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第五章「選挙開幕」
第37話 ”深碧の女帝”
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『みなさんお待たせしたっス!それでは第一ブロックの候補者入場っス!』
アメリアの声と共に第一ブロックの候補者たちがぞろぞろと舞台の上に上がっていく。みな、遺物科の実技用の動きやすい制服に身を包み真剣な表情だ。各々の手には剣、槍、弓や斧などが握られている。それぞれが名を成した遺物たちだ。
候補者たちは舞台の上で距離をを取り合う。遺物の能力によって間合いは異なるが、警戒しておくことに越したことはない。と言う正しい判断だ。ピリピリとした緊張感が観客席まで伝わってくる。
「……あれ?」
「ん、どうした?アッシュ」
「第一ブロック、まだ全員そろってないよ」
「もう出てくる奴はいないようだが……」
入場口を見ても誰一人として出てくる様子はない。「何か気になることでもあるのか?」双魔がそう聞こうとした時だった。
『それではこれより評議会役員選挙第一ブロックを開始するっス!アタシの「はじめ!」の声で開始、最後の一人になるまで時間は無制限っス!それでは候補者のみなさん、準備はいいっスか?』
アメリアの声が闘技場内に響く。舞台上の候補者たちはすぐにでも動けるように身構える。
『それでは……はじって、ごめんなさいっス!ちょっと待ってくださいっス!』
「め」とアメリアが言い切って選挙が始まると思いきや、始まらなかった。放送席を見ると遺物科の講師の一人が駆け込んできてアメリアに何やら耳打ちをしている。
『ふんふん……はい、はい……分かりましたっス!』
耳打ちが終わるとアメリアが再びマイクを持って話し始めた。
『えーっと、候補者のみなさん、ごめんなさいっス。どうやら、候補者が一人揃ってなかったみたいっス』
「さっきの違和感はこれか?」
「うん、あの中には絶対にこのブロックを勝ち抜ける人がいないよ」
「…………まさか」
アメリアの困ったような声が響き渡った。
『えー、生徒のお呼び出しをするっス……遺物科所属三年……ロ……』
アメリアがその候補者の名を呼ぼうとした時だった。上から人影が現れ、舞台の中心にストンと静かに降り立った。闘技場内全ての視線が降り立った者に集められる。
そこに立っていたのは実技用制服を身に纏った一人の女生徒だった。豹を思わせるしなやかな体躯。背筋を曲げることなく凛と立つ姿。長く伸ばされた若草色の髪。
その手に持つ彼女の長身を優に超える長さの深碧の槍。先端は銛の様に鋭く、まるで貫けぬものなど存在しないのではないか、と感じさせる異様な魔力を放っている。
女生徒は若草色の髪を揺らしながら辺りを見回した。
「うん?……遅れてしまったか?」
惚けて一言を放つが闘技場内の空気は凍ったままだ。最初に解凍されたのは放送席のアメリアだった。
『おおっと!時間ギリギリで舞い降りてきたのは現遺物科評議会議長!深碧の女帝!ロザリン=デヒティネ=キュクレインだー!』
うおおおおおおおおおおおおおおおお!
アメリアの煽りに我に返った生徒たちが歓声を上げた。
「真打は遅れてやってくる」というお決まりをやってのけた現評議会のトップに戦いが始まっていないにも関わらず、闘技場内は大きく盛り上がる。
舞台上の候補者たちは出鼻を挫かれたせいか、ロザリンに忌々し気な視線を送っている。しかし、本人は気にすることなく毛先を弄っている。
「あはははは……議長ったら相変わらずなんだから」
アッシュは苦笑を浮かべざるを得なかった。ロザリンはどんな時でも泰然自若でマイペースなのだ。肝が据わりすぎているというか何というか。あがり症の自分にとっては尊敬する先輩である。
一方、双魔はロザリンの姿を黙って見つめていた。
(………………)
現遺物科評議会議長、ロザリン=デヒティネ=キュクレインはその圧倒的な実力で学園に君臨しているが、何故か人前に姿を現すことが少ない。同じ評議会のメンバーであるアッシュたちは顔を合わせる頻度が高い。しかし、双魔は何度か遠目で見たことがあるだけだった。
「……気になるな」
思わず感情が声に出た。以前はそんなことは全くなかったのだが、今日はロザリンの何かに強烈に惹かれるものを感じさせられたのだ。
「え!双魔はロザリンさんみたいな人がタイプなの!?」
呟きをバッチリ聞き取っていたらしいアッシュの一言でロザリンへの思考はどこかに飛んで行ってしまった。
「……違うからな」
ジト目でアッシュを睨む。
「あ、あはははは……そうだよね」
双魔の表情にアッシュは再び苦笑いを浮かべた。
「ほら、二人ともじゃれてないの。始まるわ」
アイギスの言う通り舞台上の候補者たちは臨戦態勢を取っている。その中央にはロザリンが降り立った時と変わらずに柳の様に立っている。
『それでは気を取り直して!第一ブロックを開始するっス!それでは……』
