1 / 2
白い肌
しおりを挟む
腹水がたまるようになったらもう、死期はすぐそこだときいた。
電車を乗り継いで、走って病院に行った。
医療麻薬のパッチが貼られた胸元が白く露出していたのを見て、胸に悔しさと恨みが沸き起こり煮立つのを感じた。何に対してか。母さんの細胞のミスコピーの癌なのかそれとも、健康な人々か。どうにもならないとやけに落ち着き払った医師か。すべてなのか。
母さんの肌はこんなに白かっただろうか。そして、母さんが弱々しく女性の身体を持って生まれたことにも、哀しさと悔しさをおれは持った。
母さん。おれは母さん以外のすべてに対して、怒って、そして泣いている。
母さんの顔は凛としていた。窓の外では雪が斜線を描き続けている。
薄黄緑いろのシーツにおれの汗が落ちた。
何もかもを、壊したかった。
おれを、母さんさえも、殴り殺してしまいたくなった。ベッドを破壊して、窓を割って、点滴の袋を裂いて。
母さんなんで、こんなものに繋がれているんだ。
母さんどうして、どうして、なんで。
あの肌が。母さんの白い乳房が。
おれに途方もないかなしみを、物語にすらならないかなしみを、
終わらない孤独を、焼き付けて。
電車を乗り継いで、走って病院に行った。
医療麻薬のパッチが貼られた胸元が白く露出していたのを見て、胸に悔しさと恨みが沸き起こり煮立つのを感じた。何に対してか。母さんの細胞のミスコピーの癌なのかそれとも、健康な人々か。どうにもならないとやけに落ち着き払った医師か。すべてなのか。
母さんの肌はこんなに白かっただろうか。そして、母さんが弱々しく女性の身体を持って生まれたことにも、哀しさと悔しさをおれは持った。
母さん。おれは母さん以外のすべてに対して、怒って、そして泣いている。
母さんの顔は凛としていた。窓の外では雪が斜線を描き続けている。
薄黄緑いろのシーツにおれの汗が落ちた。
何もかもを、壊したかった。
おれを、母さんさえも、殴り殺してしまいたくなった。ベッドを破壊して、窓を割って、点滴の袋を裂いて。
母さんなんで、こんなものに繋がれているんだ。
母さんどうして、どうして、なんで。
あの肌が。母さんの白い乳房が。
おれに途方もないかなしみを、物語にすらならないかなしみを、
終わらない孤独を、焼き付けて。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる