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第一章「帰郷」
第63話 双魔の弱点
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朝食を摂り終えると帰省の準備を始めた。と、言っても大概のことは左文がやってくれるので双魔は特にすることがない。パスポートと新しく手に入れた園芸関係の本を数冊鞄に入れておくくらいだ。
(ん、ティルフィングたちの出国は大丈夫なんだっけ?)
気になった双魔は剣兎にメッセージを送ってみる。
遺物が国と国との間を行き来する際にはその性質上面倒な手続きが多くあったはずだ。そこで引っかかった場合、飛行機に乗れない可能性がある。
双魔たち魔術師も厳しい審査があるのだがその辺は魔術協会からの公認がパスポートにしっかりと書かれているので問題ないだろう。
そんなことを考えていると返信が届いたのかスマホの画面が点滅する。
(ん、珍しく早いな)
剣兎は基本的に仕事に追われているので丸三日は返信が来ないのがざらだ。タイミングが良かったのだろう。
(どれどれ……)
画面をフリックして帰ってきたメッセージを見る。
『その辺はこの前各所に根回ししておいたから大丈夫。ケントリス殿の書状も渡しておいたから安心するといいよ』
どうやら気を利かせて色々していてくれたらしい。
(……『悪いな、今度何か奢る』っと)
メッセージを送ってティルフィングたちの方に目を遣ると二人は楽しそうに着替えをキャリーバックに詰め込んでいる。
そちらも途中からティルフィングのファッションショーに変わっていた。左文はティルフィングが来てから楽しそうだ。年の離れた可愛い妹ができたような感覚なのかもしれない。
そうこうしているうちに飛行機と新幹線のチケットが封入された封筒が届いた。
そして、翌日、ロンドン発の飛行機に乗り込み、半日後に東京に到着、京都行の新幹線に乗り無事に到着し、今に至る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「坊ちゃま、お水です……飲めますか?」
左文が自動販売機で買ってきたミネラルウォーターを差し出す。
「ん…………すまん……んくっ」
ペットボトルを受け取って水を少しずつ喉に流し込んでいく。
「…………ふう」
少し落ち着いてきたが、まだ頭痛は収まりきらない。
ティルフィングは双魔の前に立っている。その不安そうな表情は晴れないままだ。
「左文……ソーマはどうしたのだ?病か何かか?大丈夫なのか?」
「ええ、ティルフィングさん、大丈夫ですよ。坊ちゃまは……その乗り物があまり得意ではありませんので」
左文の言う通り、双魔は乗り物に極端に弱い。数分車に乗ったくらいで吐きそうなくらい酔う。本人曰く『動物は大丈夫……あとは自転車』とのことらしい。
しばらくベンチに座っていると双魔の顔色も段々とよくなってきた。
「ん……だいぶ良くなった。心配かけたな」
まだ少しふらつくのを何とか堪えて立ち上がるとティルフィングの頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「坊ちゃま、もうよろしいんですか?」
「ああ、いつまでもここに行くわけにもいかないしな」
「わかりました、それでは行きましょうか」
「うむ!」
双魔はティルフィングと手を繋いで改札を出てバス乗り場に向かった。
「俺はティルフィングと歩いて姉さんの家まで行くけど左文はどうする?」
「それでしたら私はバスで船岡山にご挨拶を済ませてきてもよろしいですか?」
「ん、そうか。じゃあ、済んだら六波羅まで来てくれればいい」
「かしこまりました。それではティルフィングさん、坊ちゃまをお願いしますね」
「うむ!」
「それでは後ほど」
左文はそう言うと目的地に向かうバスに乗り込んだ。
ティルフィングがそれを見て大きく手を振っていたので、左文もバスが発車するまで、それに応えて手を振り返していた。
やがて、バスは発車し、バスターミナルには双とティルフィングが残された。
「さて、じゃあ、俺たちも行くか」
「どこへ向かうのだ?」
「取り敢えず賀茂川の方に行くか」
ティルフィングの手を引いて賀茂川目指して東へと足を向ける。
二人は年末とあって人々が忙しなく行きかう中をのんびりと歩きはじめた。
(ん、ティルフィングたちの出国は大丈夫なんだっけ?)
気になった双魔は剣兎にメッセージを送ってみる。
遺物が国と国との間を行き来する際にはその性質上面倒な手続きが多くあったはずだ。そこで引っかかった場合、飛行機に乗れない可能性がある。
双魔たち魔術師も厳しい審査があるのだがその辺は魔術協会からの公認がパスポートにしっかりと書かれているので問題ないだろう。
そんなことを考えていると返信が届いたのかスマホの画面が点滅する。
(ん、珍しく早いな)
剣兎は基本的に仕事に追われているので丸三日は返信が来ないのがざらだ。タイミングが良かったのだろう。
(どれどれ……)
画面をフリックして帰ってきたメッセージを見る。
『その辺はこの前各所に根回ししておいたから大丈夫。ケントリス殿の書状も渡しておいたから安心するといいよ』
どうやら気を利かせて色々していてくれたらしい。
(……『悪いな、今度何か奢る』っと)
メッセージを送ってティルフィングたちの方に目を遣ると二人は楽しそうに着替えをキャリーバックに詰め込んでいる。
そちらも途中からティルフィングのファッションショーに変わっていた。左文はティルフィングが来てから楽しそうだ。年の離れた可愛い妹ができたような感覚なのかもしれない。
そうこうしているうちに飛行機と新幹線のチケットが封入された封筒が届いた。
そして、翌日、ロンドン発の飛行機に乗り込み、半日後に東京に到着、京都行の新幹線に乗り無事に到着し、今に至る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「坊ちゃま、お水です……飲めますか?」
左文が自動販売機で買ってきたミネラルウォーターを差し出す。
「ん…………すまん……んくっ」
ペットボトルを受け取って水を少しずつ喉に流し込んでいく。
「…………ふう」
少し落ち着いてきたが、まだ頭痛は収まりきらない。
ティルフィングは双魔の前に立っている。その不安そうな表情は晴れないままだ。
「左文……ソーマはどうしたのだ?病か何かか?大丈夫なのか?」
「ええ、ティルフィングさん、大丈夫ですよ。坊ちゃまは……その乗り物があまり得意ではありませんので」
左文の言う通り、双魔は乗り物に極端に弱い。数分車に乗ったくらいで吐きそうなくらい酔う。本人曰く『動物は大丈夫……あとは自転車』とのことらしい。
しばらくベンチに座っていると双魔の顔色も段々とよくなってきた。
「ん……だいぶ良くなった。心配かけたな」
まだ少しふらつくのを何とか堪えて立ち上がるとティルフィングの頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「坊ちゃま、もうよろしいんですか?」
「ああ、いつまでもここに行くわけにもいかないしな」
「わかりました、それでは行きましょうか」
「うむ!」
双魔はティルフィングと手を繋いで改札を出てバス乗り場に向かった。
「俺はティルフィングと歩いて姉さんの家まで行くけど左文はどうする?」
「それでしたら私はバスで船岡山にご挨拶を済ませてきてもよろしいですか?」
「ん、そうか。じゃあ、済んだら六波羅まで来てくれればいい」
「かしこまりました。それではティルフィングさん、坊ちゃまをお願いしますね」
「うむ!」
「それでは後ほど」
左文はそう言うと目的地に向かうバスに乗り込んだ。
ティルフィングがそれを見て大きく手を振っていたので、左文もバスが発車するまで、それに応えて手を振り返していた。
やがて、バスは発車し、バスターミナルには双とティルフィングが残された。
「さて、じゃあ、俺たちも行くか」
「どこへ向かうのだ?」
「取り敢えず賀茂川の方に行くか」
ティルフィングの手を引いて賀茂川目指して東へと足を向ける。
二人は年末とあって人々が忙しなく行きかう中をのんびりと歩きはじめた。
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