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第三章「反魂香」
第20話 路地裏に蠢く影
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「さて、二人が待ってるだろうからさっさと帰るかな」
アパートへ帰るには来た道を戻るのが近道だがこの時間帯の路地裏はいくらブリタニア国王のお膝元と言っても胡散臭い連中が湧いてくる。
チラッと路地に目を向けると手に持ったランタンに紫色の炎を灯した如何にもと言った雰囲気の連中が視界の隅に移り込んだ。
とは言ってもああいう連中は路地に入らなければ絡んでくることもない。現に大通りを歩いていれば手を繋いだ親子が微笑ましく歩いている。ロンドン然り、京都然り。魔術大国の王都は光と闇が相互不干渉で近接する魔都なのだろう。
酒で温まったとは言え夕闇と共に増してくる凍気は如何せん辛い。双魔は足を速めた。
そんな時だった。ふと、ある路地に目が留まった。一瞬、学園指定のローブと女の髪のような物が見えた。
(……あれは)
違和感に双魔は気配ろ魔力を極力抑えて路地に足を踏み入れた。
路地に入って十歩も進まないうちに話し声が聞こえてくる。
「アタシそんなことには興味ないので……困るっス」
(この声は……ギオーネか?どうしてこんなところに?)
複数人いるうちの一人はどうやら仕事上がりで先刻店から出ていったアメリアのようだ。
「ボスがお前は見所があるから直々に指導をして下さるって言ってるんだ。絶対に受けておいた方がいいぜ?」
「あぅ……でも本当に興味ないっていうか……」
「こちらの方は次の査定で”枢機卿”と目されている大魔術師だ。その恰好してるってことは魔導学園の生徒だろう?他の連中を出し抜きたくはないか?ん?」
話し声と内容からアメリア以外に三人、それも全員が魔術師のようだ。「大魔術師」というワードが気になるが、確かに今の会話に加わっていないと思われる一人に不気味な魔力を感じる。
そっと影から様子を窺うとアメリアが壁を背に三人の男に囲まれている。左右にチンピラ風のスキンヘッドの男と大量にピアスを着けた色黒の男、そしてフードを目深に被って沈黙を貫いている人物。どうやら男のようだ。不気味な魔力の正体はフードの男で間違いないだろう。
(これまた面倒な……)
このような状況に陥った経緯は置いておくとして如何にも怪しい連中に生徒が絡まれているとなれば臨時とはいえ講師の身である。助けないわけにもいくまい。
双魔は静かにゆっくりと、アメリアに向かって声を掛けた。
「よう、ギオーネ。こんなところで何してるんだ?」
「あっ!ふっ……」
アメリアがこちらに気づいて双魔の名を呼ぼうとしたので人差し指を唇に当てるジェスチャーをして見せる。そして人差し指をそのまま横にスライドさせた。するとアメリアは口を閉ざしてコクコクと頷いた。
「ああん?なんだテメエは!」
「その恰好……お前も魔導学園の生徒か?俺らは今このお嬢ちゃんと話してるんだ。引っ込んでな!」
チンピラ風の男二人がこちらを見て凄んでくる。
「いや、そんなこと言われても。どう見ても嫌がってるしな……」
「テメエ……」
双魔の飄々とした態度が男たちを逆なでしたようでピアスの男は今にも飛び掛かってきそうな勢いだ。
「……ボス、どうしますか?」
もう一人の男がフードの男に伺いを立てる。すると、フードの男は面倒そうに片手を振って見せる。
次の瞬間、ピアスの男が狭い路地の両壁を交互に蹴って高く跳んだ。
「”燃え盛る輪腕”!くたばれクソガキィ!」
