間!!」
「冥夜煌墜・流星」
空から降り注ぐ隕石に、ドラゴンはブレスで対抗する。
しかし、空中に向けてブレスを放つドラゴンだが、足元に肉薄する美利に反応できない。
そのまま美利は刀を振るい、ドラゴンの首を落とした。
首を落とされたドラゴンは倒れ込み、動かなくなった。
美利は一息つくと、まだ戦いが続いていたが、アルダ達が優勢だった。
美利はドラゴンとの戦いにより消耗していたため、参戦出来ない。
しかし、エルガとアギスも分が悪いと判断したのか、結局最大レベルの攻撃を放つと、それを目暗ましにして姿を晦ませた。
「なんとか勝ったわい……」
「しかし、魔人が現れるとなると、やはり魔王復活が近いか、或いは……」
「急ぎ王都へ期間、国王に報告せねばなるまいな……」
こうして、3人は帰還した。
商業都市に戻ると、門の前に大勢の民が集まっており、歓声を上げた。
どうやら美利達の勝利を祝福しているようだ。
その光景を見て、美利は複雑な表情を浮かべている。
何故なら、美利は国民のために戦ったわけではなく、自分が戦いや殺し合いを愉しみたいがために前線に出ていたからだ。
そんな考えを察してなのか、アルダとガゼルは何も言わず、ただ微笑んだだけだった。

王都に戻るアルダとガゼルを見送った美利は、彼女もまた他の魔人と戦う為に旅に出ようと決意する。
エリイとはここでお別れになってしまうが、また何処かで会えると信じている。
彼女は強くなった、そして何より心が強い。
美利はそう思いながら、彼女の頭を撫でた。
それから、美利は旅に出る準備をする。

前世では夜襲して人斬りと言われていた雪村朧気美利。
彼女は異世界に転生を果たす。
戦いや殺し合いが好きな彼女は、魔王復活の報と共に魔人やドラゴンと相対する。
辛くも勝利を果たした美利は、次の戦いに備えるべく、旅立つことにした。
その前に、世話になった人達に会いに行くと、そこにはエリイがいた。
彼女は笑顔で美利を見送る。
最後に抱き締めると、美利は王都に向けて歩き出したのだった。
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