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第四章「遺物の力と評議会役員選挙」
第25話 遺物の力
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アッシュを先頭に闘技場に足を踏み入れる。
言うまでもないが闘技場の中には人はおらず静まり返っていた。
四人で控室から舞台へと繋がる通路を通って舞台の真ん中あたりまでやってきた。
「じゃあ、まずは僕とアイがやって見せるね」
「ちょっと待て」
「どうかした?双魔」
「お前は制服だからいいかもしれないが俺はどうするんだ」
遺物契科の制服は特注品で特殊な素材を使用し、一流の付与術師の加護が掛けられていたりと「戦うための衣服」だ。
一方、双魔はいつもと同じような私服の上に魔術科指定のローブを羽織っているだけだ。このローブは対魔術、呪術にはかなり有用な品だが如何せん物理的衝撃等には弱い。
アッシュは考える素振りを見せた。が、すぐに笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ!今日は戦うわけじゃないから。それとも一回家に帰る?双魔ってばいつもローブを羽織ってて制服着てるところをほとんど見たことないけど……そもそもちゃんと制服持ってるの?」
アッシュの凄みのある笑顔に双魔は閉口するしかなかった。
「ん……分かった。面倒だしこのままでいい……それとな」
「それと……何?」
凄みのある笑顔は何処かに消え、アッシュはキョトンとした顔で聞き返した。
「着ないだけで制服はちゃんと持ってるからな」
「……ッぷ、アハハハ!そうだよね!アハハハ!双魔ったらたまに真面目な顔で可笑しなこと言うんだから」
「アッシュ、おしゃべりもいいけれどそろそろ始めましょう。時間が勿体ないわ」
二人の会話を髪を弄りながら聞いていたアイギスが「うーん」と身体を伸ばしながら促してくる。
「はーい。じゃあ、双魔とティルフィングさんは見ててね」
「ん」
「うむ!」
双魔はティルフィングの手を引いてアッシュたちから少し離れた。
双魔としては授業やそれ以外の機会に遺物使いが遺物の力を行使する場面は多く見てきているので、わざわざ見ることもないのだがティルフィングが見たいだろうと思い面倒だという考えに何とか打ち勝った。
「じゃあ、始めるよー!」
アッシュが手を振って合図をしたので双魔も手を挙げて了解の意を示した。
アッシュは一度深呼吸をすると高らかに声を上げた。
「汝が名は”アイギス”!盟約に従い真なる姿を我に示せ!」
アッシュが言い切るのと同時にアイギスの身体が金色の光を放ち始める。その光は段々と大きくなり闘技場の中を満たしていく。
それと共に溢れ出る力、神の力の奔流が双魔とティルフィングを飲み込んでいく。空気が軽くなるような感覚。アイギスの聖なるオーラがそう感じさせるのだろう。
眩い光に双魔が腕で目を覆う。やがて光の膨張は止まり、今度は舞台の中央に収束してく。光はアッシュの許で一つの形に固まっていく。光が納まり目を開ける。アッシュの傍には彼の背丈と同じくらいの美しい大盾が姿を現した。
清浄な剣気を放つ皮盾、形状は円形。
”剣気”とは遺物の力の全般を指す言葉であり。アッシュの全身がその力に包まれている。
純白の盾は処女神であるアテナを想起させる。神々の王ゼウスを育てた聖なる牝山羊、アマルテイアの皮でその身は出来ている。縁は金色で周りにはもこもことした雲のような物がついていて淡い光を放っている。そして……アイギスがアイギスたる所以。盾の中央にはゴルゴーン三姉妹の末妹、旧き大地母神の成れの果てであるメドゥーサを表す蛇の紋章が刻まれている。
「……おお!すごいぞ!双魔!」
ポカンと口を開き呆けていたティルフィングがぴょんぴょん跳ねて大喜びする。
「ん、まあ。真打はもう一段階先だな」
「そうなのか?」