男の腕から炎の渦が沸き上がり暗い路地を照らす。そしてそのまま双魔目掛けて突っ込んでくる。
肌がチリチリと焦げるように熱い。あれをまともに受ければ確実にタダでは済まないだろう。
(……詠唱なしの魔術行使…………並みの魔術師じゃないな)
詠唱を行わずに即時に魔術を発動できるのは熟練の魔術師だけだ。それなりの腕を持っていなければ不可能なことだ。
双魔は慌てることなく、冷静に上から降ってくる男に人差し指を向けた。
「ヒャッヒャッヒャ!なんだぁ?ビビっちまったのかぁ!ガッ……カ……!」
双魔に指差されたピアスの男は急降下の途中で突然推進力を失い落下した。
「お、おい!」
スキンヘッドの男が落下したピアス男に駆け寄る。燃え盛っていた炎は消え失せ、倒れた男は気絶したようだ。
狼狽するスキンヘッドの男を他所に沈黙を貫いていたフードの男が口を開いた。
「……”フィンの一撃”か」
くぐもった声だが確かにそう聞こえた。
「ご名答」
”フィンの一撃”とは北欧に伝わる土着魔術、「ガンド撃ち」の最上級のものだ。相手に人差し指を向けることで発動させる。通常のガンドはせいぜい、体調を崩させる程度だが、”フィンの一撃”は相手に強力
な魔力を直接ぶつけることで昏倒させることができる。
「……フハハ」
フードの男は静かに笑いながら親指で後ろを指した。スキンヘッドの男はその意図を察したのか倒れた
ピアス男を背負ってそそくさと去っていった。
「君と言い、さっきのお嬢さんと言い中々面白い……欲しくなったよ。まあ、今日は手を引こう。だが、
追跡はやめて欲しいね」
そう言うとフードの男は短杖を取り出しあらぬ方向へと向けようとした。が、ピタリと動きを止めた。
「透明化したギオーネをに気づくってことは”大魔術師”ってのもあながち間違いでもないみたいだな……
悪いが今日はこのまま手を引いてもらおうか」
いつの間にか取り出した双魔の回転式拳銃の銃口がフードの男に向けられていた。
「魔術師が拳銃とはな……中々見所ある若者だと思ったが失望したよ」
短杖を下ろすと男はこちらに向き直った。
「フハハ……」
フードの中から覗かせた口元がニンマリと曲がった。
「何かおかしいことでもあるのか?」
「もう少しすれば君にも分かるだろう」
双魔の問いに男は口元に笑みを浮かべたまま答える。何かを待っているような素振りに双魔は眉をひそめた。
(…………何だ?)
様子を窺っていると鼻腔に毒々しいほどに甘ったるい芳香が入ってきた。
「おい、あんた」
「何かね?」
男が慇懃無礼に応答する。
「こんなに甘ったるい香りを漏らして何がしたいんだ?」
「っつ!?」
余裕たっぷりと言った雰囲気だった男が急に狼狽し始めた。
「馬鹿な!?そんなはずは……いや……鈍いだけか」
男はぶつぶつと何か呟くと納得したように再び口元に笑みを浮かべた。そして右手を上げて、パチンッ!と指を鳴らした。そして見えない目元から双魔の様子を観察する視線が放たれる。が、双魔に特に変化は見られない。
「何か魔術でも行使したか?それとも呪術の類か?よく分らんが俺には効いてないようだな?」
男はいよいよ狼狽した。
「……あり得ん……この私の術を意に介していないだと!いや、これは偶然の類に違いない。そうでなければならん!」
自分に言い聞かせるように大声を出す男に双魔は下げていた銃口を再び男へと向けた。
「取り敢えずスコットランドヤードの知り合いを呼ぶからそのまま大人しくしていてもらおうか」
そうすると男の視線が双魔へと戻ってきた。
「……君の名を聞かせてもらおうか」
「おいおい、人の名前を聞くときはまず自分から名乗るのが万国共通のルールだろ?」
(……ん?)
雲が割れたのか僅かに差し込んできた月光が男の襟元の何かに反射した。双魔がそれに気を取れた瞬間だった。
「ッチ!”蛍の閃光”!」
「ッつ!?」
男は舌打ちをすると閃光を放って双魔の目をくらませた。
視力が回復するころにはフードの男の姿だけではなく魔力の気配も消えていた。
「……逃げられたか」
男がどちらへ逃げたのかも判断がつかない。双魔は数瞬前まで男が立っていた今はもう暗闇しかない路地を見つめた。
「……ここ最近キナ臭い連中が動いてるみたいだな」
「ただいま戻ったっス!」
こめかみをグリグリして頭を痛めていると姿を消していたアメリアが背後から声を掛けてきた。
「やっぱりお前の魔術は諜報向きだな。精度も高い、言葉に出さなかっただけでさっきのフードの奴も驚いてたよ」
「えへへへ……伏見君に褒め貰えるとこそばゆいっスね」
アメリアの一族は天狗の隠れ蓑のように姿や気配を周囲に溶け込ませる固有魔術を有している。数代前の当主が魔術協会に登録申請をし、認定、公開されたものだがやはり魔術には血統の相性というものが在り開祖の血を引いている者が行使した場合の精度は他の魔術師とは段違いだ。
「で、どうだった?」
「大通りに出たところで車に乗られちゃったので最後までは追跡は出来なかったっス……普通のワゴン車だったッス」
「そうか……」
(あの一瞬光ったアレは……)
目を瞑って再びこめかみをグリグリする双魔の肩をアメリアがトントンと叩いた。
「伏見君、お巡りさんに通報した方がいいっスかね?」
「いや、いいだろ。もう逃げられた後だ。これ以上の面倒ごとは御免だ」
警官にでも報告すればそのまま連れていかれて事情聴取を受ける羽目になり帰るのが更に遅れるだろう。双魔はうんざりといった顔をして見せる。
そう言うとアメリアが申し訳なさそうにペロッと舌を出した。
「いやー、巻き込んじゃってごめんなさいっス。それと助けてくれてありがとうっス!ホントに怖かったっスよ!特にあのフードの人!」
「まあ、無事ならいい。どうしてあんなことになったのかも聞かない。が、取り敢えず寮までは送るからな。俺もさっさと帰りたいんだ。早く行くぞ」
「えヘヘー、伏見君はジェントルマンっス」
「うるせー……ほら早くしろ」
二人で大通りへと戻ると雲はどこかに流れていったのか空には月が明々と霧の都を照らしていた。
アパートへ帰るには来た道を戻るのが近道だがこの時間帯の路地裏はいくらブリタニア国王のお膝元と言っても胡散臭い連中が湧いてくる。
チラッと路地に目を向けると手に持ったランタンに紫色の炎を灯した如何にもと言った雰囲気の連中が視界の隅に移り込んだ。
とは言ってもああいう連中は路地に入らなければ絡んでくることもない。現に大通りを歩いていれば手を繋いだ親子が微笑ましく歩いている。ロンドン然り、京都然り。魔術大国の王都は光と闇が相互不干渉で近接する魔都なのだろう。
酒で温まったとは言え夕闇と共に増してくる凍気は如何せん辛い。双魔は足を速めた。
そんな時だった。ふと、ある路地に目が留まった。一瞬、学園指定のローブと女の髪のような物が見えた。
(……あれは)
違和感に双魔は気配ろ魔力を極力抑えて路地に足を踏み入れた。
路地に入って十歩も進まないうちに話し声が聞こえてくる。
「アタシそんなことには興味ないので……困るっス」
(この声は……ギオーネか?どうしてこんなところに?)
複数人いるうちの一人はどうやら仕事上がりで先刻店から出ていったアメリアのようだ。
「ボスがお前は見所があるから直々に指導をして下さるって言ってるんだ。絶対に受けておいた方がいいぜ?」
「あぅ……でも本当に興味ないっていうか……」
「こちらの方は次の査定で”枢機卿”と目されている大魔術師だ。その恰好してるってことは魔導学園の生徒だろう?他の連中を出し抜きたくはないか?ん?」
話し声と内容からアメリア以外に三人、それも全員が魔術師のようだ。「大魔術師」というワードが気になるが、確かに今の会話に加わっていないと思われる一人に不気味な魔力を感じる。
そっと影から様子を窺うとアメリアが壁を背に三人の男に囲まれている。左右にチンピラ風のスキンヘッドの男と大量にピアスを着けた色黒の男、そしてフードを目深に被って沈黙を貫いている人物。どうやら男のようだ。不気味な魔力の正体はフードの男で間違いないだろう。
(これまた面倒な……)
このような状況に陥った経緯は置いておくとして如何にも怪しい連中に生徒が絡まれているとなれば臨時とはいえ講師の身である。助けないわけにもいくまい。
双魔は静かにゆっくりと、アメリアに向かって声を掛けた。
「よう、ギオーネ。こんなところで何してるんだ?」
「あっ!ふっ……」
アメリアがこちらに気づいて双魔の名を呼ぼうとしたので人差し指を唇に当てるジェスチャーをして見せる。そして人差し指をそのまま横にスライドさせた。するとアメリアは口を閉ざしてコクコクと頷いた。
「ああん?なんだテメエは!」
「その恰好……お前も魔導学園の生徒か?俺らは今このお嬢ちゃんと話してるんだ。引っ込んでな!」
チンピラ風の男二人がこちらを見て凄んでくる。
「いや、そんなこと言われても。どう見ても嫌がってるしな……」
「テメエ……」
双魔の飄々とした態度が男たちを逆なでしたようでピアスの男は今にも飛び掛かってきそうな勢いだ。
「……ボス、どうしますか?」
もう一人の男がフードの男に伺いを立てる。すると、フードの男は面倒そうに片手を振って見せる。
次の瞬間、ピアスの男が狭い路地の両壁を交互に蹴って高く跳んだ。
「”燃え盛る輪腕”!くたばれクソガキィ!」
男の腕から炎の渦が沸き上がり暗い路地を照らす。そしてそのまま双魔目掛けて突っ込んでくる。
肌がチリチリと焦げるように熱い。あれをまともに受ければ確実にタダでは済まないだろう。
(……詠唱なしの魔術行使…………並みの魔術師じゃないな)
詠唱を行わずに即時に魔術を発動できるのは熟練の魔術師だけだ。それなりの腕を持っていなければ不可能なことだ。
双魔は慌てることなく、冷静に上から降ってくる男に人差し指を向けた。
「ヒャッヒャッヒャ!なんだぁ?ビビっちまったのかぁ!ガッ……カ……!」
双魔に指差されたピアスの男は急降下の途中で突然推進力を失い落下した。
「お、おい!」
スキンヘッドの男が落下したピアス男に駆け寄る。燃え盛っていた炎は消え失せ、倒れた男は気絶したようだ。
狼狽するスキンヘッドの男を他所に沈黙を貫いていたフードの男が口を開いた。
「……”フィンの一撃”か」
くぐもった声だが確かにそう聞こえた。
「ご名答」
”フィンの一撃”とは北欧に伝わる土着魔術、「ガンド撃ち」の最上級のものだ。相手に人差し指を向けることで発動させる。通常のガンドはせいぜい、体調を崩させる程度だが、”フィンの一撃”は相手に強力
な魔力を直接ぶつけることで昏倒させることができる。
「……フハハ」
フードの男は静かに笑いながら親指で後ろを指した。スキンヘッドの男はその意図を察したのか倒れた
ピアス男を背負ってそそくさと去っていった。
「君と言い、さっきのお嬢さんと言い中々面白い……欲しくなったよ。まあ、今日は手を引こう。だが、
追跡はやめて欲しいね」
そう言うとフードの男は短杖を取り出しあらぬ方向へと向けようとした。が、ピタリと動きを止めた。
「透明化したギオーネをに気づくってことは”大魔術師”ってのもあながち間違いでもないみたいだな……
悪いが今日はこのまま手を引いてもらおうか」
いつの間にか取り出した双魔の回転式拳銃の銃口がフードの男に向けられていた。
「魔術師が拳銃とはな……中々見所ある若者だと思ったが失望したよ」
短杖を下ろすと男はこちらに向き直った。
「フハハ……」
フードの中から覗かせた口元がニンマリと曲がった。
「何かおかしいことでもあるのか?」
「もう少しすれば君にも分かるだろう」
双魔の問いに男は口元に笑みを浮かべたまま答える。何かを待っているような素振りに双魔は眉をひそめた。
(…………何だ?)
様子を窺っていると鼻腔に毒々しいほどに甘ったるい芳香が入ってきた。
「おい、あんた」
「何かね?」
男が慇懃無礼に応答する。
「こんなに甘ったるい香りを漏らして何がしたいんだ?」
「っつ!?」
余裕たっぷりと言った雰囲気だった男が急に狼狽し始めた。
「馬鹿な!?そんなはずは……いや……鈍いだけか」
男はぶつぶつと何か呟くと納得したように再び口元に笑みを浮かべた。そして右手を上げて、パチンッ!と指を鳴らした。そして見えない目元から双魔の様子を観察する視線が放たれる。が、双魔に特に変化は見られない。
「何か魔術でも行使したか?それとも呪術の類か?よく分らんが俺には効いてないようだな?」
男はいよいよ狼狽した。
「……あり得ん……この私の術を意に介していないだと!いや、これは偶然の類に違いない。そうでなければならん!」
自分に言い聞かせるように大声を出す男に双魔は下げていた銃口を再び男へと向けた。
「取り敢えずスコットランドヤードの知り合いを呼ぶからそのまま大人しくしていてもらおうか」
そうすると男の視線が双魔へと戻ってきた。
「……君の名を聞かせてもらおうか」
「おいおい、人の名前を聞くときはまず自分から名乗るのが万国共通のルールだろ?」
(……ん?)
雲が割れたのか僅かに差し込んできた月光が男の襟元の何かに反射した。双魔がそれに気を取れた瞬間だった。
「ッチ!”蛍の閃光”!」
「ッつ!?」
男は舌打ちをすると閃光を放って双魔の目をくらませた。
視力が回復するころにはフードの男の姿だけではなく魔力の気配も消えていた。
「……逃げられたか」
男がどちらへ逃げたのかも判断がつかない。双魔は数瞬前まで男が立っていた今はもう暗闇しかない路地を見つめた。
「……ここ最近キナ臭い連中が動いてるみたいだな」
「ただいま戻ったっス!」
こめかみをグリグリして頭を痛めていると姿を消していたアメリアが背後から声を掛けてきた。
「やっぱりお前の魔術は諜報向きだな。精度も高い、言葉に出さなかっただけでさっきのフードの奴も驚いてたよ」
「えへへへ……伏見君に褒め貰えるとこそばゆいっスね」
アメリアの一族は天狗の隠れ蓑のように姿や気配を周囲に溶け込ませる固有魔術を有している。数代前の当主が魔術協会に登録申請をし、認定、公開されたものだがやはり魔術には血統の相性というものが在り開祖の血を引いている者が行使した場合の精度は他の魔術師とは段違いだ。
「で、どうだった?」
「大通りに出たところで車に乗られちゃったので最後までは追跡は出来なかったっス……普通のワゴン車だったッス」
「そうか……」
(あの一瞬光ったアレは……)
目を瞑って再びこめかみをグリグリする双魔の肩をアメリアがトントンと叩いた。
「伏見君、お巡りさんに通報した方がいいっスかね?」
「いや、いいだろ。もう逃げられた後だ。これ以上の面倒ごとは御免だ」
警官にでも報告すればそのまま連れていかれて事情聴取を受ける羽目になり帰るのが更に遅れるだろう。双魔はうんざりといった顔をして見せる。
そう言うとアメリアが申し訳なさそうにペロッと舌を出した。
「いやー、巻き込んじゃってごめんなさいっス。それと助けてくれてありがとうっス!ホントに怖かったっスよ!特にあのフードの人!」
「まあ、無事ならいい。どうしてあんなことになったのかも聞かない。が、取り敢えず寮までは送るからな。俺もさっさと帰りたいんだ。早く行くぞ」
「えヘヘー、伏見君はジェントルマンっス」
「うるせー……ほら早くしろ」
二人で大通りへと戻ると雲はどこかに流れていったのか空には月が明々と霧の都を照らしていた。
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