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第五章「選挙開幕」
第46話 序盤の攻防
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候補者たちは近くに立っていた者同士で切り結び始める。双魔はサリヴェンを警戒したが、すぐに決着をつける気はないらしく、こちらには向かってこない。
(勝ち残ることを考えると序盤は様子を見ながら逃げ回った方がいいな)
自分の体力を考慮して少し移動した時だった。双魔の周りを数人の生徒が取り囲んだ。
「……なんだ、お前らか」
見れば一様にクラスメイトや顔見知りたちだった。しかし、こうして目をつけられる心当たりは全くない。逃げ回るつもりがいきなり捕まってしまい嫌な顔をする他にない。
「悪いな。お前に恨みはないけど司会があれだけ煽るんだ……不確定要素は消しておきたい」
「ついこの間まで契約者じゃなかったからって油断もできないんだ……短い期間だが噂は色々聞いてる」
そう言った候補者の視線がティルフィングとサリヴェン、交互に送られた。
どうやら、先日の一件とアメリアのせいで余計な注目を集めてしまったらしい。
何はともあれ勝ち抜くには彼らを倒さなければならない。
(五人か…………まあ、いけるだろう)
「……ティルフィング」
(うむ!)
右手で剣を構えて紅の剣気をじんわり、仄かに放出する。そして、ティルフィングの切っ先を地面に当てた。カツン、と軽い音が鳴るとともに五人が一斉に躍りかかってくる。
「フッ!」
「ハア!」
しかし、微妙にタイミングがずれたため隙が生じた。
「ッ!」
双魔は身を低くすると滑るように舞台中央に向けて身体を進ませ包囲を脱出する。そして間髪開けずに背後をとった状態で態勢を整える。
「くっ!なっ!?」
「うわっ!?」
「こっ、こっちに来るな!」
双魔に攻撃を躱された候補者たちは足が滑ったかのようにバランスを崩している。否、実際滑っていた。
彼らの足場はティルフィングの剣気で薄氷が敷かれて悪くなっていたのだ。
内側から向かっていた者と外側から内側に向かっていた者同士でぶつかる。足をツルツルと滑らせて滑稽なダンスを踊っているような状態に陥っている。
「よっと!」
双魔は剣の腹を背中に打ちつけて内側にいた二人を思いっきり押してやった。すると、五人はツーっとカーリングのストーンの如く滑っていきまとめて場外に落ちっていった。
「んげっ!」
「ぐわっ!」
「ふげっ!」
落ちていったところから間抜けな声が聞こえた。それを見た観客から笑い声が上がる。
「ん、まあ勝ちたいならわざわざ声なんて掛けない方がいいってことだな」
(ソーマ!中々見事だったぞ!)
「剣気のコントロールのコツも少しは掴めたからな……っと!?」
敵を倒した後の隙を狙って斧を持った候補者が上から剣気を纏わせた一撃を振り下ろしてくる。回避は間に合わないと判断し、剣身を斜めにし攻撃を受け流す。
獲物を失った斧は地面に深く突き刺さり、その場所が解技によって爆発した。
「むっ!?」
回避されると思っていなかったのか候補者は驚きながらも斧を引上げようと屈んだ。双魔は爆発を跳躍で回避するとお返しとばかりにがら空きになった背中を切りつける。
「…………」
斬撃では大したダメージは与えられなかったが剣気によって屈んだままの姿勢で紅の氷像と化した。戦闘不能と判断されたのか男子生徒は淡い光に包まれ転移魔術で舞台を後にした。
ティルフィングの剣気によって生ずる氷は通常の方法では決して溶けることはないが、高度な魔術や遺物の力でなら溶かすことができるらしい。
サリヴェンの時と違い、ある程度手加減もできているし、炎の権能を持つ遺物と契約している講師もいたはずなので問題ないだろう。
「……ふう」
一息ながら周りの気配を探ると今のところ攻撃を仕掛けてくるようなものは感じられなかった。
闘いはまだ始まったばかりだ。
(勝ち残ることを考えると序盤は様子を見ながら逃げ回った方がいいな)
自分の体力を考慮して少し移動した時だった。双魔の周りを数人の生徒が取り囲んだ。
「……なんだ、お前らか」
見れば一様にクラスメイトや顔見知りたちだった。しかし、こうして目をつけられる心当たりは全くない。逃げ回るつもりがいきなり捕まってしまい嫌な顔をする他にない。
「悪いな。お前に恨みはないけど司会があれだけ煽るんだ……不確定要素は消しておきたい」
「ついこの間まで契約者じゃなかったからって油断もできないんだ……短い期間だが噂は色々聞いてる」
そう言った候補者の視線がティルフィングとサリヴェン、交互に送られた。
どうやら、先日の一件とアメリアのせいで余計な注目を集めてしまったらしい。
何はともあれ勝ち抜くには彼らを倒さなければならない。
(五人か…………まあ、いけるだろう)
「……ティルフィング」
(うむ!)
右手で剣を構えて紅の剣気をじんわり、仄かに放出する。そして、ティルフィングの切っ先を地面に当てた。カツン、と軽い音が鳴るとともに五人が一斉に躍りかかってくる。
「フッ!」
「ハア!」
しかし、微妙にタイミングがずれたため隙が生じた。
「ッ!」
双魔は身を低くすると滑るように舞台中央に向けて身体を進ませ包囲を脱出する。そして間髪開けずに背後をとった状態で態勢を整える。
「くっ!なっ!?」
「うわっ!?」
「こっ、こっちに来るな!」
双魔に攻撃を躱された候補者たちは足が滑ったかのようにバランスを崩している。否、実際滑っていた。
彼らの足場はティルフィングの剣気で薄氷が敷かれて悪くなっていたのだ。
内側から向かっていた者と外側から内側に向かっていた者同士でぶつかる。足をツルツルと滑らせて滑稽なダンスを踊っているような状態に陥っている。
「よっと!」
双魔は剣の腹を背中に打ちつけて内側にいた二人を思いっきり押してやった。すると、五人はツーっとカーリングのストーンの如く滑っていきまとめて場外に落ちっていった。
「んげっ!」
「ぐわっ!」
「ふげっ!」
落ちていったところから間抜けな声が聞こえた。それを見た観客から笑い声が上がる。
「ん、まあ勝ちたいならわざわざ声なんて掛けない方がいいってことだな」
(ソーマ!中々見事だったぞ!)
「剣気のコントロールのコツも少しは掴めたからな……っと!?」
敵を倒した後の隙を狙って斧を持った候補者が上から剣気を纏わせた一撃を振り下ろしてくる。回避は間に合わないと判断し、剣身を斜めにし攻撃を受け流す。
獲物を失った斧は地面に深く突き刺さり、その場所が解技によって爆発した。
「むっ!?」
回避されると思っていなかったのか候補者は驚きながらも斧を引上げようと屈んだ。双魔は爆発を跳躍で回避するとお返しとばかりにがら空きになった背中を切りつける。
「…………」
斬撃では大したダメージは与えられなかったが剣気によって屈んだままの姿勢で紅の氷像と化した。戦闘不能と判断されたのか男子生徒は淡い光に包まれ転移魔術で舞台を後にした。
ティルフィングの剣気によって生ずる氷は通常の方法では決して溶けることはないが、高度な魔術や遺物の力でなら溶かすことができるらしい。
サリヴェンの時と違い、ある程度手加減もできているし、炎の権能を持つ遺物と契約している講師もいたはずなので問題ないだろう。
「……ふう」
一息ながら周りの気配を探ると今のところ攻撃を仕掛けてくるようなものは感じられなかった。
闘いはまだ始まったばかりだ。
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