双魔の呟きに反応してティルフィングは双魔の顔を見た。
「ん、よく見てろよ」
アッシュは神盾、真の姿となったアイギスを両手で掴むとゆっくりと頭上に掲げた。そして再び高らかに詠唱する。
「盟約は此処に示された我が魂魄は汝の導き手なり!顕現せよ”破邪の雲羊
アマルテイア
聖鎧
・アスピダ
”!」
アイギスが再び光を放ち始め、その光がアッシュの身体を胴、腕、脚と順に包み、何かを形作っていく。
「おおー!」
その光景を見たティルフィングが歓声を上げた。
アッシュの全身を包んでいた光が弾けて霧散する。そこには白い鎧に身を包んだアッシュが凛々しい表情で立っていた。
胴と腕、足は白亜を思わせる純白の装甲で各部位の縁には金の線が一本入り煌めいている。手甲だけは鱗甲
スケイルメイル
で異彩を放つ。鎧の関節部からはモコモコした雲のような物が出ている。背にはこれまた純白のマント。頭にはオリーブの冠を戴き、アイギスと同じ一対の角が生えている。そしてアッシュを守護するように六つの小型の盾が宙を浮いている。
「ふふん!どう?かっこいいでしょ!」
アッシュは双魔の方を向いて胸を張って見せる。
「ん、流石”ブリタニア王家の白騎士”サマってところか」
双魔は茶化しを込めてそう言った。
「そのあだ名は止めてって言ってるでしょ!」
凛々しさは何処へやら。アッシュはこちらに近づきながらプンプンと怒って見せる。学園や宮殿で”ブリタニア王家の白騎士”と呼ばれ、もてはやされてはいるが本人としては不本意らしい。
「そうやって人のことをからかってばっかりだと女の子にモテないんだからね!」
「普段から女に囲まれてる奴が言うと言葉の重みが違うな。まあ、俺はいいんだ。そういうのは面倒だからな」
こめかみをグリグリしながら嫌そうな顔をした双魔を見てアッシュも眉間の皺を収めた。いつもの会話に気が抜けたと言ったところだろうか。
「さてと、こんなところかな。ティルフィングさん、どうだった?」
アッシュが暫く黙っていたティルフィングに声を掛ける。それにつられて双魔も隣に立っていたティルフィングに目を遣った。
「……すごい……すごいぞ!アッシュ!すごくカッコいい!我と双魔にもできるのか!?」
アイギスが盾に姿を変えたのを見た時とは比べ物にならない喜び様だ。髪で隠れて見えない右眼まで輝いているように見える。そして双魔の手を取ってブンブンと振っている。ここ数日でティルフィングの扱いに慣れてきた双魔はされるがままにしている。
「えへへ……そんなに喜んでもらえるとちょっと照れ臭いね」
アッシュは身体を揺らして照れている。
「今のが遺物の力の具現化”真装
アレーティア
”だ。アイギスさんの場合は”鎧”だが遺物によって色々種類がある。他にも遺物の力を制限付きで解放させる”解技
デュナミス
”がある」
「ソーマ!ソーマ!すごいな!我もやってみるぞ!ソーマ、早く!準備だ」
双魔の説明を聞いているのかいないのか。ティルフィングはいてもたってもいられないのかさらに激しく腕を振る。
「……ん、分かったから一回手を離してくれ」
ティルフィングが双魔の腕を離すのを見てアッシュは肩の力を抜いた。
「じゃあ、今度は僕たちが見る番かな……」
アッシュは真装を解き、それと同時にアイギスも人間態に戻った。
「ん、アッシュ、大丈夫か?」
アッシュの顔色が少しばかり悪くなっている。
「うん、大丈夫だよ……”真装”はやっぱり魔力の消費が激しいね。ちょっと疲れちゃったよ」
遺物の権能や放たれる剣気は契約者の魔力が遺物を通して増幅、変換されたものだ。大きな力を使うほど契約者に負担が掛かってしまう。その点を前提に置くと”真装”は絶大な力と引き換えに契約者に大きな負担を強いるまさに諸刃の剣なのだ。
「少しじっとしていればすぐに治るよ。それより早く試してみなきゃ!今日の主役は双魔とティルフィングさんなんだから」
そう言うとアッシュとアイギスは双魔とティルフィングから距離を取った。
いよいよ、ティルフィングの真なる姿とその力が露になる。刻まれた聖呪印が双魔の昂りに呼応するように、優しい冷気を放った。
言うまでもないが闘技場の中には人はおらず静まり返っていた。
四人で控室から舞台へと繋がる通路を通って舞台の真ん中あたりまでやってきた。
「じゃあ、まずは僕とアイがやって見せるね」
「ちょっと待て」
「どうかした?双魔」
「お前は制服だからいいかもしれないが俺はどうするんだ」
遺物契科の制服は特注品で特殊な素材を使用し、一流の付与術師の加護が掛けられていたりと「戦うための衣服」だ。
一方、双魔はいつもと同じような私服の上に魔術科指定のローブを羽織っているだけだ。このローブは対魔術、呪術にはかなり有用な品だが如何せん物理的衝撃等には弱い。
アッシュは考える素振りを見せた。が、すぐに笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ!今日は戦うわけじゃないから。それとも一回家に帰る?双魔ってばいつもローブを羽織ってて制服着てるところをほとんど見たことないけど……そもそもちゃんと制服持ってるの?」
アッシュの凄みのある笑顔に双魔は閉口するしかなかった。
「ん……分かった。面倒だしこのままでいい……それとな」
「それと……何?」
凄みのある笑顔は何処かに消え、アッシュはキョトンとした顔で聞き返した。
「着ないだけで制服はちゃんと持ってるからな」
「……ッぷ、アハハハ!そうだよね!アハハハ!双魔ったらたまに真面目な顔で可笑しなこと言うんだから」
「アッシュ、おしゃべりもいいけれどそろそろ始めましょう。時間が勿体ないわ」
二人の会話を髪を弄りながら聞いていたアイギスが「うーん」と身体を伸ばしながら促してくる。
「はーい。じゃあ、双魔とティルフィングさんは見ててね」
「ん」
「うむ!」
双魔はティルフィングの手を引いてアッシュたちから少し離れた。
双魔としては授業やそれ以外の機会に遺物使いが遺物の力を行使する場面は多く見てきているので、わざわざ見ることもないのだがティルフィングが見たいだろうと思い面倒だという考えに何とか打ち勝った。
「じゃあ、始めるよー!」
アッシュが手を振って合図をしたので双魔も手を挙げて了解の意を示した。
アッシュは一度深呼吸をすると高らかに声を上げた。
「汝が名は”アイギス”!盟約に従い真なる姿を我に示せ!」
アッシュが言い切るのと同時にアイギスの身体が金色の光を放ち始める。その光は段々と大きくなり闘技場の中を満たしていく。
それと共に溢れ出る力、神の力の奔流が双魔とティルフィングを飲み込んでいく。空気が軽くなるような感覚。アイギスの聖なるオーラがそう感じさせるのだろう。
眩い光に双魔が腕で目を覆う。やがて光の膨張は止まり、今度は舞台の中央に収束してく。光はアッシュの許で一つの形に固まっていく。光が納まり目を開ける。アッシュの傍には彼の背丈と同じくらいの美しい大盾が姿を現した。
清浄な剣気を放つ皮盾、形状は円形。
”剣気”とは遺物の力の全般を指す言葉であり。アッシュの全身がその力に包まれている。
純白の盾は処女神であるアテナを想起させる。神々の王ゼウスを育てた聖なる牝山羊、アマルテイアの皮でその身は出来ている。縁は金色で周りにはもこもことした雲のような物がついていて淡い光を放っている。そして……アイギスがアイギスたる所以。盾の中央にはゴルゴーン三姉妹の末妹、旧き大地母神の成れの果てであるメドゥーサを表す蛇の紋章が刻まれている。
「……おお!すごいぞ!双魔!」
ポカンと口を開き呆けていたティルフィングがぴょんぴょん跳ねて大喜びする。
「ん、まあ。真打はもう一段階先だな」
「そうなのか?」
双魔の呟きに反応してティルフィングは双魔の顔を見た。
「ん、よく見てろよ」
アッシュは神盾、真の姿となったアイギスを両手で掴むとゆっくりと頭上に掲げた。そして再び高らかに詠唱する。
「盟約は此処に示された我が魂魄は汝の導き手なり!顕現せよ”破邪の雲羊
アマルテイア
聖鎧
・アスピダ
”!」
アイギスが再び光を放ち始め、その光がアッシュの身体を胴、腕、脚と順に包み、何かを形作っていく。
「おおー!」
その光景を見たティルフィングが歓声を上げた。
アッシュの全身を包んでいた光が弾けて霧散する。そこには白い鎧に身を包んだアッシュが凛々しい表情で立っていた。
胴と腕、足は白亜を思わせる純白の装甲で各部位の縁には金の線が一本入り煌めいている。手甲だけは鱗甲
スケイルメイル
で異彩を放つ。鎧の関節部からはモコモコした雲のような物が出ている。背にはこれまた純白のマント。頭にはオリーブの冠を戴き、アイギスと同じ一対の角が生えている。そしてアッシュを守護するように六つの小型の盾が宙を浮いている。
「ふふん!どう?かっこいいでしょ!」
アッシュは双魔の方を向いて胸を張って見せる。
「ん、流石”ブリタニア王家の白騎士”サマってところか」
双魔は茶化しを込めてそう言った。
「そのあだ名は止めてって言ってるでしょ!」
凛々しさは何処へやら。アッシュはこちらに近づきながらプンプンと怒って見せる。学園や宮殿で”ブリタニア王家の白騎士”と呼ばれ、もてはやされてはいるが本人としては不本意らしい。
「そうやって人のことをからかってばっかりだと女の子にモテないんだからね!」
「普段から女に囲まれてる奴が言うと言葉の重みが違うな。まあ、俺はいいんだ。そういうのは面倒だからな」
こめかみをグリグリしながら嫌そうな顔をした双魔を見てアッシュも眉間の皺を収めた。いつもの会話に気が抜けたと言ったところだろうか。
「さてと、こんなところかな。ティルフィングさん、どうだった?」
アッシュが暫く黙っていたティルフィングに声を掛ける。それにつられて双魔も隣に立っていたティルフィングに目を遣った。
「……すごい……すごいぞ!アッシュ!すごくカッコいい!我と双魔にもできるのか!?」
アイギスが盾に姿を変えたのを見た時とは比べ物にならない喜び様だ。髪で隠れて見えない右眼まで輝いているように見える。そして双魔の手を取ってブンブンと振っている。ここ数日でティルフィングの扱いに慣れてきた双魔はされるがままにしている。
「えへへ……そんなに喜んでもらえるとちょっと照れ臭いね」
アッシュは身体を揺らして照れている。
「今のが遺物の力の具現化”真装
アレーティア
”だ。アイギスさんの場合は”鎧”だが遺物によって色々種類がある。他にも遺物の力を制限付きで解放させる”解技
デュナミス
”がある」
「ソーマ!ソーマ!すごいな!我もやってみるぞ!ソーマ、早く!準備だ」
双魔の説明を聞いているのかいないのか。ティルフィングはいてもたってもいられないのかさらに激しく腕を振る。
「……ん、分かったから一回手を離してくれ」
ティルフィングが双魔の腕を離すのを見てアッシュは肩の力を抜いた。
「じゃあ、今度は僕たちが見る番かな……」
アッシュは真装を解き、それと同時にアイギスも人間態に戻った。
「ん、アッシュ、大丈夫か?」
アッシュの顔色が少しばかり悪くなっている。
「うん、大丈夫だよ……”真装”はやっぱり魔力の消費が激しいね。ちょっと疲れちゃったよ」
遺物の権能や放たれる剣気は契約者の魔力が遺物を通して増幅、変換されたものだ。大きな力を使うほど契約者に負担が掛かってしまう。その点を前提に置くと”真装”は絶大な力と引き換えに契約者に大きな負担を強いるまさに諸刃の剣なのだ。
「少しじっとしていればすぐに治るよ。それより早く試してみなきゃ!今日の主役は双魔とティルフィングさんなんだから」
そう言うとアッシュとアイギスは双魔とティルフィングから距離を取った。
いよいよ、ティルフィングの真なる姿とその力が露になる。刻まれた聖呪印が双魔の昂りに呼応するように、優しい冷気を放った。
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