アメリアの合図を待ってこの場にいる多くの人が息を飲んだ。
『始め!』
そしてアメリアの戦闘開始の合図が闘技場内に反響した。
アメリアの声と共に第一ブロックの候補者たちがぞろぞろと舞台の上に上がっていく。みな、遺物科の実技用の動きやすい制服に身を包み真剣な表情だ。各々の手には剣、槍、弓や斧などが握られている。それぞれが名を成した遺物たちだ。
候補者たちは舞台の上で距離をを取り合う。遺物の能力によって間合いは異なるが、警戒しておくことに越したことはない。と言う正しい判断だ。ピリピリとした緊張感が観客席まで伝わってくる。
「……あれ?」
「ん、どうした?アッシュ」
「第一ブロック、まだ全員そろってないよ」
「もう出てくる奴はいないようだが……」
入場口を見ても誰一人として出てくる様子はない。「何か気になることでもあるのか?」双魔がそう聞こうとした時だった。
『それではこれより評議会役員選挙第一ブロックを開始するっス!アタシの「はじめ!」の声で開始、最後の一人になるまで時間は無制限っス!それでは候補者のみなさん、準備はいいっスか?』
アメリアの声が闘技場内に響く。舞台上の候補者たちはすぐにでも動けるように身構える。
『それでは……はじって、ごめんなさいっス!ちょっと待ってくださいっス!』
「め」とアメリアが言い切って選挙が始まると思いきや、始まらなかった。放送席を見ると遺物科の講師の一人が駆け込んできてアメリアに何やら耳打ちをしている。
『ふんふん……はい、はい……分かりましたっス!』
耳打ちが終わるとアメリアが再びマイクを持って話し始めた。
『えーっと、候補者のみなさん、ごめんなさいっス。どうやら、候補者が一人揃ってなかったみたいっス』
「さっきの違和感はこれか?」
「うん、あの中には絶対にこのブロックを勝ち抜ける人がいないよ」
「…………まさか」
アメリアの困ったような声が響き渡った。
『えー、生徒のお呼び出しをするっス……遺物科所属三年……ロ……』
アメリアがその候補者の名を呼ぼうとした時だった。上から人影が現れ、舞台の中心にストンと静かに降り立った。闘技場内全ての視線が降り立った者に集められる。
そこに立っていたのは実技用制服を身に纏った一人の女生徒だった。豹を思わせるしなやかな体躯。背筋を曲げることなく凛と立つ姿。長く伸ばされた若草色の髪。
その手に持つ彼女の長身を優に超える長さの深碧の槍。先端は銛の様に鋭く、まるで貫けぬものなど存在しないのではないか、と感じさせる異様な魔力を放っている。
女生徒は若草色の髪を揺らしながら辺りを見回した。
「うん?……遅れてしまったか?」
惚けて一言を放つが闘技場内の空気は凍ったままだ。最初に解凍されたのは放送席のアメリアだった。
『おおっと!時間ギリギリで舞い降りてきたのは現遺物科評議会議長!深碧の女帝!ロザリン=デヒティネ=キュクレインだー!』
うおおおおおおおおおおおおおおおお!
アメリアの煽りに我に返った生徒たちが歓声を上げた。
「真打は遅れてやってくる」というお決まりをやってのけた現評議会のトップに戦いが始まっていないにも関わらず、闘技場内は大きく盛り上がる。
舞台上の候補者たちは出鼻を挫かれたせいか、ロザリンに忌々し気な視線を送っている。しかし、本人は気にすることなく毛先を弄っている。
「あはははは……議長ったら相変わらずなんだから」
アッシュは苦笑を浮かべざるを得なかった。ロザリンはどんな時でも泰然自若でマイペースなのだ。肝が据わりすぎているというか何というか。あがり症の自分にとっては尊敬する先輩である。
一方、双魔はロザリンの姿を黙って見つめていた。
(………………)
現遺物科評議会議長、ロザリン=デヒティネ=キュクレインはその圧倒的な実力で学園に君臨しているが、何故か人前に姿を現すことが少ない。同じ評議会のメンバーであるアッシュたちは顔を合わせる頻度が高い。しかし、双魔は何度か遠目で見たことがあるだけだった。
「……気になるな」
思わず感情が声に出た。以前はそんなことは全くなかったのだが、今日はロザリンの何かに強烈に惹かれるものを感じさせられたのだ。
「え!双魔はロザリンさんみたいな人がタイプなの!?」
呟きをバッチリ聞き取っていたらしいアッシュの一言でロザリンへの思考はどこかに飛んで行ってしまった。
「……違うからな」
ジト目でアッシュを睨む。
「あ、あはははは……そうだよね」
双魔の表情にアッシュは再び苦笑いを浮かべた。
「ほら、二人ともじゃれてないの。始まるわ」
アイギスの言う通り舞台上の候補者たちは臨戦態勢を取っている。その中央にはロザリンが降り立った時と変わらずに柳の様に立っている。
『それでは気を取り直して!第一ブロックを開始するっス!それでは……』
アメリアの合図を待ってこの場にいる多くの人が息を飲んだ。
『始め!』
そしてアメリアの戦闘開始の合図が闘技場内に反響した。